ディカペラが歌声で再現する、ディズニーの名曲たち アカペラが持つ無限の可能性を語る

ディカペラが再現するディズニーの名曲たち

ディカペラメンバーが選ぶ好きな“ディズニー音楽の作曲家”

ーーでは、さらに来日記念盤について聞かせてください。映画『ミラベルと魔法だらけの家』は、サントラが全米1位の大ヒットになりましたよね。そのなかからシングルもヒットもしているけど、今回「増していくプレッシャー」を選曲した理由は?

オーランド:プロジェクトマネージャーから推薦された曲だったんだ。理由として女性の地位向上というメッセージを伝えたいという意図があった。僕らはグループとして多様性、受容の大切さを明確に打ち出していきたいと常に思っている。だから、この曲では女性2人が前面に出て歌い、僕ら男性陣はサポートに徹するアレンジになっている。今の時代、女性はいつもプレッシャーを感じながら生きていると思う。頑張るために弱さを隠し、常に気を張って強く見せなくてはいけない。だからこそ、この歌のメッセージに同意して歌うことにしたんだ。

ーー女性陣は、この歌に共感している?

ケイレン:オーランドの言う通りなんだけど、実はこの曲、歌詞の言葉数がめちゃくちゃ多いの。しかも繰り返しの歌詞がほとんどないから、正直言うと、歌詞を覚えるのが大変だった(笑)。でも、だからこそ、何度も何度も繰り返し歌って歌詞を覚えるなかで、この曲の意味が自分のなかに入り込んでくる感覚があった。レコーディングをして、リハーサルを重ねてライブで歌うなかで、歌詞の意味が観客にも伝わっていると実感している。世の中の女性にちゃんと見ていますよ、あなたたちの声は、しっかり私たちに届いていますよ、ということを伝えられる曲に仕上がっていると思う。

ーー作曲したリン=マニュエル・ミランダについてはどう思っていますか? 俳優である一方で、ミュージカルを製作し、ディズニー作品の音楽も手がけるようになった才能ある人ですが。

ケイレン:大好きよ。曲にラップを入れたり、多種多彩なモチーフを取り込むのも上手でしょ。本当は、『ミラベルと魔法だらけの家』からもう1曲やる予定だったの。

RJ:基本的にはシアトリカルというか劇場型の音楽で、キャラクター、登場人物になったような気持ちで歌うことができる音楽だと思うよ。

オーランド:僕は、その反対の見方をしている。もともと典型的なブロードウェイミュージカルにあまり興味はないんだけど、彼が製作した『ハミルトン』を観た時、初めてブロードウェイに僕も出演してみたいと思った。『ハミルトン』ではヒップホップを取り入れたように、彼の作品は現代風だよね。そんなミランダだから、伝統あるディズニーの作品に新しい要素を取り込むのが上手で、僕のような人間にも親和性というか、ミュージカル作品との接点を作ってくれている。そこが彼の大いなる魅力。こういう風にそれぞれ感じ方が違うのも、僕らがバックグランドの異なる人間が集まってできたグループ、ということを象徴しているよね。

ーーもう少し作曲家について聞かせてください。アラン・メンケンについてはどう思いますか?

RJ:今の時代、ミュージカルとポップミュージックの境界線が曖昧というか、『ハミルトン』もそうだけど、音楽がすごくポップになったよね。そのトップランナーのひとりがアランだと思う。これまでミュージカルと言えば、『ウエスト・サイド・ストーリー』とか、『南太平洋』とか、スタンダードナンバーのイメージが強かったけど、今はポップ性が重視されている。そのなかでアランの楽曲も映画とは異なる、ソウルや、ポップの要素をさらに加えたアレンジで僕ららしい歌に仕上げている。彼の音楽と歌の核にあるキャラクターの心情というところは、みんな共感しながら歌っているよ。

アントニオ:僕ら、アランの伴奏で『美女と野獣』の曲を歌ったことがある。ディズニー作品であれだけの実績を残している偉大な作曲家だから、みんな大好きだし、リスペクトもしているよ。

ーー他に好きな作曲家はいますか?

ジョー:僕は、ハンス・ジマーが好き。ディズニーでは『ライオン・キング』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』の音楽を手がけているけど、彼のオーケストラサウンドは、(グスタフ・)マーラーのような分厚い音の圧があって、そこが好きなんだ。もちろんエルトン・ジョンが作曲した『ライオン・キング』の歌もいいと思う。

モーガン・キーン(以下、モーガン):私は、EDMとか、K-POPのような音楽が個人的には好きで、ディズニーであれば『インクレディブル』シリーズの音楽を作曲しているマイケル・ジアッキーノが好きね。

ケイレン:私はいつかルドウィグ・ゴランソンが作曲した『ブラック・パンサー』の曲をやりたいと思ってる。

RJ:僕は、ランディ・ニューマンが好き。心にグッと刺さるような音楽を書く作曲家だよね。ピアノの弾き方もそうだし、コード進行などは音楽理論好きの人にはたまらない。『モンスターズ・インク』とか、『トイ・ストーリー』の音楽を手がけているよね。人生経験を積んでいる人ならではの音楽だと思うし、音楽から生き様のようなものが感じられるのも好きなんだ。

オーランド:僕は、ジョン・バティステの『ソウルフル・ワールド』が良かった。これまでのディズニーにはなかった音楽をこの世界にもたらしてくれた。そういう意味でも僕はうれしかったな。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる