ディカペラが歌声で再現する、ディズニーの名曲たち アカペラが持つ無限の可能性を語る

ディカペラが再現するディズニーの名曲たち

 ディカペラが3年ぶりのコンサートのために来日した。彼らはディズニーの名曲をアカペラで歌うグループとしてデビュー。メンバーは、モーガン・キーン(ソプラノ)、ケイレン・ケリー(メゾソプラノ)、RJ・ウェスナー(テノール)、オーランド・ディクソン(バリトン)、ジョー・サントーニ(バス)、アントニオ・フェルナンデス(ボイスパーカッション)からなる6人組だ。

 とにかくこの6人で素晴らしい歌を生み出す。リードボーカルがメロディを、他の5人がコーラスを歌うなんてシンプルなアレンジの歌はない。サックスやエレキギターなど楽器の音まで奏で、“マッシュアップ”という手法で2曲を合体させ歌ったりもする。その歌は、まさにボーカルマジック。彼らにそんな歌の秘密について、色々と語ってもらった。(服部のり子)

より自由度が増したディカペラの音楽

ーー3年ぶりの来日公演です。その間、パンデミックの影響で活動ができない状況が続いたと思いますが、みなさんはどんな時間を過ごしていましたか?

ジョー・サトーニ(以下、ジョー):ディカペラとしての活動ができなかったので、僕は思い切って地元に戻り、家を買って、DIYでリフォームを始めた。もともとワインセラーだった地下室をホームスタジオに改装して、楽曲制作とか、レコーディングとかをしていたよ。

アントニオ・フェルナンデス(以下、アントニオ):活動がままならないことで、このグループの行く末さえも心配になった時期もあった。でも、ありがたいことにディズニー側から色々なアイデアの提案があったので、積極的にコンテンツ作りや楽曲制作に取り組めた。この3年間で30曲もオリジナルの楽曲が生まれたんだ。

ーー自宅でできること、ということで、「ゴー・ザ・ディスタンス」(映画『ヘラクレス』より)のビデオも“ホームパフォーマンス”となっていますよね。

アントニオ:そうなんだ、自宅で様々な動画を撮影して配信していた。だから、それぞれ自宅がほとんどスタジオと化していたんだよね。部屋の隅をスタジオにして、楽曲のレコーディングを行ったメンバーもいた。そうやってクリエイティブな面に積極的に関わるなかで、僕ら自身でアレンジを手がけた曲の動画を制作することもあった。

DCappella - Go the Distance (Home Performance)

ーーその30ものオリジナル曲は、今後リリースされる予定は?

ジョー:僕らにとってディズニーの名曲は、最も大切なレパートリーで多くの人に楽しんでほしいと願っている。だからオリジナル曲だけのアルバムを作るとか、そういう予定はないよ。

ケイレン・ケリー(以下、ケイレン):そうね、何かアニバーサリーとか、特別なイベントで発表することは今後あるかもしれないね。

ーーアレンジも自分達で? 以前はプロデューサーのディーク・シャロンが全面的に手がけていたと思うんですが。

オーランド・ディクソン(以下、オーランド):ディークは、今も僕らのプロデューサーだけど、彼はもともと強制するタイプではなく、「君はこのパートから何を感じ取っている?」とか、必ず聞いてくれていた。今でも僕らのロードマップや楽曲の青写真を用意してくれるけど、それもまず先に「君はどう歌いたいの?」って意見を求めてくれる。今は、そうやって協力しながら、ディカペラの音楽を作っているんだ。ただ、アントニオが言うように僕ら自身がクリエイティブ面に関わることが増えたから、ライブで歌う「川の向こうで/カラー・オブ・ザ・ウィンド」(映画『ポカホンタス』より)は、RJがアレンジしている。今後はもっとそういう曲を増やしていきたいと思ってるんだ。

ーー来日記念盤『マジック・リイマジンド』は、1曲目から驚かされました。映画『スター・ウォーズ/新たなる希望』のバーのシーンで演奏されるインスト曲「酒場のバンド」は、誰が選曲したんでしょう?

ケイレン:私ひとりの意見ではないけど、ディカペラに参加した初日から「酒場のバンド」をやりたいと言い続けてきた。とにかく『スター・ウォーズ』シリーズの大ファンなのよ。多くの人を巻き込み、根回しもすごくしたし、そのなかで味方になってくれる人たちの力添えもあって、ようやく実現したの。

ーーなぜそんなにこの曲をやりたかったの? 劇中のキャラクターたちの会話まで見事に再現されていて、とても楽しいけど、歌詞のない、インストゥルメンタルの曲です。

ケイレン:これまでもジョン・ウィリアムズの曲とか、マイケル・ジアッキーノ作曲の映画『インクレディブル・ファミリー』の曲とか、オーケストラ編成の曲をパフォーマンスしてきた。6人の声だけで楽器編成の曲を再現することにとてもやりがいを感じているの。あなたはトロンボーン、あなたはサックスと、メンバーを振り分けながら、最終的には必要なパートだけを抽出することで、インスト曲を声だけで構築していく。そこにやりがいを感じているわ。

ーー「酒場のバンド」も完成までに時間がかかったと思いますが、どんな風にしてこの楽しい曲を構築していったのでしょうか。

ケイレン:先ほどオーランドが言っていたけど、ディークがまず青写真を描いてくれて、曲の全体像を示してくれた。そこから具体的に自分達の声でどう再現するか、スタジオであれこれ試していくの。口の形を変えて歌ってみたり、唇を震わせながら声を出してみたりと、あらゆるテクニックを駆使するなかで、楽器に最も近い音を出そうとして作りあげた曲だった。今回のコンサートでは「酒場のバンド」と、映画『インクレディブル・ファミリー』からの「ゴーゴー・イラスティガール~イラスティガールのテーマ」と「アイツはフロゾン~フロゾンのテーマ」のメドレーでは声による楽器演奏のパートがあって、トランペットとか、エレキギターが登場するの。それを観客の前で披露するのが大きな楽しみになっているわ。

DCappella - Cantina Band

ーー「酒場のバンド」のビデオは、どこで撮影したんでしょう? 『新たなる希望』のバーを再現しています。

アントニオ:実は、フロリダのディズニーワールド内にある『スター・ウォーズ』のセクションに、あのバーが再現されたアトラクションがあって。僕らは、そこで撮影させてもらった初めてのバンド。ホログラムまで用意してもらったし、エキストラの人も大勢いたから、まるで映画のセットにいるような気分を体験させてもらったよ。

RJ・ウェスナー(以下、RJ):本当にアメイジングな体験だった。撮影は夜10時から翌朝5時までかかったんだけど、お客さんがひとりもいないディズニーワールドに足を踏み入れるのって、それだけで不思議な感じがしたね。

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