つじあやの、2部構成で鮮やかに描いた“ウーマン”のリアルな生き様 コトリンゴらゲストも迎えたビルボード公演
メジャーデビュー22年目を迎えたつじあやのが、4月16日にBillboard Live TOKYOにて2部構成のワンマンライブ『HELLO WOMAN』を開催した。
キャリア初となる同会場でのライブは、2公演で異なるコンセプトでセットリストが組まれていた。「つじベスト」というテーマを掲げた1st Stageは、2002年に公開されたジブリ映画『猫の恩返し』の主題歌「風になる」や「クローバー」、「春風」など、つじの代表曲を中心に演奏。また、スペシャルゲストとして奥田民生を迎え、2004年にリリースしたカバーアルバム『COVER GIRL』にも収録されているサザンオールスターズ「シャ・ラ・ラ」や、奥田民生「イージュー★ライダー」のデュエットを披露して観客を喜ばせた。
そして2nd Stageは、今年1月にリリースした10年ぶりとなるオリジナルアルバム『HELLO WOMAN』の世界観を網羅した構成。シンガーソングライターとしての20年間に及ぶキャリアだけではなく、恋愛、結婚、出産、子育てという女性としての40年間の経験も振り返り、改めて自分自身と向き合ったという。それだけに、彼女が今何を考え、何に傷つき、どんな思いで日々を送っているのかがリアルに伝わってくるライブとなった。
大きな拍手に迎えられてステージに登場したつじは、最初に「ようこそいらっしゃいました。今日はお食事やお飲み物を楽しみながら、つじあやのの歌をゆっくり味わっていただければなと思います。豪華で華やかな場所で緊張するんですが、久しぶりのつじあやののライブをゆったりと楽しんでください」と挨拶。そして、スタンドマイクの前に立ち、アルバムのオープニングナンバー、妊娠前に作ったという「アンティーク」でライブの幕を開けた。音楽を始めた頃のピュアな思いと今の自分を重ねた同楽曲。過去の風景を振りかえりつつも、現在にしっかりと足を下ろし、夢の続きが待つ未来へ向けて羽ばたいていくような力強く伸びやかな歌声を響かせた。ウクレレを手にした「泣き虫レディバード」で、年齢を重ねるごとに言いようのない孤独を感じるようになった過去の自分を勇気づけ、アニメ『舞妓さんちのまかないさん』の主題歌「明日きっと」では、温かみのあるサウンドと明るく煌めく歌声で恐れずに前に向かって歩き出す姿勢を表現した。「1部と2部で違う内容でやってみることも初めてなので、なかなか、どんなもんかいな?と思っていたんですけど、ノッてきた感じがあります」と話したつじは、「出会いもあれば、別れもある季節。ウーマンに歌った曲です」と続け、前向きな別れの言葉を繰り返す2001年発売の3rdシングル表題曲「君にありがとう」を歌唱。そして、椅子に座り、自身がプロデュースをした第3弾となるオリジナルウクレレの音色を紹介しながら、「たんぽぽ」のフレーズを少しだけ歌った彼女は、改めて客席に向き合い、アルバムについてこう語った。
「今まで以上に自分自身でつじあやのに向き合って、いろんなことを思い出したり、考えたり、感じたり。いろんな感情と向き合って作ったアルバムです。子供を歌った曲もあれば、ちょっと寂しい気持ちになった曲とか、未来に向かって頑張ろうっていう曲もあるし。その中でも言葉を絞り出すことにいちばん時間がかかった曲がありまして。私が昔、失恋をしたときを思い出して作った曲です。当時は本当に辛くて。その自分と向き合った曲は絶対に作れませんでした。でもやっと今やから作れたなと思うし、作ってよかったなと思っています」
ウクレレの弾き語りで歌った「ただの人」では、失恋の絶望からゆっくりと時間をかけて、本当に少しずつ再生していく過程が描かれていた。楽曲の中では5年かかって巡り会えた大切な愛おしい人が登場するが、彼女が一人で淡々と歌ったからこそ、胸に沁みいるものがあった。歌い終え、「ちょっとしんみりしましたけど、本当にいろいろあったんですよね」と苦笑。2nd Stageのスペシャルゲストとして、アルバム収録曲「にじ」のアレンジを手がけているコトリンゴを呼び込むと、会場からは温かい拍手が沸き起こった。コトリンゴが2009年に発表した「つくりごと」では、彼女がオルガンを弾きながらハイトーンを響かせると、つじはコーラスとタンバリンで彩りをつけ、ピアノはピアニカ、ベースはウッドベースに持ち替えて音を重ねていった。
MCでは、レコーディングスタジオで顔を合わせた時のエピソードや「どんなときに怒るのか?」という話で盛り上がるなか、「子供はまだ夢の世界にいて。大人もその世界に連れていってもらえる。そんなファンタジーというか、おもちゃ箱をひっくり返したような音が可愛くてお願いした」という「にじ」へ。子供の愛おしさを歌った曲で、コトリンゴがグランドピアノを弾き、つじは母としての顔を見せながら歌い、口笛も吹き、二人でラララとチャーミングなハーモニーを重ねる場面もあった。さらに、「もう1曲、一緒にいかかですか?」と呼びかけ、Queenの「Killer Queen」を熱演。つじ、コトリンゴに加えて、ベースとドラムもコーラスに参加し、会場は大いに盛り上がった。