IRyS、日本と海外を横断するホロライブENの“歌姫” Elements Gardenメンバーが紐解く、シンガーとしての魅力は?

エレガが語る、IRySのボーカル

「英語詞の発音はレコーディングの中で決めていった」(都丸)

都丸椋太
都丸椋太

ーーでは、1曲ずつ制作時のお話を聞かせてください。まず、「喜怒哀楽」の「喜」が表現された1曲目の「Delight」はどんなふうに作っていったんでしょう? 

藤田:この曲の場合、別で「楽」をテーマにした楽曲もあるので、ハッピーな方向性というよりは、フレッシュな旅立ちの曲をイメージしました。あまり「アニソンロック」とは言いたくないんですが、自分の中でも定石がある正統派のロックを打ち出してみよう、というのが大まかなコンセプトです。それから、イントロにティンホイッスルを加えたり、メロディにドリアンスケールを加えたりして、民族音楽っぽさをパズル的にちりばめていきました。 

ーーティンホイッスルは、ケルト~アイリッシュ音楽と聞いて最初に思い浮かぶことも多い代表的な楽器ですよね。 

藤田:やっぱりそうですよね。それに、日本人は好きな方が多いイメージがあります。 

ーーこの曲が1曲目にあることで「今回のEPはケルト音楽がテーマなんだな」と分かるような雰囲気になっているように感じますし、「Delight」には王道感もあると思うので、まるで“異世界転生モノ”のアニメ作品のOPのような風景を想像しました。 

藤田:もしかしたら、無意識のうちにサビまでを(アニソンのOA用の尺である)89秒で作っていたかもしれません(笑)。あと、ちょうど今朝バイオリンソロを録ってきたところなんですけど、今回は吉田篤貴さんという方にお願いしました。この方はバイオリニストでもありつつ、カントリーやブルーグラス、北欧系も得意な方で、前からぜひお願いしたいと思っていたんです。結果として、譜面に書ききれないところまで汲み取って表現してくださって素晴らしかったです。 

都丸:この曲は今回の4曲の中で一番アイリッシュの要素を感じる楽曲ですし、爽やかで疾走感のある雰囲気で、アルバムのOPとしてとても聴きやすいですよね。 

近藤:あと、藤田さんはリズムについて「8ビートにしたい」と仰っていましたよね。「喜」と「楽」でテーマがある程度似ている4曲目と被らないように意識されたんだと思います。 

ーーなるほど。4曲目は対照的にカッティングギターを活かしたリズムが印象的でした。 

近藤:そうですね。これに関しても、藤田さんから「16ビート系でいきたい」というオーダーがあったので、リズムの段階からも2曲を差別化して作っていくような感覚でした。 

ーー「Delight」でのIRySさんのボーカルはいかがでしたか? 

藤田:レンジが広い曲なので、高音から低音まで、IRySさんの歌声の魅力が伝わるような楽曲になったと思います。IRySさんは、本当に低いキーが得意な方で、頭からそういう音符を用意しているんですが、そんな魅力と、サビの一番高い音の魅力との両方を楽しんでもらえるのではないか、と思います。一番高い部分は、歌詞でいうと〈疾風迅雷〉という部分なんですが、そこもかっこよさを感じてくれるものになっているはずです。 

ーー続いて、2曲目の「BERSERKER」についても教えてください。 

都丸:この曲はテーマが「怒り」なので、重めのバンドサウンドを活かした、Elements Gardenらしい、僕も得意としているサウンドになったと思います。サビは「怒り」を表現するために、たたみかけるようなメロディにしています。IRySさんのボーカルも、めちゃくちゃかっこいいですよね。ところどころに出てくる英語詞に関しても、カタカナ風に発音するのか、それともネイティブらしい発音にするのかを、レコーディングしながら決めていきました。結局ネイティブ寄りの発音になった部分がほとんどなんですが、「ここはカタカナ英語の方が意図が伝わりやすい」という部分や、メロディとのハマりを考えて「いい!」と思った場合には、カタカナ英語風の発音で歌ってもらいました。 

ーーなるほど。とても細かい部分までこだわったのですね。 

都丸:IRySさんは歌詞の意味を大切にされている印象で、さきほどの話にも出ていた〈燦燦と〉の部分では、1番の〈高らかに〉という歌詞は力強く歌っていたのに対して、2番で歌詞が〈燦燦と〉に変わると、よりきらびやかな雰囲気になるよう工夫して歌ってくれました。 

藤田:「こういう曲を作ってほしい」と思っていたものをしっかりと超えてきてくれて嬉しかったです。都丸くんはギターが得意なので、その魅力を存分に聴かせてくれていますし、一回溜めてガッとサビに入っていくような展開の作り方も素晴らしいと思いました。 

近藤:エレガ印、都丸さん印をすごく感じる曲ですよね。あと、4曲を通して聴くと、一番重心が低いロック調の曲で、ライブで歌ってもらうとすごく映えそうだと思いました。 

ーー3曲目の「哀の十界」はどうでしょう?  

藤田:この曲はもともと「儚いバラード」というオーダーで作りはじめたんですが、実は一度大きく作り直しています。最初はもっとストレートにピアノとストリングスを使った泣き歌的なバラードにしていたんですが、IRySさんから、「もう少し言葉を詰め込んで、心がギュッとなるようなものを連続して吐露するような曲にしたい」というリクエストをいただいたんです。なので、音数でいうと、当初より3倍ぐらい増えていると思います。それに加えて、「哀」を表わす曲として、世界が壊れていくような、次元が歪むような様を表現できないかと思っていました。そこで、作り直すタイミングでアレンジのソンウくんと相談して音を加えていきました。最初のバラードの段階では、リズムもこんなに強くは入っていなかったですし、ギターも歪ませてはいなかったんですけど、ちょっとカオスな感じになりました。 

都丸:アレンジが変わったことで、パーカッションもリズムも前に出ていて、映画のエンディングのような、シネマティックな雰囲気の曲になっていますよね。 

ーー綺麗な曲でありつつも、よく聴くとギターが音響的でドローンミュージックみたいだったり、ある意味ブレイクビーツ的なリズムも入っている不思議な楽曲ですね。 

近藤:そうですよね。一見綺麗なメロディですけど、裏でノイズが鳴っていたり、ピアノが要所で現代音楽チックなものになっていて。綺麗なものに、本来相容れないようなアプローチが合わさっていて、「こんな新しいサウンドになるんだな」と思いました。 

藤田:作り直す際に、せっかくなのでアレンジそのものを大きく変えてみようと思ったんです。その結果、こういう塩梅の楽曲になっていきました。 

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