King & Prince、アルバム『Re:Sense』に詰め込まれたグループの多才さ ライター3氏が収録曲を徹底解説
08. Beating Hearts
強靭なファンクネスを放ちまくるベースライン、骨太なグルーヴを描き出すリズム、厚みのあるホーンセクションが共鳴するダンスチューン。10年代以降、世界的なムーブメントとなったファンクリバイバルの流れを汲み取りながら、歌謡的ポップに振り切ったサビを組み合わせることで、“洋楽×J-POP”のハイブリッドを実現している。意味よりもノリに重心を置いたリリックは、AAA、蒼井翔太などの楽曲を手がけるRUCCAのペンによるもの。(森朋之)
「Magic Touch」との両A面でリリースされた先行シングル。シングルとしてリリースされた際には「Magic Touch」との対比の軽快なパーティソングとして楽しむことが出来たが、本作の流れで聴くと、イントロのベースラインのインパクトも相まって、リラックスしたような空気感から一転して、再び彼らがスターとしてスポットライトが照らし出すステージへと舞い戻ってきたかのような印象を感じさせるのが興味深い。(ノイ村)
09. Koiは優しくない
切なくて爽やかな旋律とともに描かれるのは、好きな女性に振り回される男性のちょっと情けない心情。アイドルソングの王道とも呼べる楽曲だが、バックトラックのビートは強めで、“踊れる”ポップチューンに仕上がっている。メンバーの声質を活かした歌い分けとコーラスも聴きどころ。シンガーとしての個性、“組み合わせの妙”を感じさせるハーモニー、ユニゾンの一体感など、King & Princeの多彩なボーカル表現を堪能できるナンバーと言えるだろう。(森朋之)
「ユメラブ (You, Me, Love)」と双璧を成すであろう、本作屈指の王道アイドルポップソング。本楽曲は比較的テンポを落としてメロディをしっかりと聴かせるつくりで、聴かせどころの落ちサビもバッチリ用意されており、彼らの優しさと力強さに溢れた歌声の魅力を存分に楽しむことができる。また、恋愛に翻弄される姿をユーモラスに描いた本楽曲はこの後に待ち受ける本作屈指のコミカルなパートへのブリッジとしても上手く機能しているといえるだろう。(ノイ村)
10. フィジャディバ グラビボ ブラジポテト!
“お城の舞踏会”をモチーフにしたサウンドから始まり、スカのリズムを押し出したかと思いきや、いきなりドープなヒップホップ系トラックに移行し、最後はゴージャスなポップワールドへ辿り着く。意外性に溢れた展開、はっちゃけまくったボーカルが結びついたこの曲は、King & Princeのエンターテインメント性が存分に発揮された楽曲。アイドルとしての魅力を最大限に引き出す前山田健一(作詞・作曲・編曲)のソングライティングも絶品だ。(森朋之)
これまでも様々なアイドルソングの名曲を生み出してきた前山田健一が作詞・作曲・編曲を手掛けた楽曲。それも彼の十八番であるミュージカル調のポップソングということで、本作屈指のインパクトを誇るカオスな名曲に仕上がっている。まるでディズニー映画を彷彿とさせるような台詞の掛け合いから、タイトルにもある謎の呪文の応酬、息をつく間もなく変わり続けるトラックに突然の物真似タイムなど、これでもかと要素が詰め込まれているにも関わらず一切破綻することなく最高のポップソングとして楽しめるのは、メンバーが全力で楽しみながら本楽曲の登場人物を演じており、その楽しさが楽曲全体を包み込んでいるからではないだろうか。(ノイ村)
11. ツッパリ魂 (平野紫耀、神宮寺勇太)
The Venturesに代表されるサーフィン・ホットロッド系の音楽、そして、昭和40年代のグループサウンズを想起させる、懐かしくて新しいロックロール歌謡。“恋愛よりも男の友情だぜ! 夜露死苦!”と肩を抱き合う(?)二人を演じるように歌う平野、神宮寺のボーカルも楽しい。こういうブッ飛んだ遊び心も、King & Princeの良さ。根底にあるのはもちろん、“とにかくリスナーを楽しませたい”というエンタメ精神だろう。(森朋之)
「Lost in Love」に対して、こちらは永瀬廉、髙橋海人、岸優太プロデュースによる企画曲。タイトルからも分かる通り、昭和のヤンキーをモチーフとしたコミカルな一曲となっている。歪んだギターの音色が印象的な80年代の歌謡ロックを彷彿とさせるサウンドの中で、役柄になりきった二人の物語が繰り広げられる。こちらも相当に難しい題材だったことは想像に難くないが、二人とも見事に演じきっており、彼らだからこそ実現出来る見事なポップソングに仕上がっている。(ノイ村)
12. Body Paint
シックに洗練されたトラックメイク、英語と日本語を織り交ぜた歌詞、R&B/ヒップホップのフィーリングを色濃く反映したメロディ。海外のクリエイターのコライトによるこの曲は、ブラックミュージックとエキゾチズムが共存する魅惑的なダンスチューン。独創的なビートと旋律をナチュラルに乗りこなし、快楽的なフロウに結実させたメンバーのボーカルも最高だ。この曲もまた、アルバムのテーマである洋楽とJ-POPの融合を端的に示す楽曲と言えるだろう。(森朋之)
演技力を楽しむコミカルなパートを経て、いよいよ本作は最後の盛り上がりへと向かっていく。本楽曲は「Magic Touch」に続く海外のメインストリームを踏襲したもので、近年のポップグループの楽曲における一つの主流ともいえる、R&Bとゼロ年代以降のヒップホップの影響が色濃く反映された跳ねるようなサウンドの中で、キレのあるラップと甘い歌声が見事に折り重なっていく。多彩な歌声を使い分けながらも完璧にリズムを乗りこなす姿からは、彼らが「Magic Touch」「Beating Hearts」を経てさらにスキル面での成長を遂げていることを実感することができるだろう。特にBメロで披露される色気に満ちたハスキーボイスは絶品だ。(ノイ村)
