May J.がyahyel 篠田ミルと表現する“本当にやりたかった音楽” 既存のイメージを刷新するプロジェクトの意義

May J. が“本当にやりたかった音楽”

 このプロジェクトのプロデューサーが篠田ミル(yahyel)も特筆すべきポイントだ。フランク・オーシャン、ザ・ウィークエンドなどに代表されるオルタナR&Bの潮流から登場し、日本の音楽シーンに大きな刺激を与え続けている篠田が、オーバーグラウンドで活躍を続けるMay J.をプロデュースすることは一見、意外に見えるかもしれない。しかし彼女のルーツが現代的なR&B、ヒップホップであることを視野に入れると、篠田とのタッグはむしろ“原点回帰”と言えるだろう。

 篠田にプロデュースを依頼した理由についてMay J.は「yahyelの曲を聴いて、マイナー調な曲やループが印象的なトラックが尖っていて最先端でカッコいいなと思ったし、ダークな感じも気が合いそうだなと思って。私が今やりたい音楽、ポップをちゃんと理解しながらも、マニアックな音楽が好きなリスナーにも届く曲ができそうだなっていう感じがした」とコメント。また篠田は「海外のシーンを見ていても、僕らみたいなわりとマニアックなところを出自にするプロデューサーが、ポップのオーバーグランドの人とガッツリと組んで面白いものを作るみたいな動きもある」「そういうことやれたらいいんじゃないかなって思っていましたね」と彼女のオファーを受けた意義について説明している。

 4カ月連続リリースの第1弾「Rebellious」は、ギターの軽やかなリフ、緻密に構築されたトラックを軸にしたミディアムチューン。ホールジー、エリー・ゴールディングなどのUSポップシーンを牽引するアーティストにもつながるようなサウンドメイクは、新プロジェクトにおけるMay J.の音楽的な方向性を示している。ラテンの匂いが漂う、憂いと切なさを含んだ旋律も印象的。楽曲の制作は篠田、May J.のコライト。彼女のメロディメイカーとしての資質が感じられるのも、この楽曲を最初にリリースする意義だろう。

 「Rebellious」は“反抗的”の意。この曲の背景にあるのは、彼女自身の反抗期の記憶だ。いちばん身近にいて、自分のことを保護してくれる存在である親。思春期に差し掛かり、親のことが鬱陶しくなり、助言やサポートも拒否してしまうーー誰もが経験したことがあるであろう反抗期の葛藤を彼女は、どこまでもストレートに描き出している。悩みや怒り、後悔を経て、“いまなら愛しく思える”という心境に至る「Rebellious」のストーリーは、幅広いリスナーの感情を揺さぶるはずだ。

 もう一つ強調しておきたいのは、この楽曲の核にあるのは彼女自身の歌、声であること。先鋭性と洗練をバランスよく兼ね備えたトラックを的確に捉え、美くしも切ないメロディを描き出し、その中に込めたアンビバレントな感情を解放する。「Rebellious」のボーカルを聴けば、シンガーとしてのMay J.の技術、表現力がさらに向上していることがわかるだろう。

 これから4カ月に渡って配信リリースは続く。それぞれテイストは異なるが、“最新鋭のグローバルポップと共鳴するトラック”、“生々しい感情を反映させたリリック”、“卓越したボーカリゼーション”は共通。ルーツへの回帰と音楽的なトライアルを共存させた新プロジェクトによってMay J.は、アーティストとしての新たなフェーズを力強く発信させることになりそうだ。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

「Rebellious」

■リリース情報
May J. 4カ月連続リリース Digital Single
第1弾 「Rebellious」
2021年5月12日(水)リリース
配信リンク:https://avex.lnk.to/Rebellious

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