スガ シカオ、インディペンデントなスタンスで歩んだ軌跡 アニバーサリー目前の『Sugarless III』、過去作との違いとは?

スガ シカオ『Sugarless III』、過去作との違い

 スガ シカオが、ニューアルバム『Sugarless III』を12月22日にリリースした。

 「25th Anniversary Album」と銘打たれた本作は、その名の通り来年2022年2月に迎えるデビュー25周年イヤーの幕開けを飾る1枚。2001年10月リリースの『Sugarless』、2011年8月リリースの『Sugarless II』に続く、「Sugarless」シリーズ3作目のアルバムとなる。

 この記事では「Sugarless」シリーズを振り返りつつ新作の中身について紹介していきたいと思っているのだが、その前にひとつ大事なポイントについて書いておきたい。

スガ シカオ - Sugarless Ⅲ トレーラー映像

 スガ シカオは2021年、オフィシャルには謳われていない“もうひとつのアニバーサリー”を迎えていた。それは“独立10周年”ということ。さかのぼること10年前の2011年10月、スガ シカオはデビュー以来所属していた事務所とレーベルから独立することを発表している。2014年に現在の所属レーベルである<スピードスターレコーズ>と契約するまではインディーズの体制で、当初はプロモーションやライブ出演の交渉も全て自分一人で行っていた。単行本『愛と幻想のレスポール』(KADOKAWA)には、こんな言葉がある。

 「独立を発表したのは2011年。ただ、その2年前くらいから一人になることを考え始めてました。『Sugarless II』という企画盤を出した2011年の夏には、事務所を辞めること、レコード会社を離れることは心に決めていた。

 もう、ここに居たらダメだと思ったんです。そうしないと、もう自分からは何も生まれないと思った。それを決めたときに、次のアルバムはこういうアルバムにしなきゃいけないという確信が、自分の中でバッと燃え上がった。そこで目標が生まれたんです」

 そのときの意図とビジョンが2016年にリリースされたアルバム『THE LAST』に結びつき、スガ シカオはインディペンデントなミュージシャンとしてのスタート地点から、この10年のキャリアを歩んできた。そういう事実が『Sugarless III』の大事なポイントになっている。

 というのも、「Sugarless」シリーズは、基本的には新曲と提供曲のセルフカバーとアルバム未収録曲を集めて1つの作品にするという成り立ちのアルバムであるから。すなわち、スガ シカオというアーティストの“裏側”を見せるというコンセプトのシリーズである。でも、それがいわゆる企画盤的なファンアイテムではなく、ベスト盤的なヒットアルバムとしての存在感を放ってきたというところにも、スガ シカオのアーティストとしてのユニークさが表れていると言える。

 第一弾の『Sugarless』は、スガ シカオにとって初のオリコンチャート1位を獲得したアルバム。最も大きなトピックは作詞を手掛けたSMAP「夜空ノムコウ」のセルフカバーが収録されていることだろう。他にも森高千里に提供した「まひるの星」を歌詞を差し替えてセルフカバーした「ユビキリ」も収録。夏のプールを舞台に不穏な情景を綴ったその「ユビキリ」もそうだが、「バクダン・ジュース」や「8月のセレナーデ」など、鋭角的で奥の深い歌詞表現を持った曲が収録されている。

 第二弾の『Sugarless II』の大きなトピックは「ファスナー <with 桜井和寿 (Mr.Children)> 」だろう。Mr.Childrenのアルバム『IT'S A WONDERFUL WORLD』収録曲のカバー。もともと桜井和寿がスガ シカオの楽曲からインスパイアを受けて書いたという曲だ。嵐への提供曲「アオゾラペダル」、KAT-TUNへの作詞曲「Real Face」、そしてkōkua名義のNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』主題歌「Progress」のピアノバージョンも収録されている。ちなみに、本作はリリース時には「ラブソング・ベスト」と銘打たれていた1枚でもある。当時は『FUNKAHOLiC』や『FUNKASTiC』などファンク濃度の高いアルバムを追求していた時期で、必然的にシングルのカップリングにバラードやアコースティックナンバーが多くなっていた時期というのもあるのだろう。

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