Maroon 5は全盛期を更新し続けるーー1stから新作『ジョーディ』まで、紆余曲折のバンド史を振り返る

Maroon 5、紆余曲折のバンド史を振り返る

 現代において最も売れているバンドはMaroon 5である。2001年の結成以来、数多ものシングルをチャート上位に送り込み、しかも全盛期を更新し続けている。こんなバンドは他に存在せず、間違いなく圧倒的だと断言出来る。だが、その成功はただ続ける、バンドとしてのコアを磨くだけでは得ることが出来ないものだった。

 2002年にリリースした1stアルバム『ソングス・アバウト・ジェーン』はラジオでのヒットを推進力にロングヒットとなり、米国ではリリースから1年で300万枚以上の売上を達成。Maroon 5は早い段階で大きな成功を手にすることとなった。「ディス・ラヴ」に代表されるファンクとロックをハイブリッドしたポップサウンドとソウルやR&Bからの影響を感じさせるエモーショナルなメロディ、そして何よりアダム・レヴィーンによる甘く美しい歌声という彼らを象徴する音楽性は、最初の時点で普遍的な輝きを放っていたのである。だが、ソウルとファンク成分を強化した2作目『イット・ウォント・ビー・スーン・ビフォー・ロング』(2007年)も全米チャート1位を記録して成功を祝う彼らに、変化の激しいポップシーンが牙を剥く。

Maroon 5 – This Love (Closed Captioned)
Maroon 5 – Makes Me Wonder (Official Music Video)

 3作目となる『ハンズ・オール・オーヴァー』(2010年)では、バンドの持ち味であるファンクとロックを絶妙にハイブリッドしたポップサウンドを過去最高レベルまで磨き上げたにも関わらず、セールス面においては不振に至ったのである。ただバンドの魅力を磨くだけでは時流に置いていかれてしまうという非情な現実が突きつけられたのだ。

 そして彼らは「バンドメンバーが自ら作曲する」というバンドにおけるある種の約束事を破り、異例とも言える外部のライターを招いた楽曲制作へと踏み切った。彼らは変化に対応するための武器を求めたのである。

 そして生まれたディスコポップ「ムーヴス・ライク・ジャガー feat. クリスティーナ・アギレラ」は、エレクトロポップ全盛の2011年のメインストリームを完璧に射抜き、全米チャートを筆頭に世界18カ国で1位を記録。返り咲くどころか世界トップクラスのバンドへと上り詰めた。以降、彼らは外部の様々な才能とタッグを組むことで、自身の音楽性と時流に合わせたスタイルを組み合わせた「ワン・モア・ナイト」(2012年)、「シュガー」(2014年)といった代表曲を生み出し、常にポップシーンの最前線で戦うことが出来るようになったのである。

Maroon 5 – Moves Like Jagger ft. Christina Aguilera (Official Music Video)

 また、「外部の才能」は決してプロデューサーやライターだけに収まらない。活動初期よりヒップホップからの影響を公言してきた彼らのサウンドはラップとの相性が非常に良く、メインストリームの多くをヒップホップが占めるようになった2010年代にはウィズ・カリファとの「ペイフォン」(2012年)、ケンドリック・ラマーとの「ドント・ワナ・ノウ」など各時代を代表するラッパーとタッグを組み、さらに楽曲の魅力を引き上げると共に、時代との接点を増やしていった。

 その成果が結実したのが2018年の「ガールズ・ライク・ユー feat. カーディ・B」だろう。反復しながら徐々にスケールを拡大していく包容力と中毒性を兼ね備えたサウンドと、カーディ・Bによる力強いラップが印象的なこの楽曲は、その麻薬的な魅力から絶大な再生数を叩き出し、ディケイドの後半にリリースされたにも関わらず米国の2010年代シングルチャートで5位にランクインするほどの大ヒットを記録したのである。

Maroon 5 – Girls Like You ft. Cardi B (Official Music Video)

 最も重要なのは、彼らは別に自らのバンドとしてのコアを放棄したわけではないということだ。転機作となった「ムーヴス・ライク・ジャガー」は決してトラックを丸ごとEDMアクトに委ねたわけではなく、あくまで彼らの持ち味であるファンクソウル成分を引き出した上でエレクトロを取り入れた楽曲であり、「ガールズ・ライク・ユー」も当時人気を誇ったポスト・マローンなどの楽曲に代表される反復するメロディや空間を支配したサウンド、そして音数の少ないトラックといった潮流を踏まえ、メンバーのジェームス・バレンタインによる軽快なギターの音色を軸に構成されたポップソングである。

 また、ライブパフォーマンスではこれらのヒット曲が全てメンバーによるバンドサウンドによって披露され、彼らのバンドとしての魅力をしっかりと味わうことが出来る。また、例えば『レッド・ピル・ブルース』(2017年)に収録されている「クロージャー」は、一見するとMaroon 5らしい甘いソウルナンバーだが、実際は後半10分以上にわたってメンバーによるジャムセッションが繰り広げられており、彼らのミュージシャンスキルの高さをじっくりと味わえる一曲になっている。このように、常にメインストリームを意識し続ける一方で、バンドのルーツにあるファンクやソウル、R&Bなどの音楽からの影響を“Maroon 5”というフィルターを通してポップソングに落とし込むというコアの部分は変わらず残っており、むしろ進化しているのだ。

 そのコアの部分は、6月11日にリリースされた通算7枚目となるスタジオアルバム『ジョーディ』においても変わらず、“今の”Maroon 5らしいサウンドを楽しむことが出来る。

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