(sic)boy、tonun、ao、Tele……4組のライブから感じた新時代の息吹 熱気に満ちた『Spotify Early Noise Night #14』
Spotifyによるライブイベント『Spotify Early Noise Night #14』が11月25日、Spotify O-EASTにて開催された。
『Spotify Early Noise Night』はSpotifyが注目するニューカマーを紹介するプレイリスト「RADAR: Early Noise」をライブで体験できるイベントで、過去にはあいみょん、CHAI、STUTSらが出演。今回は、(sic)boy、tonun、ao、Teleの4組が出演した。2020年3月に予定していた『Spotify Early Noise Night TYO』(藤井風、Vaundy、JP THE WAVY、Mom)がコロナ禍で中止になって以来、開催が実現したのは約2年半ぶり。互いに刺激を与えあうような“対バン”ならではのステージ上の空気、そして4組のライブに新時代の息吹を感じた観客の高揚感が交差し、熱気に満ちた夜になった。
トップバッターは、シンガーソングライターのao。現在高校1年生で、「今日は学校から直接来ました!」とのことだ。サポートメンバーが前奏を鳴らす中、スキップに近い足取りで登場した彼女は、1曲目に「チェンジ」をセレクト。ギターリフとともに始まるアッパーチューンで、Aメロから早速aoがラップする曲だが、自身の声を自在に扱う姿にまず驚かされた。発声の切り替えがスムーズで、もはや“切り替える”と意識すらしていないのではというレベル。身体を動かすのと同じくらい軽やかにその技術と表現力を駆使している。発音や節回し、伸ばした音の処理などが洋楽的で、同時に言葉が聴き取りやすいというバランスも絶妙だ。高度なことを行っているものの、纏っている雰囲気はクールでクローズドなものではなく、むしろ開かれていて、ピュアな喜びの表れのような笑顔も印象的。音楽の中で心を開き、観客一人ひとりと音楽で繋がろうするアーティストマインドがライブから伝わってきた。
この日aoは、11月30日に配信リリースされる新曲のバラード「瞬きと精神と君の歌と音楽と」を先駆けて披露したほか、マリンバの音がトロピカル感を演出する「余所見」、重厚な歌詞世界も魅力的な「no THANKYOU」など6曲を披露。同時代の海外アーティストとも共鳴するサウンドメイキング、ユニークかつ奥深い歌詞表現からも彼女が逸材と言われる所以が伝わってきた。
2組目は、谷口喜多朗のプロジェクト・Tele。ギター、ベース、ドラム、キーボードという編成のバンドサウンドとともに、「さあ、東京!」と谷口の鋭い声が響くオープニングだ。人生の悲喜をポップソングに変えて鳴らすTeleだが、ライブでの姿は音源よりも衝動に満ちていて、激しく燃えている。喜びと悲しみ、愛情と憎悪、希望と諦め、生と死……対極にあるものが実は隣り合っていることに対して、腑に落ちず、もがいている様子が生だとより伝わってくる。どこまでも生々しく人間的な音楽による衝撃は多くの人の心に焼きついたことだろう。
派手に歪むギターを筆頭にバンドのアプローチはかなり大胆だが、強い目つきで歌う谷口はそれ以上のエネルギーを放つ熱源としてステージの真ん中に立っていて、掻きむしるように鳴らされるエレキギターからも剥き出しの感情が伝わってくる。2曲目にして谷口もバンドも全身全霊、ここがクライマックスと言わんばかりの熱量に達した「夜行バス」、「今日は(観客が)声を出せないようなので、聴覚じゃなくて視覚で僕の意識に飛び込んできてくれたら嬉しいです」と伝えてからの「花瓶」、〈おはよう 東京が怯えてる〉という歌い出しが印象的な最新曲「東京宣言」、観客の手拍子も楽曲を彩った「Véranda」などを経て、ラストは「ghost」。祈りのようなバラードで幕を閉じた。