ONE OK ROCK、大らかな演奏で観客を包んだ初のアコースティックライブ 宇多田ヒカルのカバーなど新たな試みも

ワンオク、初のアコースティックライブ

 ONE OK ROCKが7月22日~25日の4日間、自身初の試みとなるアコースティックライブ『ONE OK ROCK 2021 “Day to Night Acoustic Sessions” at STELLAR THEATER』を山梨・河口湖ステラシアターにて開催。この模様が7月31日、オンライン配信された。当初はアーカイブなしで配信する予定だったが、全世界から延長希望の問い合わせが殺到したことを受け、急きょ8月1日23時59分まで延長される異例の措置がとられた。

 配信ではまず、富士山を眺める絶景から無人のステージへと景色が変わる。すると、観客の拍手とともにギター、ピアノ、パーカッション、ストリングス隊、コーラス隊といった大所帯のライブサポートメンバーが現れ、美しいピアノの音色にストリングスが重なり、早くも独特な空気を作り上げると、これに導かれるようにONE OK ROCKのメンバーがステージに登場。Toru(Gt)が奏でるアコースティックギターにTaka(Vo)が歌を重ねていくと、ライブは「We are」からスタートした。Tomoya(Dr)はカホンなど通常のドラムセットとは異なるスタイルでリズムを刻み、Ryota(Ba)はいつもよりキメの細かいベースサウンドを響かせる。Toruもアルペジオを主体としたプレイで楽曲の世界観を彩り、その上でTakaが存在感の強い歌声を響かせる。通常はライブ終盤に披露されることの多いこのアンセミックな楽曲は、繊細なアコースティック楽器中心で表現されることにより、より肉感的な魅力を放出しているように映った。

 続いてアップテンポな「Bombs away」へと移行すると、Tomoyaは通常のドラムセットでリズムを刻み、そこにアコギやピアノ、ストリングス、女性コーラスが生み出す音で厚みを加える。ディストーションサウンドやエレクトロニックサウンドの融合による厚みとはまったく異なる魅力を見せるものの、間違いなくこれもONE OK ROCKそのもの。新たな形に生まれ変わった「Bombs away」を前に、場内のオーディエンスは早くもクライマックスのような盛り上がりを見せる。

 約1年半ぶりの有観客ライブを受け、Takaが「感染対策しかり、今回はいろんなルールがありますけど、それぞれがそれぞれのルールに従って楽しんでいただければ嬉しいなと思います。短い時間ですけど、今日は最後までよろしくお願いします」と挨拶すると、今度は懐かしの1曲「カラス」が演奏される。温かみの強い大らかなアレンジは、原曲から10数年を経て大人になった「カラス」と呼ぶにふさわしいもので、改めてバンドとしての表現力の豊かさ、幅広さを提示する結果に。続いてライブの一体感を高めるのに最適なアップチューン「The Beginning」が、落ち着いたトーンにリアレンジされ披露される。ベースとなるアレンジは原曲に近いものの、ギターのアプローチや重なる楽器の違いによりこうも印象が変わるのかと驚かされた。また、テンポを若干落とすことでTakaも普段より余裕を持った歌い方に変化し、楽曲の持つメッセージを丁寧に届けようとする姿が印象的だった。これも若さで走り続けてきた活動初期~中期にはできなかった表現ではないだろうか。

 この日は普段のONE OK ROCKのライブと比べたら、バンドと観客の物理的距離は非常に近く感じられた。しかし、観客が歌ったり声を上げたりすることができないことで生じる目には見えない壁を壊そうと、バンド側がMCを多めに用意して客席との心の距離を縮めようとする姿勢が印象に残った。そういったアットホームな構成も、今回のようなアコースティックスタイルのライブならではと言える。「一番はみんなの前で演奏できるのが嬉しいです」(Toru)、「みんなの顔を見たら、すげえ元気が出てきました」(Ryota)、「この拍手を聞いたら元気ピンピンやわ(笑)」(Tomoya)、「拍手浴びるのも久々ですからね」(Taka)とそれぞれが挨拶を終えると、この日のサポートメンバーが紹介されていく。今回バンドマスターを務めるのは、ONE OK ROCKのデビュー当時からアレンジなどを手掛けてきたakkin(Gt)。バンドと一緒にステージに立つのは、これが初めてになるという。また、昨年10月の初オンラインライブ『ONE OK ROCK 2020 “Field of Wonder” at Stadium Live Streaming supported by au 5G LIVE』(※1)にも参加したGakushi(Pf)なども名を連ねる。

 今回のスペシャルライブでは、ONE OK ROCKにとっても新たな試みがいくつか用意された。そのひとつが、Ryotaが初めてウッドベースをプレイする「Deeper Deeper」。ジャジーなアレンジに生まれ変わったこの曲では、独特の芳醇さを持つウッドベースの音色がグイグイとリードしていく。また、「Heartache」ではストリングス隊が生み出す美しいハーモニーに、Takaがファルセットを交えた繊細な歌声を重ね、観る者の涙腺を刺激する。さらに、今年リリースされたばかりの新曲「Broken Heart of Gold」もアコースティックアレンジで披露。映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の主題歌として書き下ろされたこの曲は、Takaが「映画の世界観、剣心の心情に寄せて書いた」と語る1曲で、歌と演奏で感情の動きを表現していく。演者のみならず聴き手の感情も揺さぶる「Broken Heart of Gold」は、この日のために用意された楽曲と言っても過言ではないほど、ライブのコンセプトにマッチしていた。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「ライブ評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる