ao、リアルな経験が反映された“本心”を伝える手段 初ライブを経て振り返るリスナーの存在と目指すアーティスト像
曲作りで大事なのは「色や映像のイメージをしっかり持っておくこと」
――「リップル」の2番は〈未完成な私〉という言葉で始まりますが、自分はまだまだ未完成だなという気持ちはありますか?
ao:ありますね。いろんな面であります。学校で「クリティカルシンキング」という授業があって、そこで「私とは何か」という課題が出されたときに書いたものが……(スマホを取り出して読み上げる)「私は、いつも胸の奥で何かへの期待を抱いている人間だと考えました。でもかなり保守的というか、意外と周りの目を気にする人だと思います。相手には強がって、本当は自分だって不安なくせにいつも背伸びしようとしている私がいます。しっかりしてるね、大人っぽいね、と周りからは言われていて、そんな自分を見て自信を失くします。だからたまに少し逃げてしまったり、でもそうすると相手にダメだなって思われているかなと気にしたり、その繰り返しです。友達からはよく『他人に興味ないね』と言われますが、無意識に周りの視線から逃げているのかもしれないなと思います」というのを書いたんですけど。……質問、何でしたっけ(笑)?
――(笑)。そういった自分に対する目線や自分を変えていきたいという意志を愚直に表現しているからこそ、aoさんの音楽は、リスナーの心の壁を破って繋がることのできる芸術になっているんだなと思います。「リップル」に関して、サウンド面においてはどういうものを作りたいと考えていましたか?
ao:ポスターからの印象が「青色」「夏」「爽やか」だったので、疾走感を出したいなと思いました。今までの曲の中では一番尺が短くて。2番が終わったらすぐラスサビにいって終わるので、構成が今までの曲とは全然違うし、一瞬で過ぎ去っていくようなストーリーがサウンドでも表現できたかなと思います。ストーリーの中の主人公の考え方の変化が、短い曲の中で伝わりやすいかなと思いました。
――この曲を作るときに、インスピレーションとなった音楽は何かありますか?
ao:ジャスティン・ビーバーとザ・キッド・ラロイの「STAY」。疾走感がすごくいいなと思って。
――aoさんが曲を作るときに一番こだわるところはどこですか? もちろん、全部だとは思うんですけど。
ao:曲を作る過程であれば、色とか映像のイメージを自分の中でしっかり持っておくことが大事かなと思っています。
――「リップル」が映画のポスターからインスピレーションを受けたということもそうですけど、aoさんにとって「映像」って大きいんですね。
ao:大きいです。いつも頭の中で映像が流れます。でも毎回違うというか。ベースは同じなんですけど、毎日違う解釈で映像が流れてきます。――他のアーティストの曲を聴くときも、映像が浮かんできたりします?
ao:しますね。
――aoさんの中で、なぜそこまで音楽と映像が密接にあるんでしょうね?
ao:映画は結構好きで。特に洋画だと音楽と映像が密接というか、音楽がすごく重要だと思うんです。効果音で演出することが多い気がするので。そこをリンクさせて聴いているような気はします。映画規模の壮大な曲が好きですね。
――aoさんのメロディラインもJ-POPとしては独特だと思うのですが、メロディに関してはどういう音楽が自分のルーツやインスピレーションになっていると思いますか?
ao:洋楽ばかり聴いていたので、完全に洋楽にあると思っていて。エセ英語みたいな歌詞とメロディが一緒に出てきて、それに日本語を乗せているから、そう感じるのかもしれないです。いつもまずコードを打って、それをずっと聴きながら適当に歌って、全部録音して、いい部分だけを取って構成してます。それが一番、最近聴いてる曲とかからインスパイアされたものや、自分のオリジナルが出てきやすい方法なのかなと思っているので。
――邦楽はほとんど通ってないですか?
ao:ずっとピアノをやっていたので、人が歌っている音楽をちゃんと聴き始めたのが小学校3年生のときで。家入レオさんを聴いて、そこからSEKAI NO OWARIさん、西野カナさんとか、流行りの音楽を友達と聴いて。その頃になってくるとニンテンドー3DSでYouTubeを見られるようになったので、そこからどんどん広がっていきました。小学5年生のときにTWICEの「TT」が日本で流行って、「なんだこのかわいい女の子たちは」ってK-POPにハマって(笑)。その頃から海外のカルチャーを調べるようになりました。K-POPって、調べていくと関連動画がたくさん出てきて、それを掘っていくと違う国のものも出てきたりして。たとえば好きなK-POPアイドルが洋楽をカバーしていると、それを調べて聴くようになって、それでどんどん自分の趣味も洋楽に変わっていきました。その流れで『アメリカズ・ゴット・タレント』を見て、ということに繋がっていくんですけど。
――すべての入口は映像であったと。しかも3DSでYouTubeを見ていたんですね。
ao:はい、すっごく画質が悪いんですけど(笑)。
――上の世代のディグり方とは違う、この世代ならではのインプットとaoさんならではの感性があるからこそ、他のアーティストとは異なる新鮮なアウトプットがあるんだなと思いました。aoさんが曲を作るときに音楽のトレンドに対する意識ってあります?
ao:いや、多分ないです。あまりトレンドを考えて作らないですし、新しい音楽を見つけるというよりも掘って聴くタイプなので、今のトレンドが何なのかも知らずに作ってます(笑)。
――逆に、時代を越えても色褪せない曲を作りたいという気持ちはありますか?
ao:あります。7年前とかに出たもので今も聴いてる曲があって。そういうふうに残っていける曲を作れたらなと。
――aoさんの曲からは、時代を問わず、時を越えて残る曲を作るという意志をすごく感じます。最近よく聴いてる音楽は?
ao:エド・シーランにハマっています。あとは秋山璃月さん。こないだライブに行かせていただいて、限定のCDを物販で買って握手して帰ってきました(笑)。あとはedhiii boiくんとか、その流れでBMSGの方々の曲とか日本語のラップを聴くようになりました。日本語の曲を自分で作っていると出てくるワードが似通ってきてしまうので、「こういうメロディにこの言葉を当てはめてるんだ」という発想をラッパーの方々から勉強しています。
――ちなみに、「リップル」のイントロに雑音やレコードっぽい音を入れたのは、どういう発想からですか?
ao:「周りの声が聞こえるということは、自分は一人」ということを思ったんですけど。なんとなく生きてきて自分の存在価値をなかなか見出せない主人公が教室にいるとしたら、きっとそれは笑ってる側ではなくて、教室の隅で笑い声を聞いている側なんじゃないかなと思って。最初にそういう情景描写から始まって、だんだん自信をつけていく、という物語のイメージでした。私も高校生なので、同世代には馴染みがあって想像しやすいんじゃないかなと思います。――最後に改めて、aoさんは聴き手に対してどういうアーティストでありたいと思いますか?
ao:それはいつも考えていることなんですけど、なかなか答えが決まらなくて。今は、誰かが傷ついたときやつらいときに寄り添える場所になったらいいなと思います。自分がそういうときに書いた曲が多いので、そういう状況にいる方々に共感してもらいながら、優しい音楽でありたいです。普段は自分の考えについて周りと話し合うことがあまりなくて。日頃思っていることについて、もっと広い範囲で、遠くにいる人たちとも言い合える場を作りたいなと思います。
■リリース情報
ao「リップル」
2022年6月8日(水)配信リリース
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