WEAVER、19年の歩みに幕を下ろした渾身のラストライブ 生命力あふれる41曲で届けた“最後にして最高の輝き”

WEAVER、ラストライブで19年間に幕

 WEAVERが、兵庫・神戸国際会館 こくさいホール、東京・LINE CUBE SHIBUYAでラストライブ『WEAVER LAST LIVE「Piano Trio 〜2004→2023〜」』を開催。結成から19年の歴史に幕を下ろした。

 本稿では2月11日の東京公演を振り返るが、はたして、バンドの解散とは何を意味するのだろう。新曲が発表されないこと。次のライブが開催されないこと。このメンバーが集まったからこそ生まれたバンドという人格、肉体が終わりを迎えること。

 では、WEAVERの音楽はここで命を終えてしまうのか。結論から言うと、「いや、そうではない」と思わせられるライブだった。確かに、ステージを覆う紗幕の向こう側から、WEAVERの始まりの曲「66番目の汽車に乗って」が聴こえてきた時――紗幕が上がり、フォーマルな衣装に身を包んだ杉本雄治(Pf/Vo)、奥野翔太(Ba/Cho)、河邉徹(Dr/Cho)の姿を確認した時は「ああ、本当にラストライブなんだ」「ここから終わりに向かっていくのか」と胸が締めつけられた。しかしそういった切なさ、悲しみはすぐに吹き飛ばされた。僕らは今ここで生きているという強い主張、生命力がバンドのアンサンブルから感じられたからだ。

WEAVERライブ写真
奥野翔太

 鍵盤を叩く杉本のタッチがいつになく力強い。ライブ終盤で爪が割れたと明かしていたが、今思えば1曲目から「そりゃ割れるでしょう」と言いたくなるほどの力強さだったし、ましてや3時間ずっと丹精込めてピアノやギターを弾き続けていたのだ。もちろん奥野、河邉も同じ熱量で……いや、むしろ互いに食らい合うことすらも厭わないといった勢いで演奏している。個と個がぶつかり合うことで生まれるエネルギーが、WEAVERという生命体を輝かせている。

WEAVERライブ写真
河邉徹

 矛盾するようだが、3人それぞれが“バンド WEAVER”という人格を尊重しているからこそ、強烈に我を剥き出しにさせる瞬間が発生するし、長年の関係性があるから、それでもアンサンブルは破綻しないとメンバーは分かっているのだろう。3人の間だけで共有される間合い。呼吸するように揃う緩急。嬉しい時のアイコンタクト。 何気ない瞬間に高校時代からの絆を感じた。さらに、この日のライブから声出しが解禁。奥野が「みんなの声にこんなに力をもらっていたんだなと実感しています」と語っていた通り、観客一人ひとりの声援や歌声はバンドに大きなエネルギーを与えた。どの曲も史上最高と思えるほどの仕上がり。今もなお歴史が塗り替わっていく様子を目の当たりにすれば、“終わりに差し掛かっている”という認識は改めざるを得なかった。「(観客が)この先どんなライブを観ても、あの感動には敵わないなってくらいのライブにしたい」。WEAVERの作詞をメインで手掛けてきた河邉が宣言した通りのライブが生まれていく。

 この日WEAVERは41曲を演奏した。杉本曰く「(東京・神戸の)2日間で全曲やるぞという覚悟で作った」メドレーを2つも組み込んだ異例のセットリストから読み取れたのは、1曲でも多く届けようという意思だ。1つ目のメドレーは本編中盤。WEAVERの音楽性の変遷を凝縮したもので、「on the rail(seeing the scenery)」で始まり「on the rail(arriving at the terminal)」で終わる構成や、スクリーンに過去のライブ映像を映す演出も効いていた。ラストアルバム『WEAVER』収録曲「キューブライト」演奏時には、スタッフの持つハンディカメラが、汗を光らせライブする今の3人を追う。試行錯誤とともに様々なトライをしてきたこのバンドの足跡を辿れば、おそらくまっすぐな一本線にはならない。しかし回り道の分だけ増えた歩数がバンドを強くさせたのだと、「キューブライト」の熱演が物語っていた。そして、2つ目のメドレーはアンコール冒頭。“杉本のアコースティックギター弾き語りによる「僕のすべて」→奥野&河邉がピアノ連弾で加わった「Tonight」、「Hope~果てしない旅路へ~」→普段のバンド編成で7曲”という構成で、客席の一人ひとりがバンドの原点や成り立ちに想いを馳せていたことだろう。3人で1つのピアノ椅子に座って演奏する姿も微笑ましい。

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