ユニコーン×WOWOWオリジナルライブ アンコール放送で振り返るコロナ禍におけるライブの面白さ

ユニコーン×WOWOWライブ振り返る

 タイトル通り「Come On-A My House」が流れる中、スタジオに集まってくるユニコーンの5人。全員が黒いスーツでシックに決めている。それぞれの楽器を手に取りスタンバイすると、最初に演奏されたのは「HELLO」だ。アルバム『シャンブル』のラストナンバー。川西幸一の力強いシンバル、重なり合うように慣らされるEBIのベースとABEDONのピアノ、テッシーこと手島いさむの柔らかなギタープレイに乗せて奥田民生が力強い歌声を響かせるーーそんないきなりエモーショナルなシーンでスタートした、ユニコーンのWOWOWオリジナルライブ『カモナマイハウス』。

 この一日限りのスペシャルライブが最初に放送されたのは2020年の12月。コロナ禍でいくつものライブやフェス、イベントが中止を余儀なくされ、ユニコーンのメンバーもステイホームでこれまでとは違う1年を過ごしてきた。10カ月ぶりに音を鳴らす喜びと感動が、そのプレイには明らかにみなぎっている。メンバーそれぞれの間には透明なアクリル板の仕切りが設置されてご時世を強く感じさせるが、5人の鳴らす音はその「壁」を突き抜けて混ざり合う。続いての「デジタルスープ」。〈僕らの言葉は デジタルになるが/まるはだか叫び続け 心から愛を込めて〉というABEDONの歌詞が、こうして画面越しに観るライブになんだかぴったり寄り添うようだ。

 どちらかといえばしっとりとしたムードで始まったライブの合間には、メンバーそれぞれがステイホーム期間をどのように過ごしてきたかを語るインタビュー映像が挿入される。民生は集まって演奏ができないことを「それがいちばん残念な感じ」と語り、川西は好きな時代小説を読み耽り、EBI(Ba)は「断捨離をしていた」と自粛期間を振り返る。テッシーは「ライブがなくなったぐらいでやることは変わっていない」と言いながらも「ライブを何も考えずに普通にできるのが大事だったなと思った」とミュージシャンとしての感覚の変化を痛感し、「わりと世の中を客観的に見ていた」というABEDONは時代の変化を敏感に感じ取っていた。五人五様の気分と感覚がいかにもユニコーンらしい。そんな5人が集まって鳴らす音楽だからこそ、このバンドにはいろいろな顔、いろいろな色、いろいろな性格がある。じつはこの日のライブはそんなユニコーンの面白さをはっきりと示すものでもあった。

 3曲目の「スカイハイ」までをちょっと真面目モードで終えると、巨大なアクリル板イジりを皮切りにダラダラトークに突入する5人。「大体飛沫を撒き散らしがちなのはテッシー」という民生のツッコミを呼び水に、EBIが「イックシュン!」と大きなくしゃみをすると、いきなりスタジオを囲っていた四方の壁がドリフよろしくバタバタと倒れるというギャグ展開が訪れる。それと同時に川西が軽快なあのビートを叩き出した。なんだなんだと思っているうちに、ステージ上のアクリル板が撤去され(メンバーも一生懸命運んでいる)、5人ともスーツからおなじみのツナギに着替え、「WAO!」がぶっ放される。この急展開、この飛距離、この乱暴さとおかしさ。これこそユニコーンだ。ファンキーなディスコチューン「チラーRhythm」とのコンビでガラッと空気を変えると、ここでますます様子のおかしいコーナーが始まる。

 またまたメンバーのインタビューコーナーなのだが、インタビュアーを務めるのは、ユニコーンとの関係性も深い音楽評論家の平山雄一氏ーーによく似たAI。ABEDONに「大坂なおみさんの活躍についてどう思いますか?」と聞いたり、EBIにキャッシュレス決済について尋ねたり、AIならではのリサーチ力とデータ解析力(?)をもとにした質問を繰り出す。不意打ちを食らったメンバーの表情が見ものだ。それぞれのメンバーがどう答えたのか……は、ぜひ放送でチェックしてもらいたい。

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