Creepy Nuts、『オールナイトニッポン』卒業へ ヒップホップや2人の存在を身近にしてきた番組の神回を振り返る

 ヒップホップユニット・Creepy Nutsが2023年3月をもって、パーソナリティを担当するラジオ番組『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)を卒業することが発表された。

 Creepy Nutsは2016年1月から、DI:GA ONLINEでラジオ連載「“悩む”相談室」をスタート。同連載および『Creepy NutsのオールナイトニッポンR』は、作家である朝井リョウが「ベストラジオ2016」第1位に選出するなど好評を集め、2人のトークの面白さに注目が集まるきっかけとなった。同年11月には単発で前述の『Creepy NutsのオールナイトニッポンR』のパーソナリティをつとめ、2018年4月より『Creepy Nutsのオールナイトニッポン0(ZERO)』、2022年4月から『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』(いずれもニッポン放送)を担当した。

 ヒップホップといえば「不良」「悪さ」「オラつき」のイメージがあり、虚勢を張ってでも他をどれだけ上回るかという文化でもある。しかしCreepy Nutsが打ち出していたのは、DJ松永=童貞DJ、R-指定=非モテ系ラッパーである。R-指定が参加したユニット、Dungeon Monstersの楽曲「MONSTER VISION」で彼が担当したパート〈軽く殴っちまえば一発で終いの 俺みたいなもん目の前に お前は何をそんなにビビってる? 何をそんなに恐れてる〉はR-指定元来のヘタレさを生かしながらも、ラッパーとしての強さを表した象徴的な歌詞だった。

 『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』シリーズがウケた理由は、「ヒップホップの面白さを伝える」ことを前提として、Creepy Nutsの“その感じ”がそのまま出ていたところだろう。

ゾーンに入ったDJ松永「アーユー、エド・シーラン?」

 特に筆者が「神回」として印象深かったのが……というより、日本のラジオ史に伝説を刻んだ回だったのが、2019年10月1日に放送された通称「大江戸シーラン in ロンドン」である。

2019 Battle For World Supremacy Final - K-Swizz (NZ) v DJ Matsunaga (Japan)

 DJ松永はこの時、ロンドンで開催された世界一のDJを決める大会『DMC WORLD DJ CHAMPIONSHIPS 2019』で優勝したばかり。そこで番組は、ロンドン滞在中のDJ松永と中継をつないで進行することに。ただ同回のDJ松永は、彼の言葉をそのまま引用すると「マジでゾーン入ってる。全部できると思ってる。全能の神。だって世界チャンピオンよ?」という状態。ゾーンに入っていた松永がこの回で取り組んだことは、「せっかくロンドンに来ているから、エド・シーランを探してインタビューをしようと思ってる。みんなも声が聞きたいでしょ。エドの声」である。しかし当然DJ松永はエド・シーランの居場所など知らない。それどころか、顔もはっきり認識できていない様子。ただ“ゾーン”に入っているので、「できないことはなにもないと思ってる」と街行く人たちをつかまえて、エド・シーランかどうか確かめていったのだ。

「ハイ! ハロー! マイネームイズマツナガ。アイアムDJチャンピオンインジャパニーズ。アーユー、エド・シーラン?」

 そしてエド・シーランの「Shape of You」のイントロを「ポンポーンポン、ポンポーンポン」と口ずさむ松永に、声をかけられた現地の人は「Are you drinking tonight?」と返す。ただ松永とR-指定はドラッグを勧められたものと勘違いし、R-指定は「逃げろ、松永! こいつはやばい! 完全にキマってる人と喋ってる」と大爆笑。しかしDJ松永は一緒に「ポンポーンポン、ポンポーンポン」と「Shape of You」のイントロを口ずさんでいる……というカオスが届けられた。『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』といえばやはりこの回である。

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