男声VOCALOID=KAITO、“民族調曲”や“プロジェクト系”で確立してきた独自の立ち位置 新たに輝けるジャンルの発掘へ
このように、ある種他のVOCALOIDとは一線を画した立ち位置を確立させ、長年人気を得ているKAITO。とは言え、上記2ジャンルの音楽は、ピーク時に比べるとボカロ界隈ではやや衰退しているのも事実だ。しかし、その中でも依然として、KAITOを根強く支持し続ける人々やボカロPも存在する。ポップスやロック、あるいはEDMなど、ボカロ界隈で主流な音楽ジャンルにおける彼の輝かせ方が、今まさに模索されていると言っても過言ではないだろう。
KAITOを用いた楽曲を頻繁に制作しているプロデューサーとして、「FLASH」(2021年)「ガーネットの涙」(2022年)などの香椎モイミ、「敗走」(2019年)「しわくちゃ」(2021年)を手掛ける傘村トータが挙げられる。
また「リテラシー」(2021年)「ゼロサム」(2021年)、そして「シャンティ」(2021年)で本格的なEDM、トラップサウンドにKAITOを落とし込み、近年稀に見る彼のヒット曲を生み出したwotakuの存在も欠かすことはできない。
加えて『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、『プロセカ』)にて定期開催されている楽曲公募企画『プロセカNEXT』にて採用を勝ち取った、すこやか大聖堂「ジウダス」(2021年)も、彼の評価に一役買った楽曲となっている。
同時に、依然として女声VOCALOID、特に初音ミクとのデュエット相手として、KAITOがその存在感を揺るがすことがないのもまたひとつの事実だ。『プロセカ』に書き下ろされたデュエット曲、まらしぃ×堀江晶太(kemu)「88☆彡」(2022年)も、往年のファンから新規ファンまで幅広い層に支持される曲となっており、初音ミクと相並ぶ存在として、KAITOが確固たるポジションを築いている何よりの証拠とも言えるだろう。
従来の立ち位置のみならず、新たに輝けるジャンルの発掘へ。最初期の時代からVOCALOIDという文化を担う彼が今後生み出すかもしれないムーブメントに、これからも期待し続けたい。