新連載「lit!」第6回:DECO*27、メドミア、r-906、袖野あらわ……ボカロシーンの試行錯誤と新展開が垣間見える楽曲たち

 今回は、ボカロシーンの変わらぬ魅力と新たな音楽的発展が垣間見える4曲をチョイス。ボカロPの先駆者でありトップランカーでありつづけるDECO*27の看板シリーズ「愛言葉」の新作や、ボカロ曲ならではの“遊び”がふんだんに盛り込まれたメドミアの「絶対敵対メチャキライヤー」がシーンを盛り上げる一方で、4月に開催されたボカコレ2022春のランキング結果が確定。ボカロ音楽の新たな境地を切り拓くr-906の「まにまに」、袖野あらわの「無題 ep.01」が上位を獲得するなど、シーンの幅広さを体感する春である。

「愛言葉Ⅳ feat. 初音ミク」DECO*27

DECO*27 - 愛言葉Ⅳ feat. 初音ミク

 「愛言葉」という言葉を目にするだけで、ある種の高揚感を覚えるボカロファンは少なくないのではないだろうか。ボカロ黎明期から現在にいたるまで第一線で活躍し続けてきたボカロP・DECO*27が2009年に投稿した、リスナーに向けての感謝を綴った「愛言葉」に端を発する同シリーズ。そこから2013年に「愛言葉Ⅱ」、2018年に「愛言葉Ⅲ」を発表し、ついに2022年5月27日、「愛言葉Ⅳ」が公開された。メロディはこれまでの「愛言葉」シリーズを下敷きにしつつ、歌詞にはこれまでの楽曲「ヴァンパイア」、「乙女解剖」、「アンドロイドガール」等のフレーズが盛り込まれており、DECO*27楽曲をつぶさに追ってきた人ほど感慨深いものになっているはず。事実、楽曲が公開されるとTwitterでトレンド入りし、わずか1日で100万回再生を突破。こうした反響からも、どれほどのファンから愛され、待望されている楽曲かがわかるだろう。ボカロPとして随一のキャリアを持つDECO*27だからこそ生み出せる伝統芸だ。

「絶対敵対メチャキライヤー」メドミア

絶対敵対メチャキライヤー - ミクと可不

 シンセの軽快なメロディ、細かな韻踏みと言葉遊び、音ハメの気持ちよさ、曲に仕込まれたネタ要素など、ボカロ曲らしいエンタメ性の詰まった楽曲を生んできたメドミアの新曲は「絶対敵対メチャキライヤー」。タイトルからもコミカルさがにじみ出るこの曲は、まじめな優等生と不真面目ヤンキーのいがみ合いを描いており、初音ミク×可不によるかけあいと、MVのアニメーションの相乗効果でより楽しい作品に仕上がっている。単体のボカロ曲としてはもちろん、この曲をカバーする歌い手コラボなど、ここからの二次的な展開も期待したくなる。あらゆる角度から見て、ボカロ文化らしいエッセンスがいっぱいに詰まった一曲だ。

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