Kaz(INTERSECTION)、際限のない表現者としての可能性 満島ひかりら魅了する独創力に迫る
日米のダブルカルチャーを持つボーイズグループ・INTERSECTIONのメンバー、Kaz(ミッチェル和馬)。2019年に放送された『オオカミちゃんには騙されない』(ABEMA)への出演をきっかけに、日本の若年層から大きな支持を得るようになった彼は、今年放送された中国のアイドルサバイバルオーディション番組『創造営2021』に参加後、微博(Weibo)でフォロワー185万人を抱えるなど、中国を含む世界中のZ世代から“It BOY”として注目を集める存在となっている。
本稿では、自身が作詞曲と制作を手がけた1st EP『CODE LOVE』が、中国の大手音楽配信サービス・網易(ワンイー)のデイリーデジタルアルバムランキングで首位を獲得したほか、収録曲「White Stallion」が同サービスの週間デジタルシングルランキングにおいて、日本人アーティストの最高DL数を記録するなど、国境を越えた活躍を見せているKazのキャリアや魅力について紐解いていく。
2000年生まれのKazは、ニューヨークのアッパーサイドで育った。4歳の頃、映画『リトル・マーメイド』のエリック王子を観てフルートを習うことを自ら決心したことが音楽的起点だったそうで、その後8歳で日本に渡ってからもジャズバンドに所属、サクソフォンを担当するようになった。音楽活動に打ち込みながら、2017年には『MEN’S NON-NO』の専属モデルオーディションで準グランプリを受賞、その翌年にはハーバード大学入学試験に合格。パリ・コレクションに出演するなどモデルとしてのキャリアを積む傍ら、大学では音楽理論や経済を学び、そして先述の通り、『オオカミちゃんには騙されない』『創造営2021』を通じ国内外で人気を博した。
目を見張るほどマルチな活躍をみせるKazの溢れるバイタリティは「やり始めたら絶対にうまくなりたいという、オタク気質で負けず嫌いなところがある」といった本人の自己分析にも表れているものだろう。9月にリリースされたセルフプロデュース作品『CODE LOVE』には、ジャンルレス/ボーダーレスに活動するKazらしさが表れた多様な色彩とともに、彼自身の確固たるカルチュラル・アイデンティティが大きく反映されているように感じる。
オルタナティブ、トリップ・ホップ、ローファイロック/ポップ、R&B、ネオソウル、カントリーと様々なジャンルの楽曲にて構成された本作だが、その根底に流れているのはKazの音楽的ルーツであるクラシックやジャズのクロマティックな要素。グルーヴィで官能的なフィーリングと、ナイーブな歌声の融合が織り成す甘美な親密感は、彼が敬愛を寄せるディアンジェロやフランク・オーシャンからの影響をうかがわせる。
また、『CODE LOVE』の世界観を拡張させているのは、女優の満島ひかりとアメリカで活動するシンガー・Mai Annaをそれぞれフィーチャリングアーティストに迎えた収録曲「Drown feat. Hikari Mitsushima」と「Summer is Over feat. Mai Anna」だ。
まず一曲目を飾る「Drown」は、そのタイトル通り感情の波に“溺れる”さまが表現されたナンバー。Kazが「ひかりさんの歌声が入ったことで僕一人でのストーリーが美しく彩られ“2人の会話”のようになり完全に新しい物になりました」と語るとおり、『CODE LOVE』に内包されたKazのパーソナルな作品世界へ、新鮮な風として吹き抜ける幻想的な歌声がこれまでの過去作と一線を画す要素となっている。Kazと満島が共演し、MONDO GROSSO「ラビリンス」の映像ディレクター・丸山健志が手がけたMVは、ビビッドな色彩とシネマティックな映像が同曲の叙情性をさらに高めている。