推し文化を踏まえた新曲「推し越えて純愛」もリリース 作曲家 Haruto Douzenが生み出す楽曲のポイント
作曲家のHaruto Douzenが新曲「推し越えて純愛」をリリースした。昨年より立て続けに新曲を公開している中、ここでまたさらなる注目が集まりそうだ。
Haruto Douzenは大学卒業後、外資系金融機関に勤務する傍ら音楽制作をスタート。現在はコンサル業と音楽制作の2つを生業とする作曲家である。独自の感性で見つけたシンガーやクリエイターとコラボしオリジナル作品を発表していくスタイルで、昨年2月には五阿弥ルナが歌唱した「I AM ME」をリリース。その後、10月にはるーかが歌唱した「You Don’t Love Me」、12月には再び五阿弥ルナが歌唱を担当した「Lovers In Sorrow」と、曲毎にシンガーを迎えて精力的に作品を発表してきた。日本のテレビドラマとアニメから多大な影響を受け、J-POP、ロック、ダンスミュージックなど多様なジャンルの楽曲を制作している。
今回リリースする「推し越えて純愛」は、歌声合成ソフトウェア・Synthesizer VによるAI歌声「Mai」が歌唱する楽曲で、推し文化に染まる女性を主人公とした歌詞が特徴。本物の人間が歌っているかのような完成度に驚かされるが、しかしどことなく機械的なボーカルが、推しにどっぷり浸かった人間の歪んだ愛情をうまく表現しているように思う。
1980年代のシンセウェーブをイメージしたというサウンドは、ザ・キッド・ラロイ&ジャスティン・ビーバー「STAY」やザ・ウィークエンド「Blinding Lights」といった昨今の世界的な80'sリバイバルの潮流とも合致した音作りで、レトロなムードの中で高鳴る焦燥感のあるビートが印象深い。そんな中で歌われる〈ラタタ ラタタタ〉や、〈キャ キャ キャ キャ キャノン砲〉といったリズム感を意識したリリックの運びに作者の遊び心を感じる。
推し文化が広がる現代の空気にマッチしたテーマ選びに加えて、最新テクノロジーを駆使した制作手法と、さらにトレンドを意識したサウンドメイクによって、時代の“今”を華麗に切り取った一曲に仕上がってると言えるだろう。Harutoの鋭い感性がリリック、サウンド、ボーカルなどあらゆる点に光っている。
またMVは、推し活に勤しむ人々をシュールかつコミカルに描き出しており、仮面を被りながら切れ味よく踊る姿が面白い。制作は『ONE PIECE FILM GOLD』や『攻殻機動隊 SAC_2045』のCG~VFXに携わった経験を持つLEON STUDIOの亀山勇一によるもの。リズミカルな本曲を生かしたダンサブルな出来に仕上がっている。