佐藤結衣の『ラジオdeジャニログ』
木村拓哉が山下達郎から受けた“音楽の授業” 師弟関係にも近い有意義なラジオ対談を聴いて
山下達郎、シティポップブームについては「わかりませーん(笑)」
映画『スター・ウォーズ』に例えるなら、ジェダイの騎士とマスターといった師弟関係のようにも見える木村と山下。木村は、最後に60代になっても変わらぬ歌声を誇る山下に、その秘訣をたずねる。
だが「歌わないときは全然歌わない」「ウォームアップはしてるけど発声練習はしてない」「なんで自分(の声)が出てるのかよくわからない(笑)」と、少々肩透かしを食らう形に。巷には様々な諸説が囁かれているものの、わからないものはわからないと言い切ってしまう山下の潔さもまた木村にとって新鮮な視点なのかもしれない。
海外でシティポップが人気を集め、アナログ音源に注目が集まっていることについても「知りませーん、わかりませーん(笑)」「なんか変な時代ですよね」「不思議ですね」と軽やかなコメントが返ってくる。この調子でステイホーム期間も「ライブができなくなったらしょうがないから、(ライブ映像を)配信しようか」「他のことやるしかないですからね」というように、この番組のタイトルのようにFlowしてきたようだ。
わからないものにとらわれず、自分の手の届く範囲についてとことんこだわりこだわり抜く。それが山下のスタンスなのだろう。自身のラジオ番組で流すオールディーズ音源を、自分でコツコツと30年近く独学でリマスタリングしてきたこともそうだ。それが知識にもなり「普通の音楽のマスタリングにも活かせるようになった」「無駄なもんはないんですよ、世の中に」と満足気に話しているのも、実に清々しい。
そんな山下の言動に「もう車の修理工場の工場長ですよね」と合いの手を入れた木村。振り返ってみれば、木村がこれまでドラマで演じてきた役には、孤高の職人気質なキャラクターが少なくなかった。誰かに承認されたいからではなく、自分自身が納得するためにストイックに仕事と向き合う。その流儀は、俳優・木村拓哉にも通じるものがあったからこそ、当たり役として多くの視聴者の心を掴んできたように思う。
そして、シンガー・木村拓哉にもそれは通じているのではないか。山下の“授業”を受けて、より音楽との向き合い方がクリアになったようにも見えた。木村の持ち味を見つめ直し、その可能性を広げ、とことん磨き上げていくことへのこだわり。長年かけて経験してきた多くのものが、そして新たに感じた喜びが、これからの木村の歌に昇華されていくと思うと楽しみで仕方ない。