稲垣吾郎を介して増していく文学作品の作り手への愛着 『ななにー』コーナー「インテリゴロウ」ならではの着眼点

 「読書の秋」「芸術の秋」と言われるこの季節に、改めておすすめしたいコンテンツがある。それは稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾による月1回のレギュラー番組『7.2 新しい別の窓』(ABEMA※以下、『ななにー』)内の「インテリゴロウ」のコーナーだ。

 文学作品や映画に携わる文化人をゲストに招いてトークを展開するというスタイルは、2011年から2019年まで稲垣が出演した読書バラエティ番組『ゴロウ・デラックス』(TBS系)を彷彿とさせるもの。だが、小説家や映画監督、俳優、ときにはお化け屋敷プロデューサーなど幅広いゲストが出演していること、視聴者がSNSを通じて質問を直接投げかけることができるのが新しい。

 そんなアップデートを感じさせながらも、やはり最大の魅力は稲垣の切り込み力だ。例えば、直近の『ななにー』#55(10月2日)放送回のゲストは、累計発行部数12.5万部を突破した話題作『#真相をお話しします』を生み出した新進気鋭の小説家・結城真一郎だった。稲垣は読んだ感想として「気持ちよく騙されました」「弄んでますか?」とニヤリ。そんな言葉を聞いたら、どんな作品なのかと知的好奇心をくすぐられてしまう。

 『#真相をお話しします』は5つの短編からなるミステリー小説で、それぞれ「マッチングアプリ」「リモート飲み会」「精子提供」「YouTuber」「中学受験」と現代ならではのテーマであることが最大の特徴。その理由を問われた結城が「ミステリーは偉大な先輩作家さんたちが……」と言いかけると、稲垣が「もうやりつくしちゃってる!」と小気味良く合いの手を入れてトークを加速させていく。

 「江戸川乱歩がマッチングアプリの話は絶対に書けない」と勝算を立て、“今あるもの”を題材にしたこと。検索性を上げるためにSNSでつぶやくだけで、ハッシュタグになるタイトルにしたこと。さらに動画サイトや音楽配信サービスのように数秒で見続けるかを決めることに慣れた世間に対して、どれだけ最初の1行で引き込めるのか1〜2週間かけて頭を悩ませることもある……など、作品へのこだわりを次々と引き出していく。

 そして、それだけ練り上げられた一節を稲垣が朗読することに。稲垣の落ち着きのある声で読み上げられるのは、既婚者女性と不倫中の独身サラリーマンが主人公の「三角奸計」の冒頭だ。酒とおつまみを片手に、あぐらをかきながら東京〜大阪間で幼馴染たちとリモート飲み会をする。そんな2020年以降に“平凡”となった光景が描写されるのだが、唐突に「いまからあいつを殺しに行く」と物騒な文字が並ぶのだ。いきなり流れこんできた日常の違和感。一体何があったのだろうか。そして、これから何が起きるのだろうかと、胸がざわつかずにはいられない。

 加えて、珍しく稲垣が噛んでしまったところにも、ざわざわとした空気に。「すみません。間違ったところはうまく編集して(笑)。だってなんか気を送ってくるんだもん」とチャーミングに照れ隠しをする稲垣。これには、あまりにも熱心に聞き入っていたという自覚があったのだろう、結城も「すみません、緊張させちゃった!」と大笑い。それもそのはず、結城は1991年生まれ。この年にSMAPは1stシングル『Can’t Stop!! -LOVING-』でCDデビューを果たし、『NHK紅白歌合戦』に初出場をしたのだ。それからの国民的な人気を誇った経緯を考えれば、いわばSMAPと共に育った世代ともいえる。

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