IRyS、日本と海外を横断するホロライブENの“歌姫” Elements Gardenメンバーが紐解く、シンガーとしての魅力は?

エレガが語る、IRySのボーカル

 ホロライブEN所属のVTuberのIRySが、7月11日にEP『Quarter Bravery』をリリースした。同作の楽曲制作は、多数のアニメ作品やシンガーの楽曲を手掛けるElements Gardenが担当。ケルト~アイリッシュ音楽をベースに、“喜怒哀楽”の感情をテーマにしたバラエティ豊かな全4曲が収録されている。

 IRySは、2021年7月11日に配信デビューし、その翌日には1st EP『||:Caesura of Despair』をリリース。その後もオリジナル作品をコンスタントに発表するなど、シンガーとしての存在感を示してきた。ロックやエレクトロ、R&Bなど、その音楽性は楽曲によって多岐に渡ると同時に、日本語と英語を駆使したボーカルはさまざまな表現を可能としている。

 Elements Gardenがホロライブメンバーに楽曲を提供するのは今回がほぼ初となるが、もともと日本のアニメファンでもあるIRySとElements Gardenの相性の良さを存分に発揮したEPに仕上がっている。今回リアルサウンドでは、楽曲制作を担当したElements Gardenの藤田淳平、都丸椋太、近藤世真にインタビュー。レコーディング真っ只中というホットなタイミングに、EP制作やIRySの歌声に対する印象などを語ってもらった。(編集部)

「歌ってもらった瞬間に“やったー!!”という謎の感想が出た」(藤田)

IRyS
IRyS

ーーみなさんとホロライブの繋がりは、過去に『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』のコラボでカバー曲のアレンジを担当されていたり、都丸さんと近藤さんがときのそらさんのファンクラブ特番ライブに出演されたことはあったと思うのですが、楽曲提供は今回が初めてになります。オファーが来た際の率直な感想を教えてください。 

藤田淳平(以下、藤田):まずは単純に、我々にお願いしたいと思っていただけたことがすごく光栄でした。 

都丸椋太(以下、都丸):そうですよね。IRySさんは、今年のときのそらさんの誕生日配信にも出演されていましたけど、僕はそこで初めて歌を聴いて、「とてもいい歌声だな」と思っていました。 

ーーもともとシンガーとして魅力を感じていたんですね。 

近藤世真(以下、近藤): IRySさんはホロライブEnglishに所属されている方なので、世界中の方々に曲を聴いていただける機会になるのかな、とも思いました。プレッシャーも感じていましたけど同時に楽しみでもあるという気持ちで、僕もすごく光栄に思っていました。 

藤田:ちょうど(取材の)数日前にレコーディングをしたばかりなんですが、その際、歌ってもらった瞬間に「やったー!!」という謎の感想が出てしまいました。トークバックでIRySさんがいるレコーディングブースにも聞こえるように言ってしまって(笑)。もちろん、その時点では試しに歌っていただいた段階ではありましたが、声出しの段階で歌を自分のものにされていたので、「すごくいいレコーディングになりそうだな」と感じたんです。 

近藤:僕も思わず拍手してしまいました。練習ではありましたけど、そのテイクが素晴らしかったんですよ。なので、IRySさんが練習で歌った瞬間に、藤田さんの「やったー!!」という声と僕の拍手がスタジオで鳴っていたという……。 

都丸:(笑)。ご本人の中で「ここはこんなふうに歌おう」「こういうニュアンスをつけよう」ということをある程度想像して来てくださっていたので、練習の時点で、「これ以上どうディレクションしたらいいだろう?」というぐらいに仕上げてきてくださっていましたね。 

藤田淳平
藤田淳平

ーーElements Gardenのみなさんはこれまで様々なシンガーの方々に楽曲提供をしてきたと思いますが、IRySさんの歌声にはどんな魅力を感じますか? 

