ao、“音楽の先輩” Yaffleプロデュースで広がった表現の幅 YouTube映画『チェンジ』にちなんだ学生生活のエピソードも
8月3日、aoが新曲「チェンジ」をリリースした。この楽曲は、現役高校生の映像クリエイター シンクレア・ウィリアムが監督を務めた、東宝初のYouTube映画『チェンジ』の主題歌に起用されている。楽曲を書き下ろしたのは、本作の劇伴も手掛けるYaffleと、Yaffleとは「青信号」を共作したシンガーソングライター Furui Riho。aoにとっては初めて提供を受けた楽曲であり、Yaffleのトラックとディレクション、Furui Rihoのメロディと歌詞、aoの歌、それぞれの手腕が見事な化学反応を起こしている。ユニークなアーティストたちが集った中でもaoの歌の強い個性が輝いていて、改めてaoは稀有なシンガーであると思わされる仕上がりに。クラスのマドンナの隣の席を巡るバトルロワイアルを描いた同映画のテーマにあわせて、現役高校生であるaoに「席替え」や「校則」について聞いたところ、驚くべき実体験のエピソードも飛び出した。(矢島由佳子)
「初めてJ-POPを歌ったなという感じがした」
ーー「チェンジ」、すごく新しさを感じました。
ao:今回はYaffleさんとFurui Rihoさんによる楽曲なので、自分からは出てこないメロディラインや歌詞になっているんじゃないかなと思います。YouTube映画『チェンジ』のテーマが「席替え」なので、ちょっと挑発的な歌詞や、かっこいいビートでラップもあって。私にとって初めてラップに挑戦した曲になりました。
ーーでも曲のテーマは前作「リップル」から連なるような、aoさん自身の「音楽というコミュニケーションを通じて変わっていきたい、自分を深めながら生きたい、もっと広い世界を見てみたい」といった姿勢も重なっているように感じました。
ao:MVの構成が「音楽を聴いてなりたかった自分になる」というふうになっていて、それが「リップル」に似ているなと思いました。いつもは何もできないけど、音楽を聴いているときだけ妄想のかっこいい自分になれる、みたいなことが歌詞にも出ているような気がします。歌詞を見て思い浮かんだのは「わがままで最強の自分」というイメージだったので、余裕な感じを持ちつつ、表情をたくさん作れるような歌い方を意識しました。
ーーYaffleさんとの制作は、aoさんにとってどんな経験になりましたか?
ao:自分の新しい一面にチャレンジできる大切な機会だと思いましたし、オケからも学ぶことがいっぱいあって。たとえば、私の中にはロックな感じがなかなかないんですけど、この曲はギターをメインで使っているので、「ギターを打ち込むときはこういう感じで、こういった音色のドラムと合わせれば雰囲気が出るんだな」とか。自分でトラックを作るときに「こういうタイミングでドラムを抜くといい」「こういうときは音色を変えるといい」とか、細かいところがすごく勉強になりました。いろんな声を重ねて面白くすることも初めてやったんですけど、遊び心ある感じが良くて、私も取り入れてみようって思います。レコーディングのときは、実はYaffleさんが海外にいらっしゃってリモートでディレクションしていただいたんですけど……。尊敬の眼差しで見させていただきました。
ーー具体的にはどんな印象でしたか?
ao:フランクな方で、レコーディングが楽しかったというのがまず一番で。お仕事、というより“音楽の先輩”という感じで気さくに指導していただきました。レコーディングは、今まで録ったことないくらいのテイクの多さだったんです。具体的に「こうしてほしい」というよりは、淡々と「ここもう1回お願いします」って言ってもらって、そのたびに「次はどういう歌い方をしよう」と自分で自由に探りながら歌う感じで。そうやってレコーディングが進んでいく中で、Yaffleさんの曲に対するイメージや考えを知れた感じがしました。
ーー具体的に指示しないことで、aoさんならではの歌を引き出そうとしていたということですよね。他の人が歌うとこのフロウや発音は出てこないと思うんです。
ao:たとえば〈宿題は明日やるから〉の部分は、メロディに乗せるために、母音がくっついている部分をあえて分けずに歌ったりして。もともとのデモ音源では単語ごとにきっちり分けて歌われていたんですけど、私の歌い方を混ぜながら、滑らかにすることを意識しました。歌詞の乗せ方が自分の作り方とはまったく違うので、曲に巻き込まれてもダメだなと思って、自分なりの歌い方を混ぜながら一番いい部分を探していくことを意識していましたね。工夫しようと思う点が多くて楽しかったです。
ーーaoさんの歌の個性が、他の人が書いた曲でもこれだけ際立っているのがaoさんのすごさであり、Yaffleさんのディレクションのすごさでもあって、それがこの曲の魅力を担っているのだなと感じます。メロディラインと歌詞はFurui Rihoさんによるものですが、Rihoさんのソングライティングにはどんな印象を持ちましたか?
ao:この歌詞にはいろんな感情が入っていると思うんです。頼み込む感じから始まって、でも〈想像次第だもん/契約書には書いてないわ〉ともあって、ブロックごとに主人公の感情や役が変わっている気がしました。1番と2番でメロディラインもAメロも全く違って、表情の切り替えがあるというか。歌い方も全く変えることになるので表現の幅が広がって、曲のテーマを歌詞だけじゃなく声でも表現できて、それがYouTube映画『チェンジ』をより面白いものにしてくれるんじゃないかと思いました。
ーーこの曲は懐かしさと今っぽさの両側面が混ざり合ったような曲調とサウンドプロダクションであると感じたのですが、aoさんはどうですか?
ao:私の曲は洋楽をベースにしたものが多いんですけど、今回は初めてJ-POPを歌ったなという感じがしました。特にメロディライン。サビの最後の方とか、音域が広くなっていく盛り上がり方がJ-POPな感じが強いなって。そういう曲に挑戦するのは初めてだったので楽しく歌えました。