Spotify『RADAR: Early Noise』の5年間にみる、優れたレコメンド力 秋山璃月、菅原圭、WurtS……2022年選出10組にも期待

『RADAR: Early Noise』優れたレコメンド力

 音楽ストリーミングサービスSpotifyが2017年から発表している『RADAR: Early Noise』。その年の注目アーティストを10組選出し、プレイリストやショーケースライブなどを通してその魅力を音楽ファンに紹介するプロジェクトだ。データ解析とスタッフの目利き力によって、多くの人気アーティストをブレイク前からレコメンドしてきた。

 『RADAR: Early Noise』の選出基準は普遍的かつ革新的であることが一貫して重要視されているように思う。2017年には「生きていたんだよな」をリリース直後のあいみょん、2018年には「ノーダウト」をリリースする直前のOfficial髭男dismをピックアップしている点にも顕著だろう。あいみょんは王道のフォークロックにえぐみのある描写を乗せ、当時のヒゲダンはキャッチーなJ-POPを志しつつもブラックミュージックのフィーリングを色濃く打ち出していた。その後の2組の快進撃は語るまでもないだろう。新鮮な要素と潜在的なポピュラリティを正確に見抜いているのだ。

「生きていたんだよな」
「ノーダウト」
 

 また例年、幅広いフィールドから選出されているのも特徴だ。インディーバンドシーンから頭角を現し、2019年末に「白日」で国民的ヒットを飛ばしたKing Gnu。自由な演奏形態で支持を広げ、2021年には細田守監督の映画で主演と主題歌歌唱を務めた中村佳穂。スピーディーかつ洗練された楽曲とネットカルチャーとの呼応によって現在まで多数のタイアップソングを作り出した、ずっと真夜中でいいのに。。この3組は全て2019年に選出されている。どこからでも大きなヒット曲が生まれる可能性を見据えているのだ。

 また、世界中に配信されるストリーミングサービスの強みを生かし、国内に留まらない可能性を秘めたアーティストを強力にサポート。2018年選出のCHAIは同年の英米ツアー以降も海外アーティストとのコラボが活発化。2021年のアルバム『WINK』はアメリカの老舗インディーレーベル<SUB POP>からリリースするまでに躍進した。

「Donuts Mind If I Do」

 そして選出アーティストからシーンの潮流を把握できるのも醍醐味。近年勢いを増すDIY志向なソロアーティストであるSTUTS(2017年)、Mega Shinnosuke(2019年)、Vaundy(2020年)をいち早く選出。なかでもカバー動画や配信リリースのみでMVの公開すらなかった藤井風を2020年に選出し、ネットを経由して生まれたインディペンデントな才能を広く届けるきっかけとなった。

「何なんw」

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