藤田:まずは、「言葉が入ってきやすい歌声だな」と思いました。リズムがタイトで、それに対して言葉がまったく遅れないので聴いている人にも歌詞が入ってきやすい。最初に収録した「 BERSERKER」はテンポが速い楽曲でしたが、そこでも一つひとつの歌詞が入ってくるような雰囲気で、歌自体にグルーヴが感じられたのが印象的でした。 

都丸:「BERSERKER」はBPMが190ぐらいだったので、普通に考えたらリズムが取りにくいと思うんですけど、まったく遅れることなくバチっとはめてましたよね。 

藤田:あとは、当たり前なんですけど、英語の発音がものすごく綺麗で。それに加えて、日本語も本当にお上手でした。でも、ひとつだけIRySさんが意味を聞いてきた単語がありました。それが確か、「燦燦と」という言葉で。そこをどう表現するか考えるために意味を教えてほしい、と聞いてくれていたので、とてもありがたく思いましたね。 

ーー今回のEPの全体像はどんなふうに考えていかれたんですか? 

藤田:最初にオファーをいただいた段階で、「4曲入りで、それぞれ「喜」「怒」「哀」「楽」をテーマにした楽曲にしてほしい」というしっかりとした要望をいただきました。おそらくですが、EPの中で4曲それぞれに違うテーマを設定することで、、聴き応えのある作品を作りたい、ということだったのかもしれません。僕らとしても、楽曲ごとにIRySさんの色々な表情を見せることができる、と思いました。それに加えて、全体的に北欧音楽的な、ケルティックな要素が入ったものにしてほしい、というリクエストもありました。 

 その時点で、4曲それぞれに「こういう雰囲気がいいです」という大まかなアイデアをいただいていたので、まずはそれをもとに、僕が楽曲ごとの担当メンバーを決めていきました。都丸くんと近藤くんについては、今回の布陣を考えたときに僕の中で「きっといいものを出してくれる」という信頼があったので、絶対にこの2人にお願いしようと決めて「怒」がテーマの「BERSERKER」と、「楽」がテーマの「ENJOY! JOY!! JOYFUL!!!」をそれぞれ書いてもらいました。残りの2曲は、僕が作曲をしつつ、「喜」をイメージした「Delight」では笠井雄太くんが、「哀」をイメージした「哀の十界」では新人のソンウくんがアレンジで入ってくれています。最初の打ち合わせのときは、2人とどんな話をしたんだっけ? 

都丸:まず、ケルティックの要素で作品をまとめるときに、全員が王道のティンホイッスルなどを入れてしまうと楽曲が似通っちゃうので、「この曲ではティンホイッスルを使おう」「この曲はフィドルを使おう」と、ある程度の楽器の住み分けを話し合いました。 

藤田:せっかくテーマを分けているのに、サウンドが似通ってしまうと面白くないと思ったんです。その結果、近藤くんが考えてくれた「ENJOY! JOY!! JOYFUL!!!」のイントロはなくなってしまったんですが……。 

近藤:(笑)。実は4曲目「ENJOY! JOY!! JOYFUL!!!」には、もともとはもうひとつ用意していたパートがありました。でも、そのイントロパートをなくした結果、今回のEPに歌はじまりの楽曲ができたので、他の楽曲と変化をつける意味でもよかった、と思っています。 

ーーケルト~アイリッシュ音楽の要素を入れつつも、楽曲ごとに音楽性の幅が感じられるように考えていかれたんですね。 

藤田:そうですね。使っている楽器だけではなく、音階などでも楽曲ごとの違いを表現できているのかな、と思います。とはいえ、我々に話をいただいているということは、ある種アニソンテイストを期待されているのかなとも思ったので、今回は自分たちが得意としている楽曲に、ケルティックな要素を何割か入れていきました。特に、近藤くんは楽曲の中で遊び倒していたよね。 

近藤:今回の曲はかなりモリモリにしてしまいました(笑)。 

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