BTS JUNG KOOK&SUGAによるOSTも人気に TOMORROW X TOGETHER、ENHYPEN…ウェブトゥーンにチャレンジする意義

 2月26日付の米ビルボードHOT100チャートに、BTSのJUNG KOOKが歌う「Stay Alive(Prod. SUGA of BTS)」がチャートイン。メンバー個人でのチャートインはJ-HOPE、SUGA(Agust D名義)、Vに続いて4人目となった。この楽曲は同じくメンバーのSUGAが制作に参加しており、BTSをイメージモデルにしたウェブトゥーン「7FATES: CHAKHO」のOSTとしてリリースされたものだ。

 BTSの所属事務所HYBEは、2022年から所属グループであるBTS・TOMORROW X TOGETHER・ENHYPENをモデルとしたウェブトゥーンシリーズをそれぞれNAVER WEBTOON(日本ではLINEマンガ)で展開し始めている。BTSメンバーの説得に1年かけたという大型のプロジェクトだが、HYBEは前身のBig Hitの頃からBTSのウェブトゥーン化を熱心に手がけてきた。初期の「学校3部作(『2 COOL 4 SKOOL』『O!RUL8,2?』『Skool Luv Affair』)」時代には「We On」という超能力バトルもののウェブトゥーン(同名の楽曲がアルバム『O!RUL8,2?』に収録)を展開していたし、同時にメンバーを動物のキャラクター化した「HIP HOP MONSTER(ヒップホップモンスター)」シリーズは、グッズだけでなく4コマ漫画や子供向け学習漫画が出版されていた。アルバムコンセプトの世界観をそのまま表現した「花様年華シリーズ」もウェブトゥーンや書籍など多メディア展開されている。

 昨年の『イカゲーム』(Netflix)のヒットや、2020年の映画『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞など、すでに映画やドラマの分野では世界的な認知度を得た韓国カルチャーの中で、次に世界市場を狙うべく韓国内で注目を受けているもののひとつが、ウェブトゥーンと言える。韓国のウェブトゥーンポータル各社は海外向け配信アプリを通して、韓国作家のものだけではなく現地作家の作品を交えながら各文化圏に定着するべく試行錯誤をしてきた。2020・2021年と2年続けて日本と世界で最もセールスの多かったウェブトゥーンアプリ「ピッコマ」は韓国のKakaoが運営するウェブトゥーンサービスであり、2位は先述のLINEマンガだ(※1)。

 ウェブトゥーンに注目が集まる理由は、近年の日本のコミック・アニメ・キャラクターコンテンツの世界的な認知度とビジネス規模拡大が先例としてあるだろう。映画やドラマとコミック・アニメビジネスの大きな違いのひとつに、IPビジネスの幅広さがある。一般的な映画やドラマの場合、放映期間や上映期間が終わった後でも広げられる展開はOSTやソフト販売・配信程度だが、コミックの場合はそこからのアニメ化やグッズ化だけでなく、広告や実写映画化、舞台のほか、音楽面でもOSTのみならずいわゆるキャラソンまで、かなりの幅広い展開が可能だ。世界的に人気のマーベルやDCの映画シリーズも大元はコミックだ。ドラマや映画オリジナルでも『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』などキャラクター化が可能なジャンルであれば似たような展開は可能だが、生身の人間が演じる以上、「歳を取らない」二次元キャラクターの方が展開期限は長くなるだろう。その点でウェブトゥーンは日本が先行している「漫画」と似ているが、フォーマット的にはフルカラーが基本で縦スクロールであるため多言語に対応可能という、紙ベースの漫画やコミックの多言語展開につきものだった「右開き・左開き問題」が解決されているし、世界的な配信に関してもインターネットやスマートフォンの普及が早かった韓国企業が先行している分野だ。

 ドラマの分野ではNetflixの『梨泰院クラス』『地獄が呼んでいる』『今、私たちの学校は…』など、ウェブトゥーン原作の世界的な人気作品はすでに数多く誕生している一方、アニメーションの分野では日本の有名スタジオが手がけるようになった近年でも、ヒット作がまだないのが現状だ。世界的に人気のマーベル作品も同様だが、日本のコミック・アニメ作品は孫悟空(『ドラゴンボール』シリーズ)やうずまきナルト(『NARUTO -ナルト-』シリーズ)など作品そのもの以上にキャラクター自身に人気と知名度があり、現状のウェブトゥーンがビュー数と比べて足りないのがその「キャラクター性」の部分だと言われている。そしてコミックベースのIPビジネス展開では不可欠な「キャラクター性」において、「世界的に人気のアイドル」という属性は強みになることを考えると、ビルボード1位をとり、世界で最も人気のあるボーイズグループになった今、なぜ? という疑問の声もあるかもしれないが、むしろBTSがその地位に上り詰めた今だからこそ、チャレンジする意義を見出しているのだろう。

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