これまで見たことのないスピッツの映像作品ーー松居大悟監督、内野敦史、村川僚WOWOWオリジナルライブ鼎談
スピッツのライブ番組『優しいスピッツa secret session in Obihiro』が1月29日20時より、WOWOWプライム/WOWOWオンデマンドで放送・配信される。
この番組は、2021年10月に北海道・帯広市の重要文化財・旧双葉幼稚園園舎で撮影されたスピッツのオリジナルライブを収録したもの。映画『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』『くれなずめ』などで知られる松居大悟が監督をつとめ、ライブイベントでもドキュメンタリーでもない、“これまで見たことのないスピッツの映像作品”に仕上がっている。また2月には『優しいスピッツ a secret session in Obihiro 撮影記録』と題した、ライブのメイキング番組も放送・配信される。
リアルサウンドでは、松居監督と番組のプロデューサーである内野敦史、メイキング番組を手がけた村川僚の鼎談を企画。『優しいスピッツ a secret session in Obihiro』の成り立ちやコンセプト、映像・演出のこだわりなどについて聞いた。(森朋之)
これまで見たことがない、新しいスピッツが見てみたい
ーーWOWOWプライム/WOWOWオンデマンドで放送・配信される『優しいスピッツ a secret session in Obihiro』は、2021年10月に北海道・帯広市の重要文化財・旧双葉幼稚園園舎で撮影されたスピッツのオリジナルライブを収録した作品。まずはこのプロジェクトが立ち上がった経緯を教えてもらえますか?
内野敦史(以下、内野):2020年の暮れに、スピッツの事務所さんに「企画をご一緒しませんか?」とアプローチさせてもらったのが最初ですね。その後、対話を重ねるなかで、「ここでしか見られないものができるんだったら、ぜひ」と言っていただいて。WOWOWは数多くの音楽コンテンツを制作していますし、有観客のライブ映像も得意としていますが、今回はもっと独自性のある映像作品にしたかった。「どうやって“ここでしか見られないもの”を作るか?」と考えたときに出てきたのが、映画監督と組むというアイデアで、以前から僕自身もファンだった松居監督にお願いしたいなと。今回の撮影監督は塩谷大樹さんなんですが、松居監督と塩谷さんが組んだ作品が特に好きで、ぜひトライしてほしいなと。
松居大悟(以下、松居):「スピッツのオリジナルライブ映像のディレクションをお願いしたい」というオファーをいただいたときは、夢かと思いましたね(笑)。スピッツは地元の福岡にいたときからずっと聴いていたし、好きな歌詞を書き起こしたり。まさかスピッツと作品を作るとは思っていなかったし、ライブ演出もやったことがなかったんですよ。いろいろとわからないことだらけだったんですが、スピッツの事務所の方にも「これまで見たことがない、新しいスピッツが見てみたい。好きなようにやってください」と言っていただいて。光栄だったし、同時に責任も感じましたが、これはやらない理由はないなと。
内野:メイキング番組のディレクターをお願いした村川さんとは、以前から何本も一緒に作品を作ってきて。
ーー『ノンフィクションW 物言うパンクス!横山健〜311・ハイスタ・その先へ〜』(2013年)、『ノンフィクションW エレファントカシマシ、宮本浩次』(2017年)なども、内野さん、村川さんが手がけた作品ですね。
内野:2021年の3月には『スピッツ 猫ちぐらの夕べ WOWOWスペシャルエディション』でもご一緒したんですが、それが今回のファーストステップになってるんです。コロナ禍で行われたスピッツの配信ライブを中心に、ドキュメンタリーの要素を加えた作品なんですが、村川さんはそのときもメンバーの懐に入って撮影してもらっているし、今回もぜひお願いしたいなと。
ーー村川さんは今回のオリジナルライブでもスピッツを取材されていますが、彼らに接して、どんな印象を持ってますか?
村川僚(以下、村川):あくまでも僕のイメージなんですけど、スピッツは売れようと思ってはじめたバンドじゃない気がするんですよ。その空気感が今も保たれているのはすごいなと。みなさん本当に謙虚だし、「そんなに撮らなくていいですよ」みたいな柔らかい雰囲気で。これも僕の印象ですが、あんなにすごいバンドなのに、みなさん普通の人なんですよ。松居監督も普通の人だし(笑)、メイキング映像を撮るときも、スピッツと松居さんをそのまま撮ればいいなと。
松居:じつは僕も(スピッツに対して)いちばん驚いたのはそこなんです。雲の上の存在だし、あのレベルのバンドがすごく自然な空気をまとっているのは本当に素敵だなって。
ーー撮影場所は帯広にある旧双葉幼稚園園舎。大正11年に建築された国指定の重要文化財です。
内野:いろんな候補があったんですよ、じつは。
松居:帯広限定で探したんですか?
内野:いえ、世界中です(笑)。スピッツのファンクラブの名称は「Spitzbergen」なんですけど、その由来となったスピッツベルゲン島はどうだろう? とか。北極圏の島で、人よりもシロクマの方が多いところなんですが。
松居:寒くて手が動かなそうですね(笑)。
内野:そうですね(笑)。いろいろ話し合うなかで、事務所サイドからご提案頂いたのが“帯広”だったんです。
ーー「優しいあの子」が主題歌だったNHK連続ドラマ小説のロケ地の一つですよね。
内野:はい。メンバーもずっと帯広でライブができていなかったし、このタイミングで是非やりたいということで。旧双葉幼稚園は実際ロケハンに行ってみたらすごく素敵な建物で。