つじあやの、2部構成で鮮やかに描いた“ウーマン”のリアルな生き様 コトリンゴらゲストも迎えたビルボード公演

つじあやの、2部構成ビルボード公演レポ

つじあやの
 コトリンゴを送り出したつじは、「コロナ禍でいろんなことを思ってて。歳を重ねてきたというのもあるんですけど、やりきれない思いとか、言葉で説明できなかったり、白黒つけられないことがいっぱいあるなと思うことがとても多くて。それが、自分の歌にもなってきました。私はデビューして22年目なんですけど、最初は自分の好きな人とか、君への思い、恋をテーマに歌ってきたんですけど。少しずつ形を変えて、歌も成長してきたなと思います」と語り、続く「シンデレラ」では不倫に走ってしまう人の気持ちへの理解を示し、「お別れの時間」では妻であり、母でありながらも感じてしまう言いようの無い寂しさを吐露。まさに言葉にできない感情のグラデーションを曖昧なまま体現した彼女は、「この日を目指してやってきました。たくさんのことがあって、これからも自分の気持ちと、誰かを思う気持ちに素直に寄り添って歌っていきたいと思います」と決意を語り、アルバムのラストナンバー「おやすみなさい」では絶望を洗い流すかのような癒しの歌声を鳴り響かせた。

 ライブの最後に歌われたのは、代表曲「風になる」。少年少女の甘酸っぱくピュアな青春ラブストーリーを想起させる楽曲だ。ほぼ全ての楽曲で「さようなら」を歌ってきたウーマンに因んだ曲たちとの対比に眩しさを感じずにはいられなかったが、もしかしたら、「君と出会えたこと」への感謝と思い出を乗せて坂道を自転車で駆け上がっていく主人公は、初めての苦い別れを経験したのかもしれない。そんなことを考えていると、ステージ後方のカーテンが開き、東京の夜景が目の前に広がった。つじが「心の中で歌ってください」と呼びかけると、観客からは自然と手拍子が沸き起こった。つじあやのらしいしなやかでポップで眩しく輝いているサウンドに会場が一体となり、ライブは締めくくられた。

つじあやの

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる