『平成ラブソングカバーズ supported by DAM』インタビュー
May J.が語る、平成の歌を新たな時代に繋ぐこと「歌い継いでもらえる曲を生み出したい」
これまでにも様々なコンセプトを設けたカバーアルバムをリリースしてきたMay J.が、新作『平成ラブソングカバーズ supported by DAM』をリリースした。
カラオケメーカーであるDAMが監修した本作には、平成にリリースされ、カラオケランキングで上位を占める人気のラブソングの数々を収録。「ハナミズキ」(一青窈)、「また君に恋してる」(ビリー・バンバン)、「M」(プリンセス プリンセス)、「雪の華」(中島美嘉)、「Story」(AI)、「366日」(HY)、「糸」(中島みゆき)など、時を経ても色あせることなく、幅広い世代に愛され続けている名曲たちにMay J.ならではのふくよかな歌声が新たな息吹を注ぎ込んでいる。これはまさに新元号「令和」が発表された今、平成という時代を振り返るに最適な1枚。そんな本作について、時代の橋渡し役として様々なチャレンジを詰め込んで各曲に向き合ったというMay J.にじっくりと話を聞いた。(もりひでゆき)
「昭和と平成の違いを感じた」
――May J.さんはこれまでカバーアルバムを4作リリースされていますが、今回の『平成ラブソングカバーズ supported by DAM』は少し趣が異なる印象ですね。
May J.:そうですね。DAMさんに監修していただいた企画盤といった感じです。平成の31年間でDAMさんのカラオケランキングの上位に入ったラブソングが選曲されています。
――収録曲のラインナップを見て何か感じることはありましたか?
May J.:個人的には昭和と平成の違いを感じたところがありましたね。昭和のカラオケと言うと、スナックであったりとか大勢の前で歌うイメージが私の中にはあって。でも平成になるとカラオケボックスやカラオケルームのようなものが登場して、親しい人と歌う機会が増えたと思うんです。だから昭和と比べて平成の曲は、個人的な思いを歌ったものであったり、親しい仲間と一緒に歌って楽しい曲なんかが増えていったんじゃないかなって。今回の曲たちを眺めてみて、なんとなくそんなことを感じたりはしましたね。
――平成を生きてきた人たちにとってなじみ深い曲ばかりですよね。
May J.:はい。私自身、実際カラオケで歌っていた曲がいくつもありましたしね。でも、最近の若い子たちはけっこう知らない曲もあるみたいなんですよ。平成生まれの子たちは、平成初期の曲をリアルタイムでは聴いていなかったりするので。「この曲は知らなかったです」って声をファンの方にいただくこともけっこうあります。
――確かにそうかもしれないですね。言ったらMay J.さんだってほぼ平成生まれみたいなものですよね?
May J.:そうそう。私は昭和63年生まれなので、今年31歳。まさに平成と共に歩んできた感じなんですよね(笑)。私の場合はもちろん、すべての曲を聴いたことがありましたけど、でも例えば平成元年にリリースされた「M」(プリンセス プリンセス)なんかは原曲よりも別の人がカバーしたものをよく耳にしていたところもあったりして。そういう意味では平成の31年って短いようですごく長い時間だったんだなって思ったし、自分の歩んできた時代を、音楽を通して振り返ることのできる楽しさもありましたね。
――本作を聴いてまず感じたのはアレンジの妙。ガラッと雰囲気を変えたものもあれば、シンプルなサウンドで原曲の良さを届けるものもありますよね。
May J.:今回は、過去の私のアルバムでカバーさせていただいた音源に加え、新録したものが8曲ほど入っていて。その新録した曲に関しては基本オケと歌を同時録音したし、サウンド的にも挑戦したものが多いような気がしますね。「キセキ」(GReeeeN)や「Lovers Again」(EXILE)なんかは特にトライという感覚が強かったかな。
――「キセキ」はジャジーな雰囲気ですよね。
May J.:はい、ビッグバンド風にしてみました。サウンドのかっこよさで気分がものすごく上がったので、歌うのもほんとに楽しかったです。
――笑顔が見える楽しげな声色が出ていますよね。
May J.:出ちゃってますね(笑)。「キセキ」は元々、複数の人で歌う曲なんですけど、今回は途中にブレイクを作ったりして1人でも歌えるようになってるんですよ。ラップパートもメロラップっぽいアレンジをさせていただいたので、ラッパーじゃなくても歌えると思います(笑)。
――今後1人カラオケの際にはこのバージョンで歌うと楽しめそうですね。「Lovers Again」は原曲よりも削ぎ落したピアノメインのアレンジになっています。
May J.:原曲は2000年代初頭に流行っていたR&Bでしたけど、それを今のR&Bにしたらこうなったっていう感じですかね。ほんとにサウンドを削ぎ落したので歌うのはけっこう大変で。フリーキーに聴こえるピアノの上で、きっちりメロディを歌っていく難しさがありましたね。これも同録で3テイクくらい歌ったんですけど、その中で一番ピアノと寄り添えたテイクを採用しています。
――昨年リリースされた『Cinema Song Covers』ではオケと歌の同時録音を積極的に取り入れていました。今回も同様のスタイルを採用したのは、そこで手ごたえや楽しさを感じたからなんでしょうか。
May J.:それもありました。あとは、同じ日にミュージシャンが一堂に会すること自体なかなかないことなので、それが実現するのであれば自分もそこに加わって一緒に歌いたくなっちゃうんですよね。ものすごく贅沢な録り方ですから。
――同録ゆえに生まれる歌の表現は本作にもたっぷり注ぎ込まれた感じですよね。
May J.:そうですね。「キセキ」はほんとにそういう部分が影響していると思いますし、「Lovers Again」でピアノとしっかり寄り添えたのも同録のおかげだと思いますね。あと印象的だったのは「雪の華」(中島美嘉)かな。これは弦楽器とピアノと私っていうすごくシンプルな編成だったので、一切ごまかしが効かないっていう緊張感があって(笑)。だからこそ全員がピシッと決まったときの雰囲気は感動的だったし、その瞬間にしか生まれない空気感はしっかり盤にも刻まれていると思います。私自身、曲を聴き返すとレコーディングのときの感情が一気に蘇ってきますからね。
――アレンジ面で言うと、「PRIDE」(今井美樹)もおもしろかったです。
May J.:これはボサノバ調にアレンジしてみました。ここまでボサノバな曲を歌うのは初めてだったので、歌い方はけっこういろいろ考えましたね。ボサノバっていうとふわっとした歌い方のイメージが強いんですけど、私がそれをやるとMay J.としてのカラーがどこかに行ってしまうと思ったんですよ。なので、あえてリズムにキッチリと当てて、声を張って歌うことで曲としてのメリハリを感じてもらえるような仕上がりを目指して。サウンドに身をゆだねるとほわ~んと歌いたくなってしまうので(笑)、「そうじゃないぞ!」って言い聞かせながらレコーディングしましたね。