2023.02.21 18:00

THE BACK HORN、一つの色にとどまらない挑戦の証　静かな熱量を帯びたコロナ禍の『マニアックヘブン』の記録

文＝今井智子

　2020年、コロナ禍で日常生活から一変、様々なイベントや公演と同様に音楽ライブも開催が難しくなり、打開策として配信ライブをTHE BACK HORNも何度か行った。マニヘブも開催が危ぶまれたが、年末に向かいライブを開催するためのガイドラインが整ったこともあり、新木場スタジオコーストで12月6日に開催された。ライブ会場でもソーシャルディスタンスを取り、消毒の徹底やマスク着用・声出し禁止など厳しい条件下での有観客が可能になったばかりで、この日はファンクラブからの抽選で500人限定。同時に配信も行われ、会場に足を運べない人たちも見ることができた。

　演奏する方も見る方も異様な緊張感を漂わせながらのライブだったことが、映像からもひしひしと伝わってくる。満杯になれば2500人は入る会場に5分の1の観客。演奏はリハーサルの時のような残響を伴い、500人の全力の拍手が響き渡る。配信を見ている人たちのことも気遣うMCをしながら、この現実を跳ね返そうとバンドと観客が心を通わせていることが痛いほど伝わるのが2020年の記録だ。

THE BACK HORN – ダストデビル [LIVE 2020.12.6(日) 新木場STUDIO COAST]

　2021年12月5日、集客は50％という条件のもと1200人の観客を前にして、メンバーは嬉しそうに演奏した。ソーシャルディスタンスやマスク着用・声出し禁止といった条件はあるが、互いの姿や反応をリアルに見られることで、少しでも状況がよくなっていると実感できるのが何よりの喜びだ。全国9カ所をツアーし、そのファイナルとなった新木場スタジオコーストでの最後のワンマンであることも特別な意味があった。この会場が閉じても思い出はなくならず、自分たちは進んでいく、そのための一つのマイルストーンとしてこのライブがある。「どんな状況であれ希望を鳴らしたいよね」といった山田の言葉が痛いほどに沁みる。

　そんなヒリヒリしたライブでもホッコリした気持ちにさせてくれるのが、マニヘブでアンコールの定番になっている「天気予報」だ。マニヘブが始まった翌年にリリースした5thアルバム『太陽の中の生活』収録曲で、作詞は菅波だが、歌うというか朗読するのは松田晋二（Dr）。目下のところ松田がセンターに立つ唯一の曲で、この曲だけ山田がドラム、菅波がベース、本来のベーシスト岡峰光舟がギターを持つ。そして歌詞を書いたノートを手に松田が朗読するスタイルがお約束。当初は照れまくっていた松田が次第に堂々と朗読するようになってきたのも、マニヘブの歴史の1ページであり、遊び心を存分に見せるこの曲は、ある意味マニヘブを象徴する1曲と言っていいだろう。

　こうしたライブに足を運ぶほどに、いわゆる沼にハマることになるのだろうが、その楽しさを知ると知らないとではまさに雲泥の差がある。いわば泥にまみれることで雲上の楽しみを知ることができるのだ。こんなことをやっているTHE BACK HORNというバンドがいると知ることから、あなたは新しい楽しみを見つけることができるかもしれない。

■映像作品概要
Live Blu-ray『マニアックヘブンvol.13 & vol.14』
2023年2月22日（水）発売
Blu-ray：¥8,250（税込）
＜予約受付URL＞
●FC“銀河遊牧民”専用カート
https://victor-store.jp/item/35521
●VICTOR ONLINE STORE
https://victor-store.jp/item/35520

【収録曲】
『マニアックヘブンvol.13』
2020.12.6 at 新木場USEN STUDIO COAST（全17曲）
01.フラッシュバック
02.カラス
03.ダストデビル
04.野生の太陽
05.プラトニックファズ
06.人間
07.再生
08.シアター
09.風の詩
10.飛行機雲
11.怪しき雲ゆき
12.ミスターワールド
13.旅人
14.サイレン
EN-1.天気予報
EN-2.舞い上がれ
EN-3.さらば、あの日

『マニアックヘブンツアー vol.14』
2021.12.5 at 新木場USEN STUDIO COAST（全20曲）
01.ワタボウシ
02.魚雷
03.孤独な戦場
04.路地裏のメビウスリング
05.さざめくハイウェイ
06.情景泥棒〜時空オデッセイ〜
07.墓石フィーバー
08.アカイヤミ
09.ゆりかご
10.君を守る
11.ホログラフ
12.ハロー
13.疾風怒濤
14.浮世の波
15.反撃の世代
16.赤い靴
17.パレード
EN-1.天気予報
EN-2.希望を鳴らせ
EN-3.さらば、あの日