ポルノグラフィティ、ツアーファイナルで体現したどんな状況でも音楽を続ける決意 リリース日未定の新曲も披露
「ライヴで久しぶりにやる曲に魂を注入したとき、皆さんにどう届くか。それが僕らの“続”になるんじゃないかと」。岡野昭仁(Vo)がそう語った、今回のツアータイトル『17thライヴサーキット“続・ポルノグラフィティ”』。ツアーとしては約3年ぶりとなり、20会場28公演のホールツアーを、12月22日の東京ガーデンシアターまで駆け抜けた。
午後6時、神秘的なSEと真っ白なスモークに迎えられてメンバーが続々登場、〈夜明けを待って/さあ船を出そう〉と幕開けに相応しい「IT'S A NEW ERA」でスタート。今ツアー最大規模となる7,000人を超える観客たちの見事に揃った手拍子で、エンジンが掛かっていく。サビで客席に明りが灯り、観客を目にした岡野の顔に笑みが浮かぶ。イントロから拳をあげて盛り上がる、「幸せについて本気出して考えてみた」では、新藤晴一(Gt)が低めの姿勢でギターを弾きこみ、岡野は配信の中継カメラに向けても煽りまくる。「泣いても笑っても最終日。声出せん代わりにボディで表せ!」と声を掛け、「ドリーマー」では新藤もリズムに合わせて体を左右に、「ANGRY BIRD」では歌声にエネルギーを纏わせ歌う岡野。さらに、「今宵、月が見えずとも」では、歌のラストで10秒を超えるロングトーンを響かせた。今ツアーでは、これまで以上に岡野のただならぬ歌力に度々驚かされることになる。
今回のライヴでは“マニアック”な曲が多いというセットリストで、久しぶりのアルバム曲やカップリング曲も盛り込まれている。「1回のライヴで出来る曲って限られていて、我々みたいに長いことやっていたら何百曲とあるから、その中からスタメンを飾れる曲って少ない。今日やったら二度とやらんかも、少なくともこの先何年もやらんかも、という曲は沢山あって。1曲1曲大事に演奏したい」と最終日の意気込みを語る新藤。この日は配信も行われており、岡野はタブレットでチャットを確認しながら、画面の向こうのファンにも反応する。
「十数年ぶりにやる曲です」と始まったのは、ミディアムテンポの「Free and Freedom」。サビでは岡野のオクターブ下で寄り添う新藤のコーラスが見事に響きあい、曲の後半に向けて各楽器がセッションするように展開に。「Love,too Death,too」ではファンキーなサウンドに乗せてミラーボールも加勢し、きらびやかな夜を演出した。
暗転すると、今ツアーグッズの「ボイスストラップ」からの歓声があちこちから鳴り始める。次の曲へ行く前に、今年の9月にYouTubeの一発録りシリーズ『THE FIRST TAKE』に出演したことを振り返り、「そのアコースティックセッションが非常に気持ちよかった」と本ライヴでも実現。原曲よりテンポを落として始まった「ミステーロ」は、ポルノグラフィティらしいメロディがアコギの音色と絡み合い、ラテン調となって届けられる。『THE FIRST TAKE』でも披露された「サウダージ」は、冒頭のサビをマイクなしのアカペラで歌い上げた岡野に拍手喝采。哀愁のあるアコーディオンと重厚なコントラバスも加わって、往年の大ヒット曲を珠玉の1曲へと仕上げていく。23年間、ポルノグラフィティが進化を続けている証となる瞬間だった。
一転して、不穏な鈍い音で始まった「鉄槌」では、新藤に加え、サポートミュージシャンの山口寛雄(Ba)、tasuku(Gt)の弦モノ3人が、体を前後に折りながらハードに弾き合い、「Fade away」では切なさマックスのサウンドとリズムを錯綜させ、会場を圧倒する。「救いのない曲が続いたので愛の歌を」と岡野がアコギを抱え、マイクから人1人分ほどの距離をとって「元素L」歌い出したのだが、しっかりとマイクへ声が乗り、少し遠くから語りかけるような歌唱が素晴らしい。岡野のハーモニカで始まった「Winding Road」では、冬に似合うバラードで会場を温め、ラストに暖色の円い光たちが客席へ降り注いだのが印象的だった。