アリーヤ、サブスク解禁で再考する現代アーティストとの結び付き ジェネイ・アイコ、ティナーシェらへ与えた影響

自身の名を冠した美しすぎる遺作『Aaliyah』

 『One In A Million』から5年間アルバムのリリースこそなかったものの、『アナスタシア』、『ドクター・ドリトル』と話題作のサウンドトラックへ立て続けに楽曲を提供したアリーヤ。なかでも『ロミオ・マスト・ダイ』の主題歌となった「Try Again」は、米ビルボードHot100で自身初となる首位を獲得。劇中でもジェット・リーと主演を務め、新時代のアイコンとして確実に歩みを進めていた。同映画には今年亡くなったDMXも出演。どうにも想いが込み上げてしまう両者の共演曲「Come Back In One Peace」もこのタイミングで公式チャンネルからMVが公開されている。

Aaliyah feat. DMX - Come Back in One Piece (Original Video)

 また、前作からの間にティムとミッシーはR&B/ヒップホップ界の中心人物として大躍進。それぞれ自身名義の作品もヒットさせ、ジェイ・Zをはじめ数多くのアーティストのプロデュースを敢行。それでも前述の「Try Again」を筆頭にアリーヤと組んだときのケミストリーは格別だった。

アリーヤ『Aaliyah』

 待望の3rdアルバムが発売されたのは2001年7月。ティムはアルバム中3曲(「We Need A Resolution」「More Than A Woman」「I Care 4 U」)、ミッシーは1曲(「I Care 4 U」)の関与のみにとどまり、大半をエリック・シーツとラプチュアー・スチュワートによるプロデューサーチーム、Keybeatsが担当(彼らとミッシーは702のヒット曲「Where My Girls At?」も手掛けている)。ソングライターとしてはティム一派のR&Bトリオ、Playaのスタティック・メジャー(R.I.P.)が半数以上でペンを取り大きく貢献した。

 3枚目にしてセルフタイトルを掲げたのは、今までよりさらにアリーヤ本人がクリエイティブ面の舵を取ったからだろう。以前の“大人びた10代”のイメージは影を潜め、等身大の彼女の素顔が随所に浮かび上がる。クールネスを押し出した「Loose Rap」「Extra Smooth」、ラテン調の「Read Between The Lines」、夢見心地な「It’s Whatever」「Those Were The Days」など、シングル曲以外にも内容はバラエティに富みながら全編の統一感は揺るがない。自然体なのにセクシー、エキゾチックなのに透明感があり甘美的。アリーヤの歌声でしか成し得なかった絶妙なバランスは、今でも聴くたびに唸るばかりだ。

Aaliyah - More Than A Woman (Official Video)

『Aaliyah』から辿る関連作

 <Odd Future>からデビューしたR&Bバンド、The Internetのリードボーカルを務めるシドは、初となるソロ作『Fin』で神秘的なフューチャリスティックR&Bを展開。そのインスピレーション元がアリーヤであることは明らかで(本人もファンであることを公言、※1)、20年近く前にもなる彼女のサウンドが今なお未来的に響くことを印象付けた。フィフス・ハーモニーの元メンバーでソロアルバムが待望されるは、カーディ・Bを迎えた最新曲「Wild Side」のMVで「More Than A Woman」を思わせるコレオグラフを披露。同曲をパフォーマンスした『2021 MTV Video Music Awards』ではジャネット・ジャクソンへのオマージュとなる演出も施し、ダンスポップアーティストとしてのスターダムを邁進中だ。

 またアリーヤの楽曲はクラブDJ界隈でも長年人気が高く、とりわけ本作収録の「Rock The Boat」はケイトラナダを始め数多くのリエディットが存在。プレイされるたびにフロアを賑わしている。

Normani - Wild Side (Official Video) ft. Cardi B

 上記のアーティスト以外にも、デビュー作に収録の「At Your Best (You Are Love)」を換骨奪胎したようなバラード「Before I Do」を歌ったセヴン・ストリーターや、同曲をトリビュートカバーしたシニード・ハーネット、先鋭的なサウンドで人気を博すFKA・ツイッグス(彼女は奇しくもアリーヤと同じ1月16日生まれ)など、アリーヤに影響を受けているアーティストたちは数知れない。そのひとりでもあるティナーシェは「今までR&Bにおいて示されなかった新しいボーカルスタイルをアリーヤが持ち込んでくれた。私たちのチルなバイブスは彼女のおかげ」と、過去に『Billboard』で語っている(※2)。

 ここ日本でも、宇多田ヒカルはR&Bにハマったきっかけとしてアリーヤのデビュー盤を挙げているし、最近では藤井風がSNS上で「At Your Best (You Are Love)」のカバーを披露するなど、彼女が後身に拓いた道筋は海を超えて広がり続けている。今回のストリーミング解禁を受けて、今まで以上に多くの耳にアリーヤの遺したギフトが届くことを願うばかり。永遠のBabygirlとして、これからも彼女の音楽は語り継がれていくだろう。

※1:https://www.independent.co.uk/arts-entertainment/music/features/syd-the-internet-interview-a7661866.html
※2:https://www.billboard.com/articles/6229108/aaliyah-influence- on-music-and-fashion

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