木村拓哉が山下達郎から受けた“音楽の授業” 師弟関係にも近い有意義なラジオ対談を聴いて

 木村拓哉がパーソナリティを務めるラジオ『木村拓哉 Flow supported by GYAO!』(TOKYO FM)に、2月のマンスリーゲストとして山下達郎が出演した。山下は、1月19日にリリースされた木村の2ndアルバム『Next Destination』にて「MOJO DRIVE」「Good Luck, Good Time」「MORNING DEW」の3曲を提供したことでも話題に。

 アルバム制作を通じて木村は、山下との会話を「受けたことのない音楽の授業」と表現していたのが印象的だった。「達郎さんからはすげー深いことを笑いながら教わったっていう感じ」とも。その新たな教えをもらった喜びを、ラジオトークからも垣間見ることができた。

木村拓哉の歌声はバリトン「シャウトしなくてもロックはできる」

 山下と木村の縁は、山下の妻・竹内まりやが大のSMAPファンであったこと、とりわけ木村の大ファンということから繋がっている。1995年にリリースされた竹内のシングル曲「今夜はHearty Party」では、〈キムタクさえも かすむような男〉という歌詞が取り入れられ、当時23歳だった木村もナレーションやコーラスのレコーディングに参加したと思い出話に花が咲く。

 音楽生活50年を数え、多くのアーティストに楽曲を提供してきた山下から見ても、“木村拓哉のオーラ”は別格で、指折りの逸材だと力説。その圧倒的な存在感は、SMAPというグループにおいても感じられるものではあったが、ソロシンガーとしてまた新たな何かが見えてくるのではないかと楽しみにしていたと振り返る。

 そして、2年前に開催された木村の単独ライブを観た山下夫妻は、ライブ直後の木村よりもずっとテンション高く楽屋を訪れたそう。「木村くんはね、バリトンなんだよ。バリトンバリトン! ようやくわかった!」という言葉と共に。木村はなんのことを言っているのかわからず戸惑ったようだが、山下はソロライブを通じて「“木村拓哉”という人の歌う特性というものがはっきりわかった」と明かした。

 もともと木村がRed Hot Chili Peppersはじめとしたロックミュージックを好み、シャウト志向の声を持つことを知っていた山下。だが、ライブを観て「この人はもっと音域が低いんだ」「バリトンのほうがふくよかに響く」と見えてきたそう。その喜びから書き上げられたのが「MOJO DRIVE」と「MORNING DEW」。“叫ばなくてもロックになる”という、木村にとっては新しい音楽の広がりを感じられる楽曲が生み出されたのだという。

木村拓哉 - MOJO DRIVE Music Video Short Ver.

木村の新境地を引き出す、山下達郎の“音楽の授業”

 さらに、ソロシンガー・木村拓哉にとって新たな発見をもたらしたのが、山下のオケ録り(ボーカルやソロ楽器以外の伴奏部分だけの録音)へのこだわり。これまで木村はオケ録りの場にいたことはなかったそうだが、山下の「歌う人がそこにいて、それをみんなが感じた上で演奏したオケが“生きたオケ”になると思う」との言葉から、初めてその場で歌う経験をしたという。

 「木村くんのグルーヴ、歌のクセとか伸びとか、そういうものを聴いて、それに合わせるから。それでできたオケだったら至極自然に演奏の世界に自分が入っていける」と続ける山下。木村もその感覚をダイレクトに現場で感じられたようで、「ベーシストの方がね、自分のフィンガーが入ってないタイミングで僕に“サムアップ”してくれたんですよ。あれを受けた瞬間に、何かゾワッとして」と興奮気味に語る。

 さらに「ドラムの方も自分を見ながら“まだ行くか? まだ行くか? お、そこか!”みたいな感じで叩いてくれてるのを見たときに、すごいなんか!」とうれしそうに話す声に、聴いているこちらもワクワクが伝わってくる。

 「自分の得手というか特質を活かして作品を作っていけば、歌を歌うってことがもっとずっと楽しくなります」と語る山下の言葉も弾んでいるように感じた。それはもとよりスターの素質を持つ木村が、自分のプロデュースによって天井知らずに進化していく様子を、間近で楽しんでいるかのように。

 学び、成長し、そして喜びを共有する。そんなキラキラとしたものは、なにも若者だけの特権ではない。これほどの才能と名声を手にした木村でさえも、まだ新境地と呼ばれるものがあるのだから。

 それを証明するかのように、「もう1曲書いてるから」と生み出されたのが「Good Luck, Good Time」だったそう。リズムとか音程とか、上手いとか下手とか……そういうものよりも、シンガーにとってずっと大事なものは“表現”。これからも山下の“音楽の授業”が、木村の表現する音世界をさらに広げていく予感を感じられるトークだった。

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