これまで見たことのないスピッツの映像作品ーー松居大悟監督、内野敦史、村川僚WOWOWオリジナルライブ鼎談

WOWOWオリジナルライブ×スピッツ

松居監督は、リアルとフィクションのバランスが絶妙

ーー映像を観させてもらうと、独特な音響を含めて、あの場所で演奏することを楽しんでいるのが伝わってきました。曲の合間のメンバー同士の会話もすごく自然で。

松居:そうですよね。リハーサルを覗かせてもらったときに、1曲演奏するたびに「今のはこうだったね」とか、メンバーのみなさんがいろいろ話してたんですよ。ちょっと脱線することもあって、「じゃあ次の曲やろうか」みたいな。その自然体の感じがいいなと思ったし、「本番もこの雰囲気でできますか?」とお伝えしたんです。

村川:撮影当日もずっとそういう感じでしたね。静かになると、(三輪)テツヤさんが何か話して、場が和んだり。自然に気を使い合ってるというのかな。

松居:メンバーのみなさんの人間性だったり、4人でいるときの雰囲気が伝われば、スピッツの音楽をより立体的に感じてもらえるんじゃないかなと。演奏はもちろん、コーラスをそれぞれやっていたり、みんなで歌を作ってる感じもあって。

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ーー確かに。スピッツの音楽にグッと没入できる感覚も、この映像作品の魅力だと思います。実際にあの場所に行って、間近で聴いているような感覚というか。

松居:そう感じてもらえるのは嬉しいですね。曲によっては少しメンバーに寄ったり、真ん中から撮ったり、こっそり覗き見ていたり。いろいろな見せ方ができたと思います。

内野:松居監督は、リアルとフィクションのバランスが絶妙なんですよね。

村川:そうですよね。ライブドキュメンタリーなのかな? と思われるかもしれないけど、そうじゃないんですよ。ドキュメンタリーはそこで起きたことをそのまま撮るのが基本なんだけど、松居監督は狙って撮ろうとしていて。撮影中も「自分とは違う人種だな」と思ってました。

松居:恐縮です(笑)。

内野:僕が松居監督の作品が好きなのは、まさにそこなんです。フィクション側の人なのに、虚実を上手く混ぜるんですよ。『アイスと雨音』(松居監督による2017年公開の映画)もそうじゃないですか。演劇のなかで起きたことをドキュメントみたいに撮ってるんだけど……。

松居:同じ場所でMOROHAが歌ってたり、演出もしてますからね。

内野:そう。最初は「これはリアルなのか?」と思うんだけど、そのうちどっちでもよくなって、ただただ面白くて。今回オファーさせてもらったのも、そういうところを出してほしかったからなんです。

松居:僕としても、ただ演奏を見せるよりも、違う方法論を取り入れたほうが面白いだろうなと思ってましたね。特にバンドと関わるときは、自分なりのやり方を入れたくなるんですよ。音楽をやる人に対して、憧れと嫉妬もずっとあるし。

ーー嫉妬もあるんですか?

松居:ありますね! カッコいいじゃないですか。演奏すると、全部持っていかれるし(笑)。

ーー(笑)。昼間、夕方、夜と時間の流れを感じさせる演出も印象的でした。

松居:自分のアイデアというより、セットリストからそれを感じたんですよね。なので「この流れを活かして、どう見せようか?」と考えて。

内野:確かにセットリストが先だったんですが、1日の流れを描くというコンセプトが根本にありつつ、松居監督がしっかり台本を書いてくれたのも大きくて。しかも縦書きの台本だったんですよ。

松居:縦じゃないと書けないんです(笑)。「映画のような作り方で大丈夫です」と言ってもらっていたので、だったら台本が必要だなと。セットリストが台本であり、スピッツの演奏が芝居であり、それを自分たちが撮るという共通認識もありましたね。

