西廣智一が選ぶ、2020年メタル年間ベスト10 AC/DC、BMTH、Code Orange、Deftonesなど良作揃いの1年に

1. AC/DC『Power Up』
2. Bring Me The Horizon『Post Human: Survival Horror』
3. Code Orange『Underneath』
4. Dance Gavin Dance『Afterburner』
5. Year Of The Knife『Internal Incarceration』
6. Boston Manor『Glue』
7. Poppy『I Disagree』
8. Deftones『Ohms』
9. Oranssi Pazuzu『Mestarin kynsi』
10. Vader『Solitude In Madness』

 2020年は新型コロナウイルスの感染拡大による未曾有の事態に突入したことにより、エンタメ業界に暗い影を落としました。3月以降、来日を伴う海外アーティストの日本公演および大型ロックフェスの開催延期/中止を筆頭に、ロックダウンによる大々的な音楽活動の停止(レコーディングスタジオのみならずCDやレコードなどのプレス工場の閉鎖含む)が影響し、予定されていた一部新作のリリース延期(代表的な例としてCarcassのニューアルバム発売が2020年8月から2021年以降に延期)に加え、アーティスト自身が新型コロナウイルスに感染したことも報告されており、こういったニュースの数々に凹まされ続けたのは筆者だけではないはずです。

 また、今年は1月7日にRushのニール・パート(Dr)、6月16日にDEAD ENDの足立“YOU”祐二(Gt)、10月6日にはVan Halenのエディ・ヴァン・ヘイレン(Gt)と、一時代を築き上げたアーティストたちの訃報も続きました。これらの悲しい知らせを受け、改めて彼らが残した音楽に触れ直した、あるいは初めて彼らの音楽と接したという方もいることでしょう。私個人としても、これらのアーティストからの影響は多大なものがあり、訃報を目にしたときには愕然としたことを昨日のことのように覚えています。

Van Halen Performs “Panama”

 新たなディケイドに突入した2020年から先行きが不安になるような出来事続きですが、そんな状況を逆手にとって独自の活動をする者も少なくありません。配信技術が進歩したことで、海外アーティストのオンラインライブをここ日本でもリアルタイムで視聴することができるようになったり、ロックダウン期間を利用してプライベートスタジオにこもり、予定外の新作が早くも届けられた、なんてことも少なくありませんでした。そして、ライブに足を運ぶ機会が極端に減ったからこそ自宅で音楽に没頭する時間が増え、以前だったらスルーしていたかもしれない新作に出会うことができた。そんな喜びをたくさん感じられたのも2020年の特徴ではないでしょうか。

 正直な話、今年のメタル系年間ベストアルバムの選出にはかなり苦労しました。というのも、本当に良作揃いの1年だったからです。正統派ハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)やモダンヘヴィネスを追求するラウド系、ハードコアなどを通過したエクストリームメタルなど、幅広く“メタル”の枠に括った中から心を鬼にして選出したのが今回の10枚になります。

AC/DC
AC/DC『Power Up』

 まず、1位に選んだAC/DC『Power Up』は問答無用の“2020年を代表するHR/HMアルバム”と断言できるでしょう。やっていることは過去のアルバムとなんら変わらないが、その変わらないことを作品ごとにブラッシュアップし続けた結果、全米No.1という快挙を成し遂げたわけですから。特に今作はポップさ/わかりやすさが過去数作と比べてもっとも優れていることもあり、初めて聴くリスナーにも引っかかる曲が多かったのではないでしょうか。もちろん、従来のヘヴィリスナーが楽しめるフックも随所に用意されており、メタルリスナー以外をも巻き込む魅力を備えた1枚と言えます。

Code Orange
Code Orange『Underneath』

 2位から7位には、メタルをこの先ネクストレベルへと導いてくれるであろうバンドたちによる、“2020年らしい”傑作が並びます。特にBring Me The Horizonの『Post Human: Survival Horror』とCode Orangeの『Underneath』は、ベクトルの向きはそれぞれ少し異なるものの、方法論的には比較的近いものがあるのではと思わされる、イギリスとアメリカを代表するモダンメタルの話題作です。Bring Me The Horizonの場合、そのアルバムにBABYMETALやYungblud、Nova Twinsといった気鋭のアーティストをフィーチャーすることでミクスチャー感を増し、一方のCode Orangeはダブステップ以降のヒップホップなどとリンクすることでミクスチャー感を高めている。4位のDance Gavin Dance『Afterburner』、6位のBoston Manor『Glue』もポストロックやマスロックを取り入れた独自のポストハードコア/メタルコアにチャレンジしており、それらが見事にオリジナリティの高い作品へと昇華されている。やっている本人たちの中には「メタルをやっている」という感覚は皆無かもしれませんが、こういうバンドこそ“2020年らしい”存在ではないかと思うのですが、いかがでしょう。

Poppy
Poppy『I Disagree』

 そういった意味では、7位のPoppy『I Disagree』などはもっとも“2020年らしい”ミクスチャー感の強いアルバムだと思います。前作の時点で若干その傾向はあったものの、今作ではBABYMETALを彷彿とさせる“カワイイメタル”にまで作風をシフト。モダンなポップスやメタルコア以降のラウドサウンド、あるいは90年代のNINE INCH NAILSなどを筆頭としたインダストリアルメタル的なカラーまで取り込み、一筋縄ではいかない“メタルのおもちゃ箱”を完成させたのですから、面白いったらありゃしない。と同時に、その真逆にいる5位のYear Of The Knife『Internal Incarceration』の“しなやかだけど無骨”なハードコアサウンドは、Convergeなどが積み上げてきた初期メタルコア/マスコアをよりモダンに進化させたもの。今回取り上げる10枚の中ではもっとも距離の離れた2枚ですが、それだけメタリックなサウンドを信条とするアーティストの幅が広がったことを示すに最適なサンプルかもしれません。

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