「この作品を最後にしてもいい」Mardelasが乗り越えた葛藤 4年ぶりアルバム『Mardelas Ⅳ』コロナ禍での制作の裏側

Mardelas、コロナ禍での制作の裏側

 Mardelasが4年ぶりのアルバム『Mardelas Ⅳ』をリリースした。コロナ禍で制作した本作には、3人の好きなものをふんだんに取り入れつつ“モダンとトラディショナルの融合”をテーマにバラエティ豊かな10曲を収録している。いつもとは違う状況下での楽曲制作について振り返りつつ、9月18日からスタートしているライブツアーについても話を聞いた。(編集部)

自分が好きだった音楽を後世に伝えていく使命

及川樹京
及川樹京

――新作『Mardelas Ⅳ』は、どんなアルバムを作ろうという考えの下に制作が始まったんですか?

及川樹京(以下、及川):最高傑作にするという意気込みが今までで一番ありましたね。やっぱりコロナの関係で、この2〜3年は厳しい活動を強いられてきて、そのときに感じたこともありますし、だからこそ、良いアルバムを出してやろうって気持ちにもなれました。音楽的なトータルのコンセプトとしては、モダンとトラディショナルの融合というのがあって。ハードロック/ヘヴィメタルの伝統的な良い部分を取り入れつつも、若い世代にも聴いてもらえるように落とし込んでいきたいなと思ったんですね。文化というのは、いつか廃れていくものじゃないですか。僕も30代半ばになってきて、自分が好きだった音楽がなくなっていくのは嫌だし、それを後世に伝えていく使命みたいなものを強く感じてきているんです。これは前作(『Mardelas Ⅲ』)からの4年の歳月で自分が変わった部分ですね。そういうコンセプトで今回の10曲を作りました。

――バンド内でもそういう話をしていたんですか?

及川:最終的には言ったけど、曲のアレンジはほとんど僕がやってるんで、コンセプトは途中で伝えたかな。

蛇石マリナ(以下、蛇石):そうなんだけど、今までの作品からの位置づけとしても、モダンな感じにしたいっていうのは、結構最初から話してたと思うんですよね。だから、それについては、みんな頭にはあったと思います。トラディショナルな部分は、樹京がメインのアレンジャー/コンポーザーとして、それぞれの曲で落とし込んだところですね。

本石久幸(以下、本石):曲としては「G-Metal」が一番古いのかな? その時点で方向性としてモダンに行こうみたいなことは言っていて、どんどん曲が上がってくる中で、「なるほど、こういう感じなんだな」と僕は聴いてたんですよ。「Spider Thread」だけは僕が作曲したんですけど、曲が出揃ってきて、全体のバランスを考えたときに、特にモダンじゃなくてもいいかなと、言ってみればちょっとDream Theaterに通じるような、個人的な趣味のものを入れたんです。

ベーシックなものを作って、そこに及川色を思いっきり載せてほしい

Mardelas “G-Metal” (Music Video)

――「G-Metal」は先行EP『Infinite Trinity』にも収録されていましたが、どういう狙いで書いたんですか?

蛇石:これはメタルと、ヒップホップのジャンルの一つであるGファンクを融合した、“G-Metal”というタイトルの曲を作りたいというのが最初にあって。私の場合、作曲と言っても基本的にはギターとかは入れないんです。だから、この曲もベーシックなものを作って、そこに及川色を思いっきり載せてほしいとオーダーをしました。自分で入れたシンセの感じをモダンと捉えるかどうかというところですけど、Gファンクの中でよく使われてる音をあえて入れたりしてるんですよ。

――イントロなどで鳴っている、Gファンクの特徴とも言える高音のシンセですよね。

蛇石:そうですね。ウエストサイドのヒップホップには必ず入ってると言っても過言ではないぐらいの。他のちょっとピコピコしたシンセは、モダンにしたいというイメージを感じてもらえるかなと思います。Mardelasにはいろんな曲がありますけど、今後もやっていけるような十八番の一つじゃないですけど、そのスタイルを確立するのに試行錯誤してたんですよね。

――この「G-Metal」に対する反響はどうでした?

蛇石:初めての英詞ということで、それについてのコメントも多かったんですけど、新しいって言われることが多くて。まぁ、Gファンクを知っている人には、「あぁ!」って納得してもらえたみたいですね。著名なアーティストの名前とかも歌詞にあえて入れてますし。ただ、メタルという観点では、「Youth Gone Wild」といったSKID ROWの曲名も入れてる。わかる人にはすごく刺さったんじゃないかな。

及川:ハードロック系のサウンドでありながら、ちょっとラップっぽい歌が入ってる曲に対して、僕はミクスチャー要素を入れていくことで、その二つのジャンルを繋ぐという視点でアレンジしました。たとえば、Aメロのキックが全部裏で入ってる感じのビートとかも、リフとすごくリンクしてる。ただ、ラップ/ヒップホップって、僕はちゃんと聴いたことがなかったんですね。だから、見よう見まねでやると偽物になってしまう。僕が通ってきた音楽で歌にラップの要素があるものと言えば、PanteraとかRage Against The Machineになるので、記憶の中からそういうエッセンスを引っ張り出してきて、この曲に落とし込んだという経緯があります。