内野:僕と村川さんは普段ドキュメンタリーを撮ることが多いので、松居監督のやり方は新鮮でしたね。台本はメンバーのみなさんにも共有させてもらって、流れを把握していただいて。それを想定してリハーサルをしていただけたと思うし、本番にも臨んでくれたんじゃないかなと。そのあたりはメイキング映像でつまびらかにしているので、ぜひ期待していてください。

村川:そんなにぐいぐいツッコんでるわけじゃないですけどね。普段は「撮影のときに嫌われても、あとで挽回すればいい」と思って撮っているんだけど、スピッツのみなさんには嫌われたくなかったので(笑)。

松居:わかります(笑)。

村川:台本について言えば、すごくいい文章なんですよ。「見たことがないスピッツを撮りたい」からはじまって、読み物として面白くて。メイキング映像でも「このまま使いたい」というところがいくつかあったので、さっき松居監督に許可をもらいました(笑)。

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ーー“優しいスピッツ”というタイトルについては?

内野:それも台本に書いてあったんです。

松居:なんとなくそれがいいなぁと思って書いていて。最初は“(仮)”だったんですけど、「これでどうですか?」と提案させてもらったら、OKをいただいて。

内野:大ホームランでしたね。“優しいスピッツ”というタイトルには全部が詰まってるので。

ーー「優しいあの子」とリンクしているのもいいですよね。セットリストには代表曲からレアな楽曲まで網羅されていて。すごいセトリですよね。

松居:そうなんですよ。最初にセトリを見たときは震えました。「変えたほうがいいところがあったら言ってください」と言われたんですけど、「このままでお願いします!」って。

内野:さすがですよね。さっきも言ったとおりストーリーの骨子にもなっているし、1日の時間のながれ、あの場所の雰囲気も重なって。まさに“見たことがないスピッツ”だと思うし、ファンのみなさんにも喜んでもらえるんじゃないかなと。

松居:しかも初期の曲から最近の曲まで、まんべんなく選んでくれてるんですよ。

内野:コアなファンじゃないと知らないような曲もあるんですけど、すべて名曲なんです。それも稀有だなと思います。

ーーファンのみなさんはもちろん、すべての音楽ファンが見るべき作品だと思います。

内野:そうですね。編集の段階で、「これはすごいものになりそうだな」という実感があって。番組でも映画でもなく、“ライブ映像作品”と呼ばせてもらってるんですが、スピッツの音楽を感じられる映像体験になると思います。

村川:メイキング番組もぜひ観ていただきたいです。松居監督とメンバーのみなさんが初めて会うところや「リハーサルのときのような雰囲気で撮りたいです」と伝えるところから記録していて。僕自身は何も主張していなくて、ただ撮ることだけに徹しようと思っていたんですよね。

内野:当初から“ドキュメンタリー”という言葉を捨てて、メイキング、記録映像にしようと話していたんです。松居監督とスピッツの関係もしっかり録っておきたかったので。

松居:ありがとうございます。スピッツというバンドの凄さを感じてもらいたい、それだけですね。

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【番組情報】
『優しいスピッツ a secret session in Obihiro』
2022月1月29日(土)夜8:00 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
監督:松居大悟
収録日:2021年10月某日 収録場所:北海道 旧双葉幼稚園園舎

『優しいスピッツ a secret session in Obihiro 撮影記録』
2022年2月11日(金・祝)夜6:30 [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後~1カ月間アーカイブ配信あり

【関連番組】
『くれなずめ』
2022月1月29日(土)午後1:20[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド] ※アーカイブ配信あり 

『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』
2022月1月29日(土)夜6:05[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド] ※アーカイブ配信あり
※全番組、スマホやタブレットでも見られるWOWOWオンデマンドでは無料トライアル実施中

番組サイト https://www.wowow.co.jp/spitz/

『noteコラム連載 「優しいスピッツ」ライブレポート(全3回)』
第1回コラム「スピッツを追って、北の大地へ。 」を公開中
https://note.wowow.co.jp/n/nb2b171d3ead6
WOWOW公式note:https://note.wowow.co.jp/

WOWOWオンライン
https://www.wowow.co.jp/

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