スガ シカオ、変わってしまった時代の中で見せた歌い手としての矜持 『Hitori Sugar Tour 2020 -セトリ再現ライブ-』レポート

スガ シカオが見せた、歌い手としての矜持

 ライブという場が、以前とは全く違った“特別さ”を持ってしまった2020年。“有観客”という以前の当たり前には存在しなかった言葉もあっという間に馴染んでしまった昨今。スガ シカオが久々のステージで見せたのは、一対一の、とても親密な、かつ真摯な歌い手としての矜持だった。

 12月4日、スガ シカオは東京・昭和女子大学 人見記念講堂にて、有観客&生配信ライブ『Hitori Sugar Tour 2020 -セトリ再現ライブ- Supported by J-WAVE Mercedes-Benz THE EXPERIENCE』を開催した。

 「Hitori Sugar」はスガが一人で舞台に立ち、ギター1本で弾き語ることをコンセプトにしたライブシリーズ。通常のバンドセット、より濃厚なファンクナンバーを追求する「FUNK FIRE」と並び、なかばライフワークのように繰り広げてきたライブだ。その一環として今年2020年2月7日からスタートした『SUGA SHIKAO -Hitori Sugar Tour 2020- 明日、君の街に歌いに行くよ』は、新型コロナウイルス感染拡大抑止のため3月以降に予定していた公演を無期限延期。そのツアーで披露する予定だったセットリストをパフォーマンスする、というのがライブのコンセプトだ。

 ライブは「労働なんかしないで 光合成だけで生きたい」でスタート。ステージ上には豪華なオブジェと照明が設けられ、中央のカーペットの上にアコースティックギターを抱えたスガが1人立つ。「こんな状況の中、会場に来ていただいたみなさん、どうもありがとうございます」という言葉に拍手が応える。感染症対策のため声を出せない観客からも、マスク越しの表情と拍手から確かな思いが伝わってくる。

 足元に並んだエフェクターや機材を説明すると、続いてはアコースティックギターのボディを叩いた音をループさせたリズムの上で「午後のパレード」へ。続けてサンプリングした浮遊感あるフレーズのループに乗せて原曲よりも速いテンポでアレンジされた「真夜中の虹」を歌う。

 「自宅生活が続いた方が多いと思うんですけれど、俺も家にこもってました」と、外出自粛期間の過ごし方を語ったスガ。当初は曲を作る気にもなれず、夏になってようやくギターを弾くようになったら、ライブがなく歌わない日々が続いたことで「歌の筋肉が落ちてしまった」と気付き、その後は「歌リハビリ」をやってきたという。そして「サヨナラホームラン」を、ギタレレの素朴な音色と共にしっとりと歌う。続けて披露した「黄昏ギター」「Hop Step Dive」と、内面に潜り込んでいくような歌を続けていく。

 中盤には、「奥田民生さんのような曲を作りたかった」という「1+1」を披露。今年2月に通販とライブ会場限定販売でリリースした『ACOUSTIC SOUL 2』の収録曲だ。続けては小林武史とのタッグで作られた「ぼくの街に遊びにきてよ」から、「坂の途中」「Progress」と続ける。柔らかなギターの音色に、熱のこもった歌声が響く。

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