HISASHIが語る、GLAYという“自由”が許される場所 『FREEDOM ONLY』はバンドの20年史的な作品に

GLAY HISASHIが考える“自由”

今の時代、勇気を持っていて信念を持っている人の勝ち

ーータイトルにもある「FREEDOM(=自由)」についても聞かせてください。TAKUROさんがリリースにあたってのコメントで「自由になるということは、『何かと別れなくてはならない』」という言葉を残していたのがすごく印象的でした。HISASHIさんは「自由」とは、どういうことだと感じますか?

HISASHI:自由って、すごく良い言葉に聞こえるけど、なかなか大変なことですよね。GLAYでいうと、2000年を境に自由を手に入れたと思うんですね。しがらみからの決別というか、バンドとして一つ、生き方を決めたんです。やっていることはずっと変わらないんだけど、今は純粋に音楽を楽しむことができている。『BEAT out!』や『pure soul』の頃って、もしかしたら音楽を楽しめていなかったかもしれない。それは忙しさだったり、いろいろな繋がりだったりが理由なんだけど、当時の僕らはもうちょっと音楽に時間を割きたいと思っていて。で、2000年以降いろいろなことから抜け出したんですよね。今振り返れば失うものもたくさんあったし、バンドが強くなければ出来なかったとは思う。でも僕らはまったく後悔していないですね。生き方としてこっちのほうがGLAYらしいと思ったから。協力してくれる人もたくさんいたし、新しく出会える人も多かったので、あの時に選択は間違っていなかったと思いますね。

ーー『pure soul』も、もう20年以上前の作品なんですよね。今回、アルバムタイトルの由来になったカーペンターズの「青春の輝き」の一節にかけて、少し時間を巻き戻してお話を伺いたいなと。HISASHIさんは、「青春」にどんな思い出がありますか。

HISASHI:そうだなぁ。バンドしかやってこなかったですからね。大半は音楽にまつわるすべてで、あとは友達との時間かな。いわゆる青春時代からまったく説得力のない音楽というビジネスが呪縛のように寄り添っていたんですよ(笑)。住んでみたら分かると思うんですけど、函館って「音楽ビジネス」という言葉にまったく現実味がないんですよね。楽器屋もレコードショップも、置いていない商品ばっかりだったし。近くて札幌。でも全然近くない(笑)。海を隔てて本州はあるんだけど、インターネットもないあの時代に、まったく現実味がない音楽の世界に飛び込もうと思ったこれを、青春と言わずになんて言おうか(笑)。本当に、あの頃の記憶はいまだにはっきり残ってますね。子どもじゃないですか、18とか19って。「俺にはロックしかねえんだ」「パンク最高!」みたいな(笑)、その幼さと馬鹿さって貴重だったなって。あの頃もしインターネットがあって、知識があったら東京には来てないかもしれない。見えないからこそ無謀になれたと思います。

ーーGLAYもまさに青春時代をともに過ごしてきて……今も青春の延長線上ですかね。

HISASHI:はい、GLAYで言ったらそうかもしれない。

ーーずっと一緒に過ごすなかで、メンバーの変わらないところ、あるいは変わったところはありますか?

HISASHI:いやーそれが、4人の立ち位置はまったく変わっていないんですよね。だいたいJIRO以外の3人が悪ふざけしてるだけなんですけど(笑)。そこをうまーくバランスをとって、まとめて、出荷するっていうのがJIRO(笑)。それくらい、TAKUROの言っていることだったり、俺とTAKUROとの共通言語、TERUの自由で天真爛漫なところも、ずっと変わらないです。自由が許される場所なんですよね、GLAYは。逆にTAKUROには「もっと自由になれ」と言われるぐらい。

ーーもっと自由になったHISASHIさんの音を聴いてみたいと。

HISASHI:はい。ノーと言われたことは1回くらいしかないですね。

ーー1回はあったんですね(笑)。

HISASHI:あったんですよ(笑)。「あいつ勇気ねえなぁ、これは分かって欲しかったなぁ」っていうのが。あえては言わないですけど1回ありましたね(笑)。僕としては挑戦したかったことが。

ーーそういうものもいつか「やってみよう」という変化が、これから先あるかもしれませんよね。

HISASHI:そうでしょうね。お互い理解が足りなかったか、曲を出すことにちょっと消極的になっていたか、考え過ぎていたか……っていう時期がこの20年間にはあって。だからこそ今回のアルバムでは「そんなに力入れなくていいよ。大丈夫、亀田さんの後押しあるから」みたいなずるい考え方もあったかもしれないですし。でも、そういうのって本当はぜんぜんずるくなくて。そういう気持ちも表現していけばいいっていう勇気を、俺らは持っているものだとばかり思っていたんですけど、意外と持っていなかったんですよね。

 でも、亀田さんは「任せてくれ」って毎回言ってくれますから。今回はその前向きなところに頼って、今まで出し渋っていたような曲たちをここで一度、作品にするのもありじゃないかなって踏み出すことができてよかったです。

ーーとはいえ挑戦って怖いじゃないですか。それこそ勇気がないとできないことで。HISASHIさん、GLAYが挑戦を続ける、その原動力って何でしょうか。

HISASHI:いや、実際怖いですよ挑戦って。怖いし、腹くくんないと。やっぱり、自信がないと見破られちゃうから。

ーー自信のなさが透けて見えてしまう。

HISASHI:そうそうそう。音にも表れる。「これとこれで迷ってるんです」じゃ、ダメなんです。「今回の曲はこれでいきます、これしかないんです」、そのくらいの腹くくり度がないとダメ。そこには、俺がどうしてもやりたいこととハッタリが同居してますね。

ーー(笑)。ハッタリは使うほうですか?

