『ミラベルと魔法だらけの家』挿入歌「秘密のブルーノ」、ディズニー初バイラルヒットの要因は? 「Let It Go」などと比較
ディズニー映画『ミラベルと魔法だらけの家』のオリジナル・サウンドトラックが、米Billboard 200にて6度目の1位を獲得した(2月25日現在)。さらに劇中の挿入歌「We Don’t Talk About Bruno(秘密のブルーノ)」も大ヒットを記録。これまでのディズニーソングとは違い、少しダークでネガティブな魅力を放つ同楽曲が、なぜ多くの人々を魅了しているのか? ディズニーを代表する「A Whole New World」、「Let It Go」といった名曲と比較しながら考える。
昨年11月に公開された『ミラベルと魔法だらけの家』。南米コロンビアを舞台にした物語を彩るラテンのリズムと陽気な明るさが話題を呼び、サウンドトラックが『アナと雪の女王2』以来となる全米1位を獲得。イギリス、カナダ、アイルランドでも同様に1位を獲得するなど、世界各国で話題となっている。
同作の収録曲「秘密のブルーノ」は、1992年に公開された『アラジン』の挿入歌であった「A Whole New World」以来となる全米シングルチャート1位を記録し、ディズニー映画の音楽としては2013年に大ヒットした『アナと雪の女王』の「Let It Go」(最高5位)を超えるヒットとなった。
「秘密のブルーノ」の前に、「A Whole New World」や「Let It Go」といったディズニーの名曲を改めて分析すると、両曲ともネガティブな要素をポジティブに変換するパワーがあり、メジャーとマイナーのギャップから生まれるドラマ性が、観た人の感情に訴えかけているように思う。
「Let It Go」は、作詞・作曲をクリステン・アンダーソン=ロペス、ロバート・ロペス夫妻が手がけた。主人公の1人・エルサが魔法を抑えることなく使い、ありのままに生きる喜びを歌った楽曲だが、寂しげなイントロから徐々に熱を帯び、最後に感情を爆発させるような歌としても知られており、気持ちの解放が歌詞とメロディの両面で表現された1曲だ。一方、「A Whole New World」は、デュエット形式のバラード曲として有名で、数多くのディズニー音楽を手がけるアラン・メンケンが作曲、ティム・ライスが作詞を手がけている。アラジンとジャスミンが魔法の絨毯に乗り世界中を旅しながら、希望に満ちた未来を夢見るといった楽曲。ジャスミンの王女であり自由がない立場というのはネガティブな要素だが、世界中の様々なものを観て周りながら、2人の未来を想像する姿は実にポジティブだ。
では「秘密のブルーノ」はどうだろうか。ブルーノは主人公であるミラベルの叔父で、未来を見る能力を持っており、それがゆえ未来に起きることを恐れてしまい身を隠して暮らしていた。ミラベルを除くマドリガル家に起きていることを食い止めるには、ブルーノの力が必要だと感じたミラベルは、家族たちにブルーノについて聞いて回る。それに対する家族たちの返答がこの「秘密のブルーノ」で、歌詞の内容はブルーノについては話すな、ブルーノの悪い予言は当たる、といった不吉さを感じさせるもの。ネガティブではあるがユーモアたっぷりで、ブルーノとは一体どんな人物なのか余計に興味がそそられ、気がつけば聴き手が求めてしまう曲でもある。前述のディズニーのヒットソングとは少し異なるが、ある意味でネガティブをポジティブに変換するパワーを持っていると言えるだろう。また、家で過ごす時間が多くなった現在において、今まで知らなかった家族の一面を知る機会も多くなったことで、この楽曲がより自分たちにとって身近なものと感じられたことも、ヒットの要因の一つかもしれない。