WEAVER、19年の歩みに幕を下ろした渾身のラストライブ 生命力あふれる41曲で届けた“最後にして最高の輝き”
メドレー以外にも印象的なシーンは様々あった。杉本がイントロを弾きながら「もう分かるよね?」と投げかけ、みんなでジャンプした「Boys & Girls」。真っ赤な照明が鮮烈な印象をもたらした「レイス」。東日本大震災直後、「こんな時こそ、みんなの心に、僕らの心に音楽が必要じゃないか」という気持ちでライブに臨んだと振り返りながら、トルコ地震の凄惨な被害が報道されている今歌う意味を見出したのは「希望の灯」で、実質歌詞のないBメロでもバンドの演奏が言葉を語っているように感じられた。「タペストリー」、「こっちを向いてよ」といったバラードの純度高い響き。「僕たちの音楽人生を大きく変えてくれた曲」と紹介した「僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~」に込めた想い。クライマックスに向けて演奏された「管制塔」では、逸る気持ちに身を任せ、アンサンブルが前へ前へと転がっていく。さらに、頼もしいドラムが支える「Free will」でホールに響くシンガロング。ボーカリストとしても存在感を増した奥野と杉本のツインボーカルで〈さよならじゃないさ〉と軽快に告げる「Don’t look back」。「Shall we dance」曲中のブレイク、肩で息をしながら「気持ちいいわー」と笑った杉本は、同曲終了後、「本当にあっという間。ライブもそうやし、人生もそう」と振り返った。
「19年間ずっとこうしていられたのは、やっぱり自分たちだけの力じゃなくて。みんなのおかげで今日まで続けることができたと心から思っています。僕らはこれからそれぞれの道を進んでいきます。もしかしたらもう会えなくなる人もいるかもしれません。でも、僕らの音楽はみんなの心に残ると、ずっとあなたの心に寄り添ってくれるはずだと信じてます」
そんな願いを「On Your Side」に託し、本編は終了。アンコールでは、3人それぞれのMCがあった。 河邉は、バンドを結成したばかりでメンバーと四六時中一緒にいた高校時代に、先生から言われた「そういう友達がいるって貴重やな」という言葉の意味を理解できる歳になったと語り、リスナーに対しては「みなさんの心の部屋、小さな小さな隅っこの部屋でいいから、(WEAVERの音楽を)一緒に住まわせてもらえたらと思います」と伝えた。奥野は、嬉しいこともしんどいこともあった19年を「感情にロジカルな理由をつけられない日々」と言い表し、「言葉にできない想いを抱えたままステージに立っても、僕たちの命を、作ってきたものを(観客が)肯定してくれると今日改めて感じました」「二度とない大切な時間をみんなと過ごすことができて……それだけで、自分の人生、いい人生だったなと思えてます」と噛み締めた。杉本は「WEAVERのことしか考えてこなかった人生だった」がゆえに、解散決定から発表までの間には「これでよかったのかな」と思うこともあったという。それを踏まえて「でも今日、全力で、笑顔で届けようと思いながらライブをやって、みんなも返してくれて。この3人でできることはやりきったなと思いました」と断言。ここで頷けばバンドが終わってしまうと思うと寂しいが、「やりきった」という発言に納得できてしまうほど、今日のWEAVERは確かに輝いていた。
ラストソングは、メジャーデビュー曲「白朝夢」。Dメロに入るタイミングでバンドの演奏が静かになり、杉本が歌とピアノで注目を集めた。テンポを落として歌われる〈いなくなるだなんてやだよ〉。ファンの心の声と重なる言葉を強調するアレンジにたまらない気持ちになったのも束の間、杉本の歌声から、他ならない3人の内側でも名状しがたい感情が渦巻いているのだと感じ取った時――その直後、光のようなバンドサウンドに包まれた時、そうか、彼らが本当に届けたかったのは、この先にある“きっと続いていく”というメッセージだ! と気がついた。涙が溢れたのは寂しかったからじゃない。心の隙間に思いがけず温かいものが流れ込んできて、びっくりしたけど嬉しかったからだ。
いつものように、メンバー3人が手を繋ぎ、観客にお辞儀するエンディング。奥野が空いた手を客席の方へ伸ばし、手のひらを開いたり閉じたりしていた。あなたもWEAVERの一員だと伝えたかったのだろう。バンドが活動を終える最後の瞬間まで、そして最後の瞬間を越えた先でも、リスナーの心の中で生き続けたい。そう願いながら、全身全霊の輝きを放ち、駆け抜けたライブだった。この輝きを忘れられないあなたの思い出や価値観、人生の一部となり、WEAVERの音楽は生き続けるだろう。そして歌と言葉を丁寧に紡ぎながら、誰もがソリストになり得るスリルの中で躍動するライブはピアノロックバンドの一つの理想形であり、バンドシーンにもたらしたインパクトも大きかったはずだと、自分の立場からは付け加えておきたい。
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