本石:ベースに関してはやっぱりAメロが肝なんですよね。ラップのバックで休符を意識する感じにはしてるんです。いわゆるBメロがないので、Aメロから一気にサビへと開放するようにしたかったんですよ。デモの時点で結構休符は入ってたんですけど、僕なりに解釈した16のノリを出せたらなと頑張りました(笑)。

――なるほど。新鮮な印象は受けつつも、サビにくるとマリナ節というか、やはり変わらぬMardelasの曲だなと思わされますね。

蛇石:そうですね。Gファンクの元ネタになっている、ある2つの曲のコード進行を使ってるんですけど、Aメロはラップっぽく寄せつつ、サビのメロディは自分のスタイルで作曲したイメージです。

――ラップ的な歌い方は、表現として興味深い取り組みになるわけでしょう?

蛇石:でも、「G-Metal」に関しては、英詞というのがすごく大きくて。英語のカッコよさじゃないですけど、海外で育った自分のバックグラウンドを見せるような歌い方にしたかったですね。

――「G-Metal」の次にできた曲は?

及川:「M.D.M.A」ですね。確かコロナ禍になりたての頃に書きました。当時は1年ぐらいでこの状況は終わるだろうと思っていたんですね。だから、アルバムのリリースも当初の予定では1年前だったんですけど、それも叶わなくて。しかも、ライブもあまりできない。そういった中で制作へと気持ちを切り替えて書いた1曲目です。

――結果的にアルバムの最後に収録されることになったんですか?

及川:結果的にはそうですね。今までのアルバムも、10曲目はいわゆるスピードメタル曲で締めてるので、そこの枠に最終的には収まったかなっていう。

蛇石:でも、曲ができたときから、何となくそんな予感はしてましたね。

本石:これはイントロのユニゾンが鬼難しいんですよね(笑)。Racer Xっぽいというか、僕の中ではちょっとビリー・シーンをイメージして弾きました。リフのバックで、めちゃくちゃな6連とかをやってますからね(笑)。

及川:そう。今回、結構ひねった曲が多かったんですけど、「M.D.M.A」に関しては、すごくストレートに書いたんですね。ギターソロも最近はかなり頭を使って構築するようになってきたんですけど、この曲だけは自分の純度の高い、10代の気持ちじゃないですけど……言い方は悪いですが、わかりますよね(笑)? 馬鹿みたいな速弾きを最後にちょっと見せてやろうと思って本気を出して。

本石:速ければ速いほど良いみたいな(笑)。

及川:だから、ここは普通なら抜くところも、すべての音をピッキングしましたね。

――“速弾きは正義”ですからね(笑)。曲名を見ると、ちょっとギョッとするじゃないですか。聴く前は、Mardelas恒例の歌舞伎町シリーズなのかと予想もしたんですが、まったく違いましたね。

蛇石:そうですね。私は「D.D.C」(『Mardelas I』収録)とか、略すのが好きなんですよ。この曲もそのバージョンにしようかなと思って、最初は〈Midnight Dream Afterglow〉という仮の歌詞を入れてたんです。ただ、そのままだと“M.D.A”なんだけど、これは“M.D.M.A”にできるなと(笑)。そこから〈My Dream My Afterglow〉に変えたんです。イントロも、ちょっとミスリード感があるじゃないですか。ドラッグを使ってみているみたいなイメージも何となくあったので。YouTubeでトレイラーを公開したら、やっぱりコメントにも書かれてましたね。「“M.D.M.A”ってもしかして……」みたいな(笑)。ちょっと危険な香りもしていいんじゃないですかね。

――その歌詞にはどんな思いを込めていたんですか?

蛇石:アルバムの最後の曲になりそうな予感はしていたので、今作全部に通じる部分なんですけど、私がずっと書いてきた「人生とは?」といったテーマにしたいなと思っていて。「World vs Honor -仁義なき世界-」(『Mardelas Ⅲ』収録)とかは特にそうで、自分の中でブレない歌詞にしたかったというのはありますね。人生っていうのは、夢に向かって走り、掴めたとしても掴めなかったとしても、その景色を見ること、残像、残光を見ることの繰り返しだなと。だから、〈My Dream My Afterglow〉というのは、それを追いかけ続けることが生きるということなのかな、というイメージですね。

――その歩みの中には達成感もあるわけでしょう?

蛇石:そうですね。だから、残光、残像がよい記憶のときもあれば、叶わなかった悔しさも含まれてて。その残像を集めていくのが、人生の中でのやることなのかなって。

――その残像は揺るぎないもの、自分が目指す理想の姿みたいなものなんでしょうね。

蛇石:そう。やっぱり夢を追いかけるってそういうことで、その先にあるものがその残像だと思ってるんです。思っていた通りかもしれないし、思っていたものと違うかもしれない。でも、それもまた人生、という感じのテーマですね。

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