THE BACK HORN、挫折を跳ね返す強力な新曲「ヒガンバナ」 どんな状況でも歩みを止めなかった4人の軌跡
THE BACK HORNが2月2日にデジタルシングル「ヒガンバナ」をリリースした。本稿では、12thアルバム『カルペ・ディエム』(2019年10月)以降の活動を振り返りながら、「ヒガンバナ」の持つ意味を紐解いてみたい。
この2年以上にわたって、THE BACK HORNは大きな壁にぶち当たり続けてきた。まずアルバム『カルペ・ディエム』を伴った全国ツアー(『THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」カルペ・ディエム〜今を掴め〜』)が、山田将司(Vo)の喉の不調により延期に。全身を駆使して叫ぶボーカルスタイルは、喉に大きな負担がかかったはずだ。彼らがライブツアーを止めることは、結成以来、初めてのことだった。追い打ちをかけたのが、コロナ禍。他のすべてのバンドやアーティストと同じく、THE BACK HORNもすべての活動がストップしてしまった。
ステージに立てなくなり、バンドマン・音楽家として生きる意味や糧を奪われそうな状況のなか、それでも彼らは、自らの表現を通して、未来の光を掴もうとしてきた。最初の突破口となったのが、2020年6月に発表された楽曲「瑠璃色のキャンバス」だ。山田将司の作詞・作曲。最初の緊急事態宣言の最中で紡がれたメロディと歌詞をもとに、リモートでアレンジ、録音されたこの曲は、〈生きてゆく糧になれ この空を越えて/魂 重ね合わせよう 僕らの場所で〉というフレーズが心に残るミディアムチューン。リスナーを包み込むような大らかなボーカル、穏やかさと力強さを共存させた演奏を含め、当時のメンバーの意志が美しく描かれた楽曲だ。
同年8月・9月に配信ライブを行い、10月には『君の膵臓を食べたい』で知られる小説家・住野よるとのコラボレ—ションによるデジタルEP『この気持ちもいつか忘れる』を発表。さらに12月には、新木場STUDIO COASTで1年ぶりの有観客ライブ『マニアックヘブンVol.13』を開催し、完全復活を強く印象づけた。
昭和女子大学人見記念講堂での、THE BACK HORN×9mm Parabellum Bulletによる有観客&配信イベント『荒吐20th SPECIAL -鰰(はたはた)の叫ぶ声- 東京編』から始まった2021年は、精力的なライブ活動を展開した。3月には2019年秋から延期していたツアー『「KYO-MEIワンマンツアー」カルペ・ディエム〜今を掴め〜』の振替公演、5月からはアルバム『リヴスコール』の曲を中心とした『「KYO-MEIストリングスツアー」 feat.リヴスコール』、そして10月には『マニアックヘブンツアー Vol.14』を開催。何度かの延期を余儀なくされながらも、1年で3本ものツアーをやり遂げたのだ。その根底にあるのはもちろん、「どんな状況であっても、ライブを止めたくない」「実現可能な形を模索しながらステージに立ち、オーディエンスと音楽を共有したい」という強い思いだ。
年末には、菅波栄純(Gt)が作詞、山田将司が作曲を手がけた新曲「希望を鳴らせ」をリリース。「ライブハウスで、みんなに歌ってほしいメロディをイメージしてた」(※1)というストレートな旋律、生々しいライブ感を想起させるサウンドメイク、〈俺はまだ生きてる 終わらない希望を鳴らせ〉というフレーズが1つになったこの曲は、THE BACK HORNの新たなアンセムと言っていいだろう。