マーティン・ギャリックスらによるAREA21、Daft Punkを彷彿とさせる規格外のコンセプトを紐解く
2016年、世界的なダンスミュージックフェスティバルである『ULTRA MUSIC FESTIVAL』に二人の宇宙人が出演し、会場を大いに盛り上げた。彼らは自らのことを“M&M”と名乗り、音楽を通してユニティ(結束・団結)やグッドバイブスを広めるため、宇宙を旅しているとのことだ。以降、彼らはAREA21というユニット名で活動を続け、様々なシングルを発表、そして2021年11月12日、遂に1stアルバム『グレイテスト・ヒッツ Vol. 1』をリリースした。
さて、ダンスミュージックを愛好するリスナーであれば、アルバム1曲目の「21」を少し聴いただけで、シンセサイザーの奏でるキャッチーで美しいメロディ、軽快でバウンシーなハウスビートから“M&M”の片方が誰なのかはすぐに分かるだろう。そう、世界中のダンスミュージックをメインとしたフェスでヘッドライナーを務め、「スケアード・トゥ・ビー・ロンリー」や「イン・ザ・ネーム・オブ・ラヴ」といった大ヒット曲で絶大な支持を集めるトップDJ/プロデューサー、マーティン・ギャリックスである。
そんなマーティンの奏でるトラックの上で小気味よいラップを披露しながら、美しいメロディも見事に歌い上げるその声に聞き覚えのあるヒップホップ/R&Bリスナーもいるかもしれない。また、「21」に続く「ラ・ラ・ラ」のヒップホップサウンドも踏まえると、さらにその声が誰によるものなのか絞れてくるだろう。もう一人の“M”の正体は、ジャスティン・ビーバーとジューシー・Jを招いた「ロリー」などの楽曲を手掛け、自身もシンガー/ラッパーとしてブラジル出身のシンガーであるアニッタ「ヴァイ・マランドラ」にMC Zaacと共に参加した、米国出身のソングライター/プロデューサー/シンガーのメイジャーだ。
AREA21とは、プログレッシブハウスを中心としたメロディアスなダンスミュージックに定評のあるマーティンと、これまでR&Bやヒップホップに深く関わってきたメイジャーによる音楽ユニットである。音楽性はまさに二人の得意分野のハイブリッドと呼ぶにふさわしいもので、リリースされた1stアルバムを聴けば、それぞれの単独作品からは生まれることのなかったサウンドが間違いなく詰まっていることが分かる。映画『トロン』をも彷彿とさせるような、まさに宇宙規模の壮大なエレクトロサウンドが広がる「ゴーイング・ホーム」や、ゴリゴリの硬質なシンセサイザーとベースサウンドが聴覚を刺激する「ポゴ」のような楽曲は、メイジャーにとっては初の試みだろうし、OutKastのクラシック「ヘイ・ヤ!」を彷彿とさせるような「ラ・ラ・ラ」、跳ねるようなベースの音色がトラックを牽引するファンクチューン「モナ・リザ」などは、これまでのマーティンの作風であれば決して聴くことの出来なかったものだ。いずれの楽曲にも1曲の中に複数のアイデア、そして複数のジャンルが同居しており、もはや“AREA21”としか形容することの出来ない、極めて独特かつ刺激的なポップミュージックが詰まっている。だからこそ、このプロジェクトは特定の地域やジャンルに限定されることのない、“二人のエイリアン”という地球全体をターゲットとしたコンセプトが設けられたのだろう。