ao、メジャーデビュー果たした気鋭の15歳に初インタビュー 同世代からの刺激で生まれた“表現することへの想い”
現在15歳。とてもそうは思えないほどの存在感を発揮しているニューカマーの登場だ。
1st EP『LOOK』を3月2日にリリースしたシンガーソングライターのao。曲作りを始めたのは小学校6年生のときで、そこから作詞作曲だけでなくトラックメイキングにも挑戦しているという。
EPには小学校6年生から中学校3年生までの4年間で制作してきた8曲を収録。2020年代のグローバルなポップミュージックの潮流を吸収しつつ、ダークなテイストを持ったセンス、親密さと切なさを感じさせる歌声の響きには、思わず耳を惹きつけられるものがある。
これが初のインタビュー。ルーツから目指すものまで、率直に語ってもらった。(柴那典)
同い年のグレース・ヴァンダーウォールから受けた影響
ーー音楽を作りたい、歌いたいと最初に思ったのは、どういうきっかけだったんですか?
ao:最初は私が小学校6年生の時に、平成最後の思い出を作るためにオーディションを受けて、そこで受かったのでスクールに入りました。その時に曲作りをする課題が初めて出されたのがきっかけです。
ーーオーディションを受けようと思ったのはどうしてなんですか?
ao:歌うことにはずっと興味がありました。4歳の時からピアノをやっていたので、音楽が好きで、歌も自然に好きになって。それまで特定の歌手が好きだということはなかったんですけど、オーディションを受ける2週間前ぐらいにグレース・ヴァンダーウォールを初めて知ったんです。『アメリカズ・ゴット・タレント』に12歳で出た時の映像を観たんですけど、私も当時小学校6年生で12歳だったので、同い年でこんな人がいるんだと思って、びっくりして。そこで目指したい人物像になりました。
ーーウクレレを始めたきっかけもグレース・ヴァンダーウォールからの影響ですか?
ao:そうです。それまで楽器はピアノとかクラリネットとかリコーダーしかやったことなかったんですけど、グレース・ヴァンダーウォールを観てウクレレを始めました。
ーースクールに入って、どんな出会いや刺激がありましたか?
ao:講師の方々に出会ったこと、同じ夢を持つ同世代の子たちと一緒に勉強したことがすごく刺激になって、「歌手になりたい!」と思うようになりました。
ーー歌だけでなく、曲作りにのめり込むようになったきっかけは何でしょうか?
ao:スクールでDTMを習った時に、それまではウクレレ一本の弾き語りでずっと曲を作っていたんですけど、そこで初めて音を重ねて音楽を制作することに興味が湧いて。もっと自分で音にこだわって作れるような歌手になりたいと思いました。最初はすごく難しくて、授業の時もずっとウクレレで作っていたんですけど、スクールを卒業して自分でソフトを買ってやってみた時に改めて魅力がわかったというか、自分が表現したいことが表現しやすくなったように思います。
ーーちなみに、ソフトとか制作環境はどんな感じでやっているんですか。
ao:Logic Proを使っていて、ノートパソコンにキーボードをつないで、家とか、レコード会社で場所を借りたりとか、いろんなところで作っています。
小中学校での生活から生まれた楽曲たち
ーー資料のプロフィールによると、EPにはaoさんが小学校6年生から中学校3年生までの4年間で作った曲が収録されているということですが、最初にできた曲は?
ao:最初にできたのは「kekka」です。小学校6年生の時に初めてちゃんとしたスタジオでレコーディングしたので、“first recording ver.”なんです。
ーーこの曲を作っていた時にはどんな記憶が残っていますか?
ao:小学校5年生から6年生にかけて、学校で女の子同士のいざこざがあって、それをもとにして書いた曲です。友達関係で面倒くさくなったりするようなことはそれまで私にはなかったので、そういうことを初めて経験して感じたことを書きました。
ーー悲しいことや傷ついたことが、曲の種になることが多い?
ao:多いです。
ーーなぜ「kekka」という曲名にしたんですか。
ao:書いたのは、その出来事が起きた時からちょっと後だったので、振り返ってみた時に「ああいうことだったのかな」とか、いろいろ自分で考えてみて、「結果こういうことだったんだな」っていう意味で「kekka」です。
ーー「no THANKYOU」はいつ頃に作った曲でしょう?
ao:「no THANKYOU」は中学校1年生の時です。
ーーこれも「kekka」と同じように、何かしらモヤモヤした気持ちがもとになって生まれた曲でしょうか。
ao:そうです。これも学校で、男の子とケンカした時の話で。私はその時、副学級委員長をやっていたんですけど、先生から「その男の子に伝えておいて」と頼まれたことを言ったら、逆ギレをされてしまって。人生で初めて逆ギレされたんです。自分は正しいと思って言ったことなのに急に逆ギレされて、それですごいケンカになったことを書きました(笑)。
ーーその次はどの曲を作っていったのでしょうか?
ao:次は「Tag」と「月」です。「Tag」は(コロナ禍の)自粛期間中の誕生日に作りました。
ーー2020年の春は中学校2年生だったんですよね。自粛期間はどんな感じでしたか?
ao:運動不足だったので、毎日腹筋をして、健康や食事に気をつけて生活していました。最初は学校が休みになってラッキーだなと思っていたんですけど、実際長期休みに入ると、外に出られないことがストレスになったし、勉強しなくちゃいけないけどダラダラしちゃったり、毎日同じような感じで過ごしていました。「Tag」はそういう、だらけてしまう自分との追いかけっこをイメージして作った曲です。「月」は、自由時間が増えたので、YouTubeでいろいろ曲を聴いていた時に、音からイメージして作った曲です。BTSのVのソロ曲の「Scenery(風景)」と「Inner Child」のトラックに影響を受けて、月とか夜空を思い浮かべたところから作りました。
ーー「you too」はどうでしょうか?
ao:これも中学校2年生の夏にできた曲です。ピアノ教室の友達の話を聞いて書いた曲です。その人が抱えていたいろんな辛い話を聞いて、「私は楽しく夢に向かって取り組んでいるけど、こんなに辛い人もいるんだ」と思って。でも、その人はいつも笑顔でそういう素振りは一切見せないんです。そういうところから、辛さの程度は違っていても、みんな頑張っているから自分も頑張ろうと思って書いた曲です。