つじあやの、オーディオ配信のみで届けたスタジオライブ 極上の演奏と前向きなメッセージに込められた“温かさ”

つじあやの、臨場感溢れるオーディオ配信ライブ

 つじあやのの配信オーディオライブ『ビクタースタジオから歌をこめて』が、9月21日に開催された。1stシングル曲「クローバー」をはじめ、ウクレレの弾き語りカバーや、来年リリース予定のアルバムに収録される新曲などを、臨場感あるサウンドと共にしっとりと届けたライブ。まるでラジオを聴いているような、どことない懐かしさと新鮮さを感じさせるライブになった。

 「あえてじっくり音を楽しんでいただくため」と、オーディオ(音声)のみで配信されたライブ。音にこだわって、会場は歴史ある老舗レコーディングスタジオ「ビクタースタジオ」が選ばれた。とはいえ、画面が真っ暗というわけではない。定点カメラでミキシング・コンソールが映し出され、たまにエンジニアがつまみをいじる手元が映るのもまた一興といった感じだ。

 この日に演奏されたのは全12曲。演奏メンバーは、歌とウクレレのつじあやのに加えて、末藤健二(Dr)、御供信弘(Ba/Glockenspiel)、坂和也(Pf)といった面々。序盤は、彼女の1stシングル曲「クローバー」をはじめ、ピアノが印象的な「そばにいるから」、ウッドベースが柔らかく聴き心地抜群だった「愛しいたからもの」など。温かさ溢れる「Gift Song」では、〈きっと僕らは乗り越えられる〉という歌詞のフレーズが胸に刺さった。どの曲からも今の時代に合ったメッセージが感じ取れ、彼女がどれほどの思いを込めてセットリストを組んだのかが伝わってきた。

 MCでは「ドーンとグランドピアノがあって、真ん中に私がいて、ドラムだけブースの中に......」と、スタジオ内の様子を伝えたつじ。メンバーとの会話も実にリラックスした雰囲気で、まるで深夜ラジオでも聴いているような気分になった。

 中盤のウクレレ弾き語りコーナーに移る際には、「セットチェンジしますね」という言葉と共に、ガラガラガラガラガラと音が鳴り響いた。これは、つじがスタジオ内を移動する際にマイクやヘッドフォンが繋がった機材を引いていた音とのこと。メンバーが気を利かせて、その機材を「点滴をぶら下げてるやつみたいな」と説明すると、チャットのコメント欄には「点滴!」の文字がずらりと並び、そんなどこかシュールでユーモラスなところも彼女らしいと思わせた。

 ウクレレの弾き語りで演奏されたのは、原曲は1969年に発表された松平ケメ子の「別れても好きな人」。2004年のカバーアルバム『COVER GIRL』に収録された楽曲で、歌うのはそれ以来となったそう。原曲の持つ大人のムーディーな雰囲気はそのままに、ウクレレによって実に軽やかなものになっていて、コメント欄にはロスインディオスよろしく「別れても~ 別れても~」とコーラスを歌うコメントが並んだ。

 弾き語りのもう1曲は、未発表の新曲「泣き虫レディーバード」。MCで、11月に始まるドラマの劇伴を担当することになり、その制作に追われながらも来年リリース予定のアルバムの制作に入っていることが報告され、そのアルバムに収録予定の1曲とのこと。

 いざ新曲を! と思ったその時、「あ、ウクレレを間違えました!」と、急にごそごそし始め取り違えた楽器を持ち直した彼女。「緊張していると、こういうこともあるから(笑)」と。これには自宅で吹き出してしまった方も多かっただろう。気持ちを切り替え、フ~ッと大きく息をついて歌ったその曲は、まるで昔の自分に「大丈夫だよ」と声をかけ、頑張っている人の背中を押してくれるような歌詞が胸に響くものだった。

 バンドメンバーのインスト演奏を、ブリッジ的に挟んで始まった後半戦。キラキラとしたピアノ、包み込むような抱擁力のあるベース、軽やかにリズムを刻むドラム。そして口笛は......本人によるものか。そんな演奏に続いて、もう1曲のカバーをお届けした。先ほどと同じく『COVER GIRL』に収録された山下達郎の「パレード」は、心地良いポップなリズムで、一気におしゃれで明るい空気になった。

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