宮野真守、アリーナツアーで見せた自らのエンターテインメントの集大成 埼玉公演2日目をレポート

宮野真守、アリーナツアーで見せるエンタメ集大成

 ここで幕間映像が映し出される。これまでのライブで数々の楽しい企画が行われてきた映像コーナーを振り返り、“ある意味集大成、究極のエンターテインメント”として、盟友・髙木俊と共に本格的な漫才を披露。会場は大きな笑いに包まれた。

 幕間のVTRが終わると、スパンコールがあしらわれたブルゾンに衣装チェンジした宮野がステージに現れる。レトロなテイストのサウンドが魅力的な「行こう!」をファンキーに歌い上げ、スタンドマイクを巧みに操り、ダンスでも曲の持つ空気を見事に体現した。

 さらにメドレー形式で「Dream on」「Beautiful Night」「Question」「HELLO!」の4曲が披露された。ロックダンスやジャケットプレイ、大人な顔つきからお茶目でキュートな表情、とまったく異なるテイストの楽曲をかわるがわる立て続けに見せる。

 次にアニメ「うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE」シリーズの2曲が披露された。メッセージ性の強いライブで映えるナンバー「ジャーニー」に、ファンの熱量も上がっていく。ボーカル力と声の魅力が全面に現れた見事なフェイクから激しいナンバー「オルフェ」へと繋がり、会場の熱をどんどん上げていく。

 熱気が充満した会場をさらに熱くしたのが「EXCITING!」。声の代わりに、ペンライトの振り付けでファンとコール&レスポンスが行われた。会場をスタンドとアリーナや、センターから左右に分けたり、振り付けを指定してのコミュニケーションに大きな笑いが起こり、ステージと客席が一つになって盛り上がる。声が出せなくても心が通い合い、ファンの動きに宮野が爆笑し、その姿を観た観客もまた笑顔になる相思相愛っぷりが楽しい時間となった。「みんなで楽しい空間を作っているんだなと再確認させてもらいました」と、心からの感謝と楽しさを語る。

 「次が最後の曲です」という言葉に、恒例となっているペンライトでバツを作り気持ちを表現するファンに、また宮野も笑顔になり、「自分のエンターテインメントを表現できたライブになったと自負しています」と語った。コロナ禍となり不要不急と言われることもあったエンタメだが、ファンからの声で「不要ではないと感じることが多かった」、「ピンチにこそエンターテインメントは向上してきたと思う」と苦しい中にも光を見出してきたことを力強く話す。「今日この場に立って、自分の目指したものが間違いじゃなかったなと、みんなの笑顔が証明してくれました。本当にみんなありがとう!」と深く感謝を示した。

 本編最後は、「みんなが声が出せないなら僕らが声を出そう。僕らの声にみんなの声を乗せてもらおう」と、チーム全員でコーラスのレコーディングをしたという合唱曲「TEAM」。「みんなの曲です!」という言葉のとおり、会場にいるすべての人が“チームマモ”であると伝えるように、丁寧に歌われた。ファンによる手拍子の中、ダンサー・バンドメンバー・バックステージのスタッフが揃って生声で歌い、会場が一つになる。声が出せなくても、歌を通じてステージと客席が一体となる。そんな奇跡的な光景の中、本編が終了した。

 鳴り止まないアンコールの拍手の後、ライブTシャツ姿の宮野が再登場。「Kiss×Kiss」ではトロッコに乗り会場を一周。投げキッスで会場中にファンサービスをし、客席を笑顔にする。

 「みんなの道標になれるように」と歌われた、この日最後の曲は「MILESTONE」。ステージから与えられる愛情に、客席もペンライトと振り付けで返す光景は圧巻だ。ファン一人ひとりの表情を確かめるように会場の隅々にまで手を振り、ステージを後にする最後の瞬間まで客席を見つめて去っていった姿が印象的だった。

 歌にダンス、演技力・表現力という才能と実力によって示された宮野真守としてのエンターテインメント、そしてチームワークやMC、ファンサービスによって表れた魅力的な人柄がステージ上に結集したライブだった。また、ファンも同じだけの熱量をステージへ返そうとする温かい空気が胸を打った。幅広い表現活動に邁進する宮野の音楽が、今回のライブツアーを経てどのように進化し、声優・俳優としての表現にどのような変化をもたらすのか、より一層楽しみになる公演であった。

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