HISASHI:めっちゃ使います。TAKUROにもけっこう使ってますね。「彼女はゾンビ 」という曲を作った時も「今の時代、絶対ゾンビの歌じゃないとダメなんだって!」とかね。TAKUROは「へぇー……」って言ってたけど(笑)。TERUは疑問もなにもなく歌ってましたね(笑)。今ってなかなか、勇気を持ってハッタリと自信を伝えることは難しいかもしれないけど、意外とみんなそういうところに頼りたいと思ってるんですよね。

ーーと言うと?

HISASHI:なんて言うんだろうな……時代の芯をくった言葉というか。今ってみんな、なんとなく言いたいことや本心をぼやかすと思うんです、叩かれたくないから。でも勇気を持っていて、信念を持っている人の勝ちだと思うんですよ。ただ、それはすごく怖いことだからなかなか出来ないし、その気持ちもすごく分かる。

ーーそこを、ハッタリもかましながら。

HISASHI:そうそう。あと、リカバリーもうまくないとダメ(笑)。失敗したり伝わらなかったことを、成功したかのように見せる演出というか。「あれはあれで成功だったんだ」みたいな(笑)。そういったフォローもあって、ようやくエンターテインメントになる(笑)。

ーー自信さえ持ってやっていれば、これこそが正解なんだと胸を張れることもありますし、トライ&エラーを重ねていきながら進んでいくことが大事ですね。

HISASHI:その通りです。

ーー最後に、本作で表現した“GLAYらしさ”について改めて伺えますか。

HISASHI:やっぱり先ほども言ったアコースティックギター1本とTERUの歌で成り立つような、加工していなくても伝わる曲が僕らにとってまず大事で、それが「桜めぐり」にも通じているんですよね。演出に頼らず力を抜いて作品として強くするのもGLAYらしいなと。あとはメンバーみんながTAKUROの夢を叶えたい、と。今回の作品は、めちゃくちゃそれを感じますね。

ーー資料からもTAKUROさんの強い思いを感じました。

HISASHI:言いたいことがたくさんある人にメッセージを託そうって。僕らは、それがみんなにストレートに伝わるように楽曲を仕上げる、そこをメンバーとして頑張るっていうね。

ーーそれぞれの立場としてやるべきことを。

HISASHI:そうですね。みんなそれぞれ得意なものがあるから。例えば「青春は残酷だ」は「TAKUROと俺の共通言語じゃないと分かんないなぁ」という表現でアレンジしましたし。最初に聴いた時は、フジファブリックの「若者のすべて」みたいな挽歌のような感じでアレンジしたり。で、最近出会った、非常にGLAYサウンドとして大きな力を放つFender Jazzmaster。そういう、今しか鳴らせないような出会い、GLAYの楽曲へのアプローチを位置付けるような曲にもしたかったですし。

ーー「今しか出来ないもの」を残すって、大切ですよね。音楽はとくに。

HISASHI:「グロリアス」を作った時の話で言えば、当時は祐天寺の四畳半の狭い部屋で。初めてPerformaという一体型のMacを買ったんですよね。それがすごく嬉しくて。TAKUROが家に来て曲の原型を聴かせてくれて、それを俺がMIDIで打ち込んで。出来上がったのが「グロリアス」なんです。

ーー「グロリアス」。初めて聴いた時はもう鮮烈でした。

HISASHI:あのときって実は、マイケル・ツィマリング(エンジニア)に「テレビを意識した音にしてくれ」と。今は音楽も立体化しているけど、あの頃はベッタベタな2chだったんです。ああいう、コンプがバッキバキに効いてる音ってあの頃の象徴だなって思うんですよね。あれはあれで良いんですけど。

ーー時代を表している財産ですよね。

HISASHI:そうそう。トータルコンプみたいな、ギュッと中心に集めた音、その魅力もありますよね。そこから時を経て、今ではGLAYも立体音楽にもチャレンジしていますけど、おもしろいですよ。

ーーGLAYらしくもあり、時代を表す音楽をこれからも楽しみにしています。今日は幅広いお話、ありがとうございました。

HISASHI:こちらこそありがとうございました。立体感のあるインタビューでしたね(笑)。

■各サブスクリプションサービス一覧
https://lnk.to/GLAYmusicWE

■リリース情報
16thアルバム『FREEDOM ONLY』
10月6日(水)発売
発売:https://lnk.to/FREEDOM_ONLY
各ストリーミング:https://lnk.to/FREEDOMONLY
特設サイト:https://www.glay.co.jp/freedom_only/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる