スガ シカオ、原風景からエロまで思うまま書き連ねる“無垢な自分” ファンクとの新しい向き合い方も語る

スガ シカオ、思うまま描く“無垢な自分”

「スガ シカオが“スガ シカオの世界観のまま”でブレイクすること」

ーー9曲目「灯火」は関東電気保安協会「安全のプロ篇」のCMソングですが、これはタイアップのオファーが起点で生まれた曲なのでしょうか?

スガ:そう。ちょうどバラードがなかったので渡りに船だと思って、光をテーマに書きました。僕の友達に日の目を見ないアーティストが何人もいるんだけど、彼らが表現にこだわって生きていく姿を見ながら、「彼らから見える光とはどういう光なんだろう?」と考えながら。

ーー「覚 醒」と「灯火」が表現している“折れない心”も『イノセント』の大きな要素です。

スガ:そうですね。バラードであり、ある種のメッセージソングだと思います。

ーー「灯火」は高田漣さんのペダルスティールギターもいいですね。

スガ:本当に、あんなに弾ける人はなかなかいませんよ。ペダルスティールとか女性コーラスというアイデアを僕から出して、根岸孝旨さんと一緒にアレンジを組み立てていきました。

8月電気使用安全月間テレビCM「安全のプロ」(30秒Version)/【公式】関東電気保安協会

ーーそして11曲目の「国道4号線」。すごくいい曲だし、これは近年のスガ シカオナンバーの中でも非常に重要な1曲が生まれたと思うのですが。

スガ:『MUSICA』の鹿野(淳)さんにも同じことを言われたよ(笑)。どうやら40~50代の心に過剰に強く刺さるらしい。

ーーそれだけじゃないと思いますが(笑)。車という舞台装置も含めてその年代のリスナーに沁みるのかもしれないけど、これは本当に画期的な曲ですよ。

スガ:そっか。自分では“アルバムの最後の曲”くらいの意識でしかなかったんだよね。もっと長いストーリーが頭の中にあったんだけど、それをグッと縮めたらどうにも入り切らなくて後からメロディを増やしたんだけど……「痛いよ」とこの曲に関しては、本当に自分でもよくわからないんだよね。自覚的な狙いもなかったし、何だったら書き直したいとさえ思っているのに直せないからしょうがないし。歌詞のパワーがどこに起因したものなのかも全くわからなくて。

ーー“道”というテーマとこじつけるわけじゃないけど、これまでスガさんが歌ってきたどの曲とも、どこかでちゃんと繋がっているような1曲だと思いました。あと〈渋谷〉が出てくるので、「アストライド」(2014年)の連作のようにも感じられて。

スガ:あ、それは気づいてなかった。

ーースガさんにとって渋谷とはどんな街ですか?

スガ:何だろう……女の子や友達と待ち合わせするシチュエーションを考える時、僕には渋谷以外が思いつかないというか。お金がなかった若い頃も、普通に暮らせるようになってからも渋谷だったし。どの時代の自分にもしっくりくる街なのかもしれない。

ーー代表曲である「黄金の月」(1997年)を対象化したような〈君は黄金の月だった〉というフレーズについては?

スガ:そろそろライブで初期の曲はあまりやらなくてもいいかなと思っていて。「黄金の月」も毎回やらなくてもいいかなという気分から、1つのモチーフとして意図的に入れ込むというのを初めてやってみました。

ーーこの「国道4号線」でアルバム本編は一旦終わって、次の12曲目「おれのせい」は映画で言うとエンドロールで流れるサウンドトラックみたいな感じですね。元来ファンクには性的表現だけではなく、社会に対して意義申し立てをする機能も備わっているわけですが、「おれのせい」はまさにそれで。ここまでふざけ倒してきたファンクザウルスの楽曲が最後の最後で、アルバムの根幹を担っているのがまた非常に憎らしいですねえ(笑)。

スガ:それは結果論。実は、この曲の前に書いていた「スガ シカオで領収書ください」というバラードがあまりにも馬鹿馬鹿し過ぎたので反省しちゃって、つい真面目にSly & the Family Stone方向のファンクを書いちゃったんだよね。

ーーなるほど。最後の「モンスターディスコ」はボーナストラックという感じでしょうか。

スガ:そう。ぶっちゃけ収録しなくてもよかったんだけど(笑)、アルバム制作と同時期の作品記録として入れました。

ーーこれは編曲をヒャダインさんが手掛けた、アニメ『デジモンゴーストゲーム』(フジテレビ系)のエンディング主題歌でしたが、曲のアプローチとしてはHot Blood「Soul Dracula」(1976年)とかピンク・レディー「モンスター」(1978年)みたいな発想だったんでしょうか?

スガ:それと、きゃりーぱみゅぱみゅさん的なおもちゃチックな感じも目指しましたね。前から一度ヒャダインとやってみたかったんだけど、僕のアルバムじゃ合わないだろうなと思っていたところ、『デジモンゴーストゲーム』のタイアップの話が来た時に「これだ!」と思って頼んだの。その時、「『デジモンゴーストゲーム』のエンディング主題歌の話があるんだけど一緒にやらない?」と話したら、ヒャダインが「スガさん、それだったら『モンスターディスコ』ですね!」と言うので、「何それ、場所?」と聞いたら「いや、わかんないっす」って(笑)。

ーーすごい閃き(笑)。ヒャダインさんと一緒にやってみていかがでしたか?

スガ:結構無茶振りされましたね。「ここでラップやってください」とか平気で言うんだよ(笑)。

ーーでも今回のラップはMummy-D(RHYMESTER)さんとのコラボ経験が生かされていましたね。

スガ:悪くないでしょ?(笑)。一生懸命書いたもん。

スガ シカオ×ヒャダイン「モンスターディスコ」Music Video

ーーでは最後に、改めて“無垢”を掲げて覚醒を遂げたこれからのスガさんが見据えるビジョンを聞かせてください。

スガ:それは一つしかない。ブレイクですよ。しかも、スガ シカオが“スガ シカオの世界観のまま”でブレイクすること。これまでもいい作品は書いてきたと思うし、ヒットも体験したし、いいライブもやれていて、音楽で飯も食えている。あとはこの『イノセント』の作品世界のまま、スガ シカオがより一般化するようなブレイクを目指したい。

ーーそのモチベーションはエクスタシーなんですか? プライドなんですか?

スガ:いや、もっとシンプルで。僕自身はもっと広い裾野に届く音楽をやっているつもりだから、もっと広い範囲で燃え上がりたいだけ。楽曲には自信があるし、良いタイミングと適切な手法でコネクトさえできれば、僕の音楽が響く人がまだまだいっぱいいるはずなので。25周年を経て、これからは世の中に向けてさらにいろいろな球を投げていきたいと思います。

※1:https://www.tjapan.jp/entertainment/17589701?page=5

『イノセント』

■アルバム情報
スガ シカオ『イノセント』
2023年2月1日(水)発売
・初回限定盤A:2CD
価格:¥4,500(税込)
※商品構成:New Album『イノセント』+CD『ファンクザウルス』デビューEP
・初回限定盤B:CD+DVD
価格:¥5,000(税込)
※商品構成:New Album『イノセント』+DVD『大感謝祭2022 Live at 東京国際フォーラムA』/「バニラ」ミュージックビデオ完全版収録予定
・通常盤:CD
価格:¥3,000(税込)

<収録曲>
M1.バニラ
M2.さよならサンセット
M3.叩けばホコリばっかし(Short Mix)byファンクザウルス
M4.痛いよ
M5.獣ノニオイ
M6.バカがFUNKでやってくる(Short Mix)byファンクザウルス
M7.覚 醒
M8.東京ゼロメートル地帯
M9.灯火
M10.メルカリFUNK(Short Mix)
M11.国道4号線
M12.おれのせい byファンクザウルス
M13.モンスターディスコ

・初回限定盤A&会場限定盤 特典CD
CD『ファンクザウルス』デビューEP
M1.バカがFUNKでやってくる
M2.メルカリFUNK
M3.ぼくはマザコン
M4.叩けばほこりばっかし
M5.おれのせい

初回限定盤B&会場限定盤 特典DVD
DVD『25周年ツアー 大感謝祭2022 東京国際フォーラム ホールA(2022.10.14)』
M1.午後のパレード
M2.コノユビトマレ
M3.イジメテミタイ
M4.アシンメトリー
M5.斜陽
M6.アストライド
M7.10 月のバースデー
M8.コーヒー
M9.1 ココニイルコト 2 アオゾラペダル 3 夜空ノムコウ 4 Real Face
M10.前人未到のハイジャンプ
M11.ぬれた靴
M12.春夏秋冬
M13.バニラ
M14.さよならサンセット
M15.国道4号線
M16.アイタイ
M17.サナギ
M18.19才
M19.ドキドキしちゃう
M20.Thank You
<ENCORE>
M21.真夏の夜のユメ
M22.真夜中の虹
M23.Progress

~BONUS MOVIE~
「バニラ」MV 完全版

スガ シカオ HP

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