13. Dance to the music
ネオソウル、オルタナR&Bのテイストを含ませながら、幅広い層のリスナーが楽しめるJ-POPに昇華させる。きわめて現代的なスタイルを体現したこの楽曲は、Awesome City Clubのatagi、ヒットメイカーの久保田真悟(Jazzin’park)がコライトで制作。ソフィスティケイトされたサウンドメイク、どこか叙情的な気分を滲ませるメロディとラップの対比も魅力的だ。低音とファルセットを共存させた、官能的な歌声も最高。(森朋之)
前作『L&』収録の「ナミウテココロ」に続く、Awesome City ClubのatagiとJazzin'parkの久保田 真悟が手掛けた楽曲。「Body Paint」の余韻を引き継ぐかのように、さらに濃密なR&Bポップが展開され、彼らが創り上げる音空間にどこまでも深く引き込まれていく。本楽曲でもラップパートが大々的に取り入れられているが、これまでの楽曲でのアプローチとは異なり、落ち着いたトーンで低音を巧みに使いこなしているのが印象的で、その引き出しの多さに改めて驚かされる。(ノイ村)
14. I promise
EDM経由のカラフルなトラック、アコースティックギターやピアノ、弦楽器を活かしたアレンジを結び付けた珠玉のポップチューン。感情を抑えたAメロから始まり、曲が進むにつれてエモさがアップ。そしてサビの〈I promise/誰にも破れない約束を交わそう〉というフレーズで一気に解放される構成も見事だ。派手さと切なさ、愛おしさをたっぷりと感じさせる(アイドルポップの本流とも言える)楽曲もまた、アルバム『Re:Sense』の魅力だ。(森朋之)
昨年末にシングルとしてリリースされた、本作の中では最も古い楽曲。力強くエモーショナルな歌声とキャッチーなメロディが聴き手の感情を昂ぶらせる王道のポップソングである本楽曲だが、様々な声色を巧みに使い分けるR&B・ヒップホップ路線の楽曲を経た上で聴くことで、その真っ直ぐな歌声の美しさがより一層に胸に迫って響く。パーティーの最後の盛り上がりを飾る重要な一曲として、見事に役目を果たしている。(ノイ村)
15. 花束
アルバム唯一のバラードナンバーは、SMAPの名曲「オレンジ」を手がけたことで知られる市川喜康の手によるもの。ドラマティックに盛り上がるメロディ、生楽器の響きを活かしたバンドサウンド、そして、豊かで力強い感情表現をたたえたボーカルが融合したこの曲は、本作のハイライトの一つだろう。様々な問題が立て続けに起きる社会の中で、それでも自分らしさを求めて生きる人々へのエールを感じさせる歌詞も強く心に残る。(森朋之)
5分48秒にも及ぶ壮大なバラード。ピアノの伴奏に合わせてそっと優しく歌い上げる冒頭から始まり、徐々にストリングスやギターの音色が重なりながら演奏のスケールが拡大していき、呼応するように歌声の持つ力が徐々に大きくなっていく。ついにはパーカッションによるビートまで鳴り響き、それらに一切負けることなく、限界まで昂ぶらせた感情が歌声と共に空間に放たれる。単なるピアノバラードでは終わらずに壮絶なクライマックスへと向かっていく本楽曲は、まさに本作に込められた貪欲なまでの音楽への欲求を詰め込んだかのようで、彼らにとっての一つの到達点のようにも思えるほどの一曲だ。(ノイ村)
16. Namae Oshiete
緻密に構築されたビート、浮遊感と強靭さを同時に感じさせるサウンドメイク、心地よく起伏するメロディ。80年代から現在に至るまで世界的R&Bプロデューサーとして君臨するBabyfaceが手がけたこの曲は、最新鋭のR&Bを軸に、日本的エキゾチズムと称すべきクリエイションが実現したミディアムチューン。アイドルとしての存在感をキープしつつ、世界基準と呼ぶにふさわしい楽曲へと結びつけた記念碑的なナンバーだ。(森朋之)
本来なら「花束」でアルバムを締めくくったとしても全く問題ないだろう。だが、あくまで本作はその次を示した上で幕を閉じる。これまでアリアナ・グランデやビヨンセといったアーティストに楽曲提供を行い、自らも「Everytime I Close My Eyes」などのヒット曲を持つBabyfaceが作詞・作曲を手掛けた本気のR&B楽曲である。これまでの楽曲でも見られた様々な声色、特に低音ボーカルやファルセットの魅力は本楽曲でも遺憾なく発揮されているが、本楽曲の最大のポイントは巧みに構築されたコーラスワークだろう。それぞれのメンバーが自らのレイヤーを見事に表現することで生まれた音空間は衝撃的なほどに美しく、彼らが持つ新たな武器がまた一つ増えたことを証明する至高の一曲だ。今後の楽曲においても是非取り入れてほしいと強く願う。(ノイ村)
M17. Dear My Tiara
ファン(ティアラ)への思いをダイレクトに描き出した「Dear My Tiara」は、音楽的にもこのアルバムを象徴している。軸になっているのは、R&Bを中心とした洋楽的テイストと、日本語の響きを活かした歌。キックの音色、ベースラインなどには現行のブラックミュージックのエッセンスが加えられ、メロディや歌詞の乗せ方は完全にJ-POP。このバランス感覚こそが現在のKing & Princeの核であり、本作の基盤となっているのは間違いない。(森朋之)