“特別なステージ=東京ドーム”に立つバンドには何が求められる? 歴代アーティスト&King Gnuのドーム公演成功から考える

 完全勝利。King Gnuの東京ドーム公演を観て最初に脳裏に浮かんだのはそんな言葉だった。もちろんライブに勝ちも負けもないのだが、常により多くのオーディエンス、より大きなステージを追い求めて自分たちの道を上り詰めてきたKing Gnuというバンドにとって、その戦いの軌跡が真っ当に、そして確かな実感をもって証明されたような感覚が、音が鳴り止んだあとのドームには漂っていたのだ。しかもその勝利は明らかに再現可能なものだった。彼らはこれから、このスケールを土台にしてさらなる戦いに打って出ていくのだろう、そんな予感がした。

 イギリスのロックバンドにとってのウェンブリー・スタジアムがそうであるように、日本のロックバンドにとって東京ドームでライブをするというのはひとつの夢だ。キャパシティだけでいえば国内にも東京ドーム以上のスケールを誇るスタジアムはあるし(たとえば横浜の日産スタジアムは最大で7万人以上を収容可能だ)、音響的にも視覚的にもライブ会場として最高とは言い難いのだが、それでもやはり東京ドームこそが「聖地」であると思うのは、東京のど真ん中にあるという立地と、これまで数々のアーティストが熱演を繰り広げてきたという歴史によるものだろう。そもそもプロ野球チーム(読売ジャイアンツ)の本拠地であり、プロ野球のシーズン中はなかなか野球以外の使い方はしにくい(つまり、例外はあるものの、ドームライブは11月から3月ぐらいまでの間に行われることが多い)がゆえの希少性というのもあるかもしれない。それに加えて、とにかくロックバンドにとってドームライブというのはハードルが高いのである。

 1988年3月にオープンした東京ドームで初めて単独公演を行ったのは、ちょっと意外なのだが、The Rolling Stonesのミック・ジャガーだった。当時ソロ活動に注力していたミックは、1988年3月22日と23日の2日間、ドームで来日公演を行っている。同年3月にはHOUND DOGが日本人として初めてドームの単独公演を行い、4月には伝説となっているBOØWYの解散ライブ『LAST GIGS』を開催。正式な「こけら落とし公演」と銘打たれている、美空ひばりの復活コンサート『不死鳥』も同月に行われた。昭和の終わりに生まれた当時最先端のドーム球場は、その最初期から「特別」なコンサート会場でもあったのだ。

 その後も東京ドームでは数々のアーティストが記憶に残る名演を残していくことになるのだが、ことロックバンドという意味で言えば、少なくとも90年代まではドームは「海外アーティストのもの」だったという印象が強い。1989年のU2来日公演、1990年のThe Rolling Stones初来日公演(なんと10デイズ! ちなみにストーンズはその後1995年、1998年、2003年、2006年、2014年と来日のたびにドームでライブを行う「常連」となった)、1993年のGUNS N’ ROSES『Use Your Illusion Tour』……そのほかBon JoviやAerosmith、さらにポール・マッカートニーやデヴィッド・ボウイといったソロアーティストも含めて、海外のビッグネームが続々と東京ドームでライブを開催。もちろんBUCK-TICKやX(X JAPAN)、LUNA SEAなどが同地で伝説のライブを繰り広げたりもしていたが、それは例外的だった。たとえばライブハウスからホールへ、そしてこちらもまた日本のロックの「聖地」である日本武道館へ……というサクセスストーリーがあるとして、そこと「ドームライブ」の間にはかなりの飛躍があったといっていい。

 考えてみれば当然で、武道館のキャパシティが約1万人だとして、東京ドームはその5倍。さらに現実的なビジネスの話をするならドームに設営するステージセットや必然的に多くなるスタッフの人件費などの経費をペイするには複数日公演が必要で、そうなると少なくとも10万人規模の動員力をもつアーティストでなければ、おいそれとドームに挑戦はできないことになる。上に挙げたような「ドーム先駆者」たちはいずれも音楽シーンをはるかに超えて社会現象を巻き起こすほどの人気バンドであり、しかも「解散ライブ」のような付加価値のついた公演も多かった。それぐらいの「状況」があって初めてドームへの挑戦権が与えられるーーロックバンドにとっての東京ドームとはそういうものだったのである。今、「だった」と過去形で書いたが、ドームのハードルの高さは今も変わっていない。というよりも、ミリオンヒットが続出していた90年代と現在を比べれば、そのハードルはますます高くなっているともいえる。ここ数年ドーム公演を行ったアーティストのリストを見ても、ジャニーズ、坂道グループ、あるいはK-POPなど、強固なファンベースを持ち、CDセールスにおいてもスケールを保っているアーティストが目立つのはそういうことだ。

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