THE BACK HORN、一つの色にとどまらない挑戦の証 静かな熱量を帯びたコロナ禍の『マニアックヘブン』の記録

THE BACK HORNの挑戦の証

 THE BACK HORNが2005年から続けている企画ライブ『マニアックヘブン』略して“マニヘブ”。今年は1月14日に中野サンプラザホールで『マニアックヘブンVol.15』が行われたばかりだが、これは新作ツアーやイベントなどでは演奏する機会の少ない楽曲で固めた、まさにマニアックなライブシリーズだ。

 ステージに、菅波栄純(Gt)デザインのバックドロップがはためくだけでも十分にマニアックなムードが盛り上がるが、メンバーがデザインしたTシャツやグッズ、その原画などをギャラリーで展示。また今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から見合わせたが、メンバー考案のオリジナルドリンクを販売するなど、いつの間にか山田将司(Vo/Gt)考案のゆるキャラ「マニアッ君」「ヘブンちゃん」も登場するようになった。15年以上かけて、ちょっとしたフェスのように楽しいイベントに育ってきたのがマニヘブだ。

 この企画がスタートしたのは、2001年にメジャーデビューした彼らが順調にフルアルバムもリリースしてきて楽曲も増えてきた頃。シングルヒットも出てライブの定番曲も固まってきたことでバンドの色は伝わりやすくなるが、自分たちの色は一つではないという思いも強くなっていく。どんなアーティストもそんなジレンマを抱えながら活動しているはずだ。だから常に新しいチャレンジを続け曲を作り続けていく。THE BACK HORNもそのジレンマを自分たちなりの方法で乗り越えようとしていたのである。

 自分たちの楽曲を色分けするようなことをしていいのかとの迷いも企画段階ではあったようだ。しかし実現してみればメンバーもファンも心置きなく楽しめるイベントとして回を重ねてきた。シングルにならなくてもライブで大いに盛り上がる曲もあるし、普段のライブでは滅多に聴けない曲に思わず拳を振り上げたり、じっくり心に染み込ませたりするのがマニヘブの醍醐味だ。メンバーも改めて自分たちの楽曲を検証し、どうやったらファンの期待の上を行けるか頭をひねるのが楽しいようだ。当初は年末に東京で1日だけ行われていたものから、回を重ねるにつれ日にちを増やして地方でも開催するようになり、THE BACK HORNにとって欠かせない活動の一つになってきた。

 2020年、2021年はコロナ禍のため開催そのものが危ぶまれたが、結果として展示などは行わず、観客数も制限しての開催となった。それまでと違う条件の中でTHE BACK HORNは必死で自分たちの動きを止めまいとあがき、この2回を開催した。特に2021年は、vol.5(2010年12月20日)以来ホームグラウンドともいうべき会場になっていた新木場スタジオコーストの閉館が決まっており、この会場での最後のワンマンでもあったことから、彼らの熱意は一段と高いものになっていた。決して喜ばしい状況ではなかったとはいえ、この2公演はバンドにもファンにとっても忘れ難いものになったはずだ。

 その2公演の記録映像が、Live Blu-ray『マニアックヘブン vol.13 & vol.14』として2月22日にリリースされる。トータル37曲に及ぶ両日のライブを完全収録したものに加え、 SPACE SHOWER TVとコラボしたトーク番組『マニアックヘブン vol.13 事前配信番組』、ギャラリーをメンバーが解説したり、提供予定だったオリジナルドリンクを披露するなど盛り沢山な『マニアックヘブンツアー vol.14 ギャラリー配信番組』、さらに全回のセットリストやメンバーインタビューなどを掲載したスペシャルブックレットがセットされた豪華版だ。

THE BACK HORN – マニアックヘブンvol.13 & vol.14 [Official Teaser]

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アーティスト分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる