映画『サバカン SABAKAN』ANCHOR×金沢知樹監督 特別対談 主題歌「キズナ feat. りりあ。」制作秘話と伝えたいメッセージ

映画『サバカン SABAKAN』キービジュアル
映画『サバカン SABAKAN』キービジュアル(©2022 SABAKAN Film Partners)

 草彅剛が出演する映画『サバカン SABAKAN』(8月19日公開)。舞台は1980年代、長崎の田舎町に暮らす2人の少年のひと夏の冒険が描かれた作品だ。美しい長崎の風景、懐かしい80年代の暮らし、素朴で心優しい両親。“鯖缶”をきっかけに、胸に広がる郷愁。懐かしくて温かい情景が描かれる。監督を務めたのは、脚本家として、湊かなえ原作のドラマ『境遇』、国際エミー賞にノミネートされた『半分ノ世界』、TBS日曜劇場『半沢直樹』、Netflixオリジナルドラマ『サンクチュアリ -聖域-』などを手がけ、本作が長編監督デビュー作となる金沢知樹。主題歌「キズナ feat. りりあ。」のサウンドプロデュースは、『地縛少年花子くん』や『デカダンス』、『A3!』などのアニメやゲーム、ZOCや大森靖子などの楽曲を手がけるANCHORが担当。『サバカン SABAKAN』に秘められたみずみずしく色あせない輝きについて、2人が語る。(榑林史章)

ラストシーンを考えている時、ずっと「キズナ」が頭に流れていた

金沢知樹
金沢知樹監督(©2022 SABAKAN Film Partners)

――映画『サバカンSABAKAN』は、1980年代に幼少期を過ごした経験がある者にとって響くものがあり、子供の頃を思い出して胸の奥が熱くなりました。本作を作ることになったきっかけや、金沢監督の故郷である長崎で映画を撮ろうと思ったことについて教えてください。

金沢知樹(以下、金沢):もともと僕は、芸人になろうと思って東京に出てきたんですけどダメで、その後はテレビの構成作家やライターの仕事をしながらなんとか食いつないでいました。上手く行かなければ行かないほど、地元・長崎のことを思い出すんですよね。でも帰れなくて、友達の結婚式に呼ばれても「仕事が忙しくってさ」とか「◯◯さんとの仕事があって」とか、全く会ったこともない人の名前を出して嘘をついて(笑)。でもやっぱり長崎に帰りたくて、“もし長崎に帰ったらどういう人生を送るんだろう”という想定の文章をmixiに書いたんです。創作半分、事実半分で、長崎のことを書いたのが、『サバカン SABAKAN』の原型です。

――ブーメラン島とかイルカの話も出てきますが、あれも監督の経験ですか?

金沢:ブーメラン島は実際にあって、そこにイルカを観に行ったこともあります。でも実際に見たものはイルカの死骸で、それだと『スタンド・バイ・ミー』すぎると思って作中では生きたイルカにしました。で、そういう話をmixiで書いたら「泣ける」と軽く話題になったんですね。僕は別に泣かせるつもりで書いたんじゃないですけど。それから、以前からご縁のあったエグゼクティブプロデューサーの飯島三智さんと仕事をしていく中で、「草彅剛さんが小説を読む形のラジオドラマを連ドラみたいな感じでやってみたい」というお話を聞いて、長崎での昔話を話したら「それを小説の形にしてみてほしい」ということで。mixiでは日記風に書いていたので小説風に直して見ていただいたら気に入ってもらえて。それで草彅さん主演のラジオドラマを制作していたのですが、いろいろな事情で結局世に出なくなってしまったんです。

――それはすごく残念でしたね。

金沢:草彅さんが収録の途中、泣くのを堪えながら朗読するようなシーンもあって、とてもいい作品だったので残念でしたね。それから数年後、飯島さんが急にやって来て「あれを映画にしよう」ということで、できあがったのがこの『サバカン SABAKAN』です。

――今回は公開されて良かったです! 観る人の世代によって様々な感傷がある映画だと思いましたけど、監督ご自身としては、完成してどんな手応えを感じていますか?

