RADWIMPSがゲームチェンジャー? 優里、菅田将暉……令和のラブソングの特徴を歌詞から分析

令和のラブソングの特徴を歌詞から分析

 現在チャートを席巻しているOfficial髭男dismの新曲「Subtitle」をはじめ、2022年も様々なラブソングが生まれている。そんなラブソングについて、歌詞に着目すると近年の変化が見えてきた。今回リアルサウンドでは、JUJU「Distance」などの作詞や作曲を手がける高木洋一郎氏にインタビュー。令和のラブソングの特徴やTikTokでヒットする曲の共通点について聞いた。(編集部)

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RADWIMPSがゲームチェンジャーに? 令和のラブソングの特徴を分析

男性像、女性像がボーダレスに

――高木さんから見て、令和のラブソングにはどんな特徴があると思いますか?

高木洋一郎(以下、高木):平成と比べて特に男性アーティストの歌詞が大きく変化していると思います。「好きだ」という気持ちをストレートに言葉にしていた2000年代に比べると、「どういう風に好きか」「あなたのことをこういう風に愛したいと思っている」といった価値観や態度を落とし込んでいる歌詞が多い印象ですね。個人的にはRADWIMPSがゲームチェンジャーになっていると思います。彼らが2006年にリリースした「いいんですか?」という曲に〈あなたといる意味を探したら 明日を生きる答えになったよ〉という歌詞があるんですが、これも「あなたの存在価値を僕はこういう風に捉えている」「こういう形で大事に思っている」ということを言葉にしていて、今思えば時代の先をいった表現だったのではないでしょうか。

RADWIMPS - いいんですか? [Official Music Video]

 2010年代は西野カナさんがヒット曲をたくさん出していたので「会いたくて 会いたくて」などストレートな歌詞の曲も多いですが、後半から色が変わってきます。back numberが2017年にリリースした「瞬き」は、サビで〈幸せとは 星が降る夜と眩しい朝が繰り返すようなものじゃなく 大切な人に降りかかった雨に傘を差せる事だ〉というフレーズを4回繰り返している曲です。J-POPだと、1サビ、2サビがあって、ラストのサビがあって、同じフレーズを引用するパターンが多いので、同じフレーズを4回も繰り返されるとそれだけで気持ちが伝わってきますよね。また、頭の歌詞から〈幸せとは〉と、自分の幸せの定義が語られるのも特徴です。

back number - 瞬き (full)

――そういった変化の背景には何があるのでしょうか。

高木:ヒット曲は時代の鏡でもあります。若者からは「なかなか給料が上がらない」「かといって出世欲や物欲もそんなにない」という話をよく聞きます。そういった状況の中で彼らは、幸せとは何なのか、相手とどういう風に過ごす時間が貴重なのか、という部分にすごくフォーカスしている気がするんですよね。だからそれが歌詞にも表れているんじゃないかと思います。

 あとは男性像、女性像がボーダレスになってきていますね。たとえば、“君を守るよ”といった意味の歌詞でも、一昔前のストレートな「守る」とは少し違って、「困っちゃうときもあるけど、その時は一緒に頑張ろうね」という感じなんです。今までは男性だけが背負っていた部分も二人でシェアしていくような雰囲気です。2020年リリースの優里さんの「ドライフラワー」は、あえて男性が想像を膨らませて女性側の立場に立って考えてみるというスタイルです。相手の身になって、相手の感情に憑依している感じがありますね。

優里 『ドライフラワー』 Official Music Video -ディレクターズカットver.-

――高木さんがラブソングを作詞するときにはどんなことを意識しますか?

高木:過去に歌詞を提供したJUJUさんの場合は、ハッピーエンドで終わることがあまりないので、結末を書かないように意識しました。別れの曲なら別れの瞬間の究極を書きたいんです。たとえば、家に帰って相手のことを思い出すかもしれないけど、相手と一緒にいる瞬間は今この場が最後だからここで終わるんだ、というときに女性が見せる集中力とか、泣かないようにする心の葛藤とか。そういうものを拾えたらいいなと思って書いています。

――結末を書かないというのは潔いですね。

高木:男の僕に女性の気持ちはわからないから、逆に女々しくなりすぎたり、書きすぎちゃったりするんですよね。そうすると主人公の気持ちが精査されない。曲の中で言える言葉の数は限られている分、より尖らせた方が伝わると思うので、そこは意識しています。あと、曲っていうものは誰かが聴いて救われたり、何かが腑に落ちたりすることで、初めて機能すると思うので、そういう風に誰かのためになればいいなと。

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