くるり、NUMBER GIRL、Dragon Ash……デビュー25年迎えたロックバンド、シーンの最前線に与え続ける多大な影響
長きにわたる日本の音楽シーンを振り返ると、ある年を境にしてシーンの潮流が大きく変わった、もしくは、新しい潮流が生まれたタイミングをいくつか挙げることができる。もちろん、毎年のように(いや、毎月、毎日のように)、次々と新しい音楽が生まれていくシーンについて、どの年にフォーカスしたとしても豊かな変化を見出すことができるのは間違いないのだが、その中でも特に、決定的な潮流が生まれた分岐点の一つとして「1997年」を挙げられると思う。
この年、いくつものアーティストが次々とデビューを果たしたが、その中でもシーンに対して特に鮮烈なインパクトを与え続けているのが、くるり、NUMBER GIRL、Dragon Ashの3組である。この3組はデビュー以降、数々の野心的な音楽的トライアルを重ねながら、日本の音楽シーンにおいてオルタナティブ・ロックの精神を高らかに掲げ続けてきた。そして、その精神は色や形を変えながら、次の世代のアーティストへと継承され続けている。
例えば、マカロニえんぴつのはっとりは、『MUSICA』2020年6月号の企画「2020年、あなたの『心の一枚』を教えてください」において、くるりの2ndアルバムにして、日本のオルタナティブ・ロック史における屈指の名盤『図鑑』を挙げている。はっとりは、「このアルバムは自分の中での心の名盤であり、もうこれを超えられるJ-ROCKサウンドはいまだにないんじゃないかと思ってる」と発言している。また、同誌2022年3月号のくるり 岸田繁とはっとりの対談インタビューにおいては、25年間にわたり果敢に変化を繰り返しながらオルタナティブ・ロックを更新し続ける同バンドに対して、「ロックバンドの希望ですからね、くるりは」と最大限のリスペクトを送っている。
そして、2021年12月に放送された『MTV Unplugged: ZUTOMAYO』において、ずっと真夜中でいいのに。が、くるりの「琥珀色の街、上海蟹の朝」をカバーしたことも大きな話題となった。Twitter上では、このカバーに端を発した岸田とACAねのやりとりを垣間見ることができ、ACAねは「25周年おめでとうございます。。これからもだいすきです。。。」と、くるりへの溢れるような愛を告白している(※1)。マカロニえんぴつやずっと真夜中でいいのに。の楽曲について、くるりからの直接的な影響を一つずつ挙げていくこともできなくはないが、両者の発言からすると、もはや“くるり”という存在そのものが、彼らにとって絶大な指針となっていると考えられるだろう。
同じく、NUMBER GIRLが後進のアーティストたちに与えた影響も、もはや計り知れないほどに大きい。あえて一つ例を挙げるとすれば、BiSHのアユニ・Dは、NUMBER GIRLの田渕ひさ子をギタリストに迎えてPEDROを結成し、2018年の初ライブでは「透明少女」のカバーを披露した(その時のライブ映像は、今でもYouTube上で公開されている)。「そういえば私、目に焼き付いてずっと離れない女の子がいるんですよ、私が思うに、例えばあの子は透明少女」というアユニ・Dの前口上は、言うまでもなく向井秀徳、およびNUMBER GIRLへの限りないリスペクトの表れだ。現在、PEDROは活動休止に入っているが、アユニ・Dが田渕ひさ子と共に積み重ねた経験は、今後の彼女の音楽活動に絶大な影響を与えていくはずである。また、2018年から2019年にかけて『少年ジャンプ+』で連載されていた音楽マンガ『ロッキンユー!!!』にて、主人公が「透明少女」との出会いを機にロックの世界へ足を踏み入れていく、という名シーンがあることも、ここで合わせて紹介しておきたい。