金沢:最初に映画にしようと誘われた時は、「映画にするのは難しいんじゃないかな?」と思いました。映画の興行もプロデュースもやったことがない僕ですが、こういう淡々とした作品が、果たしてエンタメとして成立するのかどうかという懸念がありました。作るからにはもちろん気持ちを込めましたし、できあがった後自分なりには手応えを感じたんですが、「観た人はどういう気持ちになるんだろう?」という思いは残っていて。でも試写を観てくれた方々が、みなさんすごい熱量で連絡をくれたんです。「めちゃくちゃ良かった」って。そういう反応があるとは思っていなかったのですごくびっくりしたし、そこでようやく安心することができましたね。

――最後に流れるANCHORさんによる主題歌「キズナ feat. りりあ。」が、全てを優しく包み込んで、まとめてくれている感じがありました。ANCHORさんは、映画をご覧になってどんな印象を受けましたか?

ANCHOR:僕は1992年生まれなんですけど、映画の時代背景的には自分の親の世代の話で、言い方が難しいですけど、僕からしたら「ファンタジーの世界」だと思いました。教科書で見たような生活や文化がそこにあって、スマホがないことに途中で気づいて衝撃でした。でも振り返ってみると、僕がまだ幼かった90年代終盤~2000年頃までは、確かに友達の家に電話をして遊ぶ約束をしていたなって思い出したし。そういう思い出がよみがえった部分も含めて、すごく「きれいな世界」を見せてもらえたというのが、一番の印象です。もちろんストーリーにも感動しましたけど、ファンタジーのようにきれいな風景に、まずは心を持っていかれました。

金沢:すごくうれしいです。

――主題歌の「キズナ」はORANGE RANGEのカバー曲で、これは監督が強く要望したそうですが、どうしてこの曲を選んだのですか?

金沢:自分の中では、最初からラストシーンだけは決めていたんです。それを考えている時、ずっと「キズナ」が頭に流れていたんです。そもそも「キズナ」は大好きな曲だから「キズナ」は絶対で、作品自体を「キズナ」に寄せた部分もありますし、「やるならこの曲」と最初から決めていました。

――サウンドプロデュースはANCHORさん、ボーカルはりりあ。さんというのも、監督からですか?

金沢:はい。最初に決まったのがりりあ。さんです。ORANGE RANGEさんの声も素晴らしいけど、『サバカン SABAKAN』は少年2人の物語なので、2人を見守るかのような女性の歌声のほうが合うんじゃないかと思っていて。で、僕、TikTokを見るのが好きなんですけど、バヤシさんの料理動画にハマっていた時に、りりあ。さんの動画が流れてきて。その時はOfficial髭男dismさんの曲を弾き語りでカバーしていたんですけど、その声を聴いて「この子に歌ってほしいな!」と直感で思いました。それと同じくらいの時期に信じられない偶然なんですけど、知り合いの娘さんがりりあ。さんだったと判明して。りりあ。さんにオファーした流れで、ANCHORさんを紹介していただきました。それで上がってきたものを聴いて、「すげえな!」って心底思ったんですよね。

ANCHOR:ありがとうございます。

金沢:ちゃんとORANGE RANGEさんの力強さも残しつつ、それでいて今の世代の音楽観が見事に融合していました。ORANGE RANGEさんの「キズナ」はボーカル3人がコーラスを重ねる力強さがあるけど、りりあ。さんは1人だからそこはどうなるのかなって、最初はちょっと心配だったんです。でもANCHORさんがそれを見事に、りりあ。さんの声と融合させてくれていて。力強さがあるし、透明度がすごく高い歌声もちゃんと尊重されている。正直、想像以上ですごくびっくりしました。本当にありがとうございます!

ANCHOR:こちらこそです!

ANCHOR『キズナ feat. りりあ。』Music Video

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