Maroon 5、初の東京ドーム公演で示した世界的スーパーバンドとしての実力
Maroon 5が2019年2月25日、一夜限りの来日公演を開催した。2017年にリリースされた6thアルバム『Red Pill Blues』を引っ提げてワールドツアーを行なっているMaroon 5。3年半ぶり、通算7回目の来日で初めて実現した東京ドーム公演(約5万人動員)で彼らは、ジャンル、年代を網羅しながら進化を続ける、世界的スーパーバンドとしての実力をダイレクトに見せつけた。
開演時間の19時ちょうど、まずはオープニングアクトをつとめるNoah “Mailbox” PassovoyがDJとして登場。Maroon 5の楽曲のプロデュース、サウンドエンジニアを担当したことがある彼は、The Beatnuts「No Escapin' This」、Beyoncé「Crazy in Love」、Jet「Are You Gonna Be My Girl」、Prince「Kiss」、Travis Scott「SICKO MODE」、a-ha「Take On Me」、Jay-Z「Empire State of Mind(feat.Alicia Keys)」などをプレイ。ヒップホップ、R&B、ロックといったジャンル、そして、1980年代〜2010年代までをカバーする幅広いセレクトでドームを埋め尽くした観客(オーディエンスの年齢層もめちゃくちゃ広い)を盛り上げる。“あらゆるジャンル、あらゆる年代の音楽を網羅し、すべてのオーディエンスを楽しませる”スタイルは、Maroon 5のコンセプトと直結していた。
そして、ついにMaroon 5が登場。まず映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオープニング映像がスクリーンに映し出される。主人公が巨大なギターアンプにジャックを差し込み、ギターを鳴らした瞬間、爆音に吹っ飛ばされるシーンに合わせ、メンバーが登場。最新アルバムの収録曲「What Lovers Do(feat.SZA)」でライブをスタートさせる。さらに大ヒット曲「Payphone」ではアリーナに設置された花道を歩き、ファンと直接コミュニケーション。「This Love」のエンディングではアダム・レヴィ—ン(Vo/Gt)がド派手なギターソロを披露し、会場を沸かせる。序盤からアンセムを連発。イントロが始まるたびに大歓声が響き渡り、“これぞ世界的スタジアムバンド!”なカタルシスにつながる。
ステージ構成は至ってシンプル。ステージに両脇、中央にスクリーンが設置され、常にメンバーの姿を映しているが、特に凝った映像などはほとんどない。照明もきわめてオーソドックスで、要は“普通のコンサート”なのだが、もちろん物足りなさはまったくない。“Maroon 5のヒット曲を優れた演奏で聴かせる”。それだけで十分なのだと、最初の数曲だけではっきりと実感させられてしまった。
このストロングスタイルのライブを支えているのはもちろん、メンバーの優れた演奏能力だ。2014年にPJ・モートン(Key)、2016年にサム・ファーラー(Key/Ba/Gt)が正式加入し、現在は7人体制で活動している彼ら。ほぼ原曲通りのシンプルな演奏は、楽曲の良さを改めて伝えると同時に、アダムのボーカルをしっかりと引き立てていた。特にマット・フリン(Dr)の安定感のあるドラム、時折ハードロック感を滲ませるジェームス・バレンタインのギタープレイは印象的だった。
日本でも人気が高い「Sunday Morning」の後は、様々なジャンルをシームレスに繋いでいく。ソウルミュージック、ファンクの要素を押し出した「Animals」「One More Night」(このあたりでアダムはパーカーを脱ぎ、Tシャツ1枚に)、ロックバンドとしての強靭さをアピールした「Maps」「Harder To Breathe」、「ラブソング聴きたい?」というアダムのMCに導かれた「Don’t Wannna Know」。驚くほど幅広い音楽性だが、すべてがMaroon 5の音楽に帰結していくパフォーマンスはまさに圧巻だった。
アリーナのセンターステージでアダムがマイクスタンドを高々と掲げた「Love Somebody」からライブは終盤へ。メンバー全員を丁寧に紹介した後、代表曲の一つである「Makes Me Wonder」でシンガロングが発生。さらにマイケル・ジャクソンの「Rock With You」をカバーし(原曲通りのアレンジ、アダムのボーカルを含め、マイケルへのリスペクトが伝わる名演!)、「Moves Like Jagger」へ。観客も気持ち良く身体を揺らし、東京ドームを巨大なダンスフロアへと変